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「北京から見る日中翻訳業界」 第4回 「儲け過ぎたら搾取?」
アイ・エス・エス・インスティテュートと同じ、翻訳センターグループの一員である北京東櫻花翻訳公司(本社:北京市)のマネージャーが、日中の翻訳業界の真相をお伝えします。

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「外資企業が中国人の金を不当に儲けている」という視点は特段新しいものではなく、観光地に外国人用の料金があったころから変わらず、現在でも外国人と聞いたら値段が変わる商店は多くあります。中国の商店で、値札のついているものはむしろ少ないのです。

最近というか、毎年話題になっている話にアイフォーンが原価に対して儲け過ぎだという話があります。アイフォーン6が発売された際、交渉で値段が決まる中国らしく品薄時には6000元あまりのアイフォーンが20000元まで高騰し、そんななかで中国の中央テレビでは、アップルがいかにあくどく儲けているかをニュースとして取り上げました。

おもしろかったのはこれに対するネットユーザーの反応で、「原価に対して高すぎて問題があるなら、中国の粗悪セメントで出来たマンションの原価率や、中央テレビの数十秒のコマーシャルの原価率はどれほどのものになるのか計算してみればいい。だいたい、中国の100元札の原価は2元もするのかってことだよ。」などというものが溢れかえりました。

ともあれよくある話として、中国では原価率が低いと暴利だなんて責められがちだったわけですが、最近はそれだけではなく、差額に付加価値を見出す層も生まれてきています。1杯10元(約200円)のローカルコーヒースタンドの隣で、1杯20元(約400円)のスターバックスに列が出来るのです。

さて、それでは中国の翻訳の原価はいくらでしょう?

もちろんピンからキリまであります。中国の翻訳業界はたいていが1000文字を基準に取引されますが、フリーランサーの取り分としては、たとえば出版社の翻訳なら70元くらいが相場、学生のアルバイトならその半額くらい、専門性の高い翻訳エージェンシーなどの技術翻訳なら下は80元から上は200元もらわないとやらないよというハイクラスな翻訳者の先生だってたくさんいます。

翻訳エージェンシーはそれら原価の上に、顧客との打ち合わせ、トータルデザイン、用途・目的に応じて提案、用語集やテンプレートなどの整備、適宜ツール使用によるQAなど付加価値をのせて販売するわけですが、かつてこの「付加価値」を認めてもらうことが非常に難しい時期がありました。いまここに変化が起きつつあります。顧客にどんな提案をしようか、私はいつもワクワクしています。

スターバックスで言えば、客の顔を覚えること、客の好みを覚えること、客の名前を覚えること、客との会話が出来ること、客に笑顔で挨拶できること、客にお礼を言わせてしまうこと、それらはすべて中国でローカルショップの倍の値段を出してもスターバックスのコーヒーを飲みたいと思わせるに足りる付加価値でありますが、それらを価値として認められるような社会の下地ができてきたのは最近のことだろうと思います。

私のように一日に何杯もコーヒーを飲む人間にとってスターバックスは敷居が高いですが、美味しくないコーヒーも飲みたくないので、焙煎してカフェにおろしている豆屋からミルにかける前の豆を購入しています。ただ、中国人全般でみればコーヒー文化は歴史も浅く、味をきき分ける人も少数派でしょう。だからこそ、上述のように多くの人は1杯のコーヒーそのものだけでなく、カフェの雰囲気とか過ごす時間とか受けるサービスとか、そういった付加価値がのった金額として支払う価値を見出し始めたのだと思います

翻訳業も含むサービス業にとって、中国はこれからが面白いと言えるのかもしれません。

 
| 【中国語翻訳コース】 | 12:00 |
「北京から見る日中翻訳業界」 第3回 「中国の扉の鍵の存在の意義」


「此門已壊(この扉、壊れています)」という張り紙は北京の町並みのなかで珍しくありません。多くのレストランやコンビニエンスストアの入り口はガラスの観音開きの扉なのですが、「押す」と「引く」を間違えて無理やり開けたりするために簡単に壊れてしまうのです。

ちなみに、私の住んでいるマンションのエントランスにはオートロック機能がついているのですが、365日24時間常に扉が開け放たれていました。なぜなら、閉めてしまったら解除カードキーを持ってない住民が力任せに扉を開き、電子錠自体を壊してしまうからです。

このような状態に対してマンションの管理組合に苦情を出す住民もいて、ようやくオートロック機能が作動するようになったのですが、無理に開けて壊されるのを防止するため、24時間体制でガードマンが置かれることになり、すると住民は彼らを頼りにして解除カードキーを持ち歩く人がさらに減り、ガードマンの役目は出入りする人々のためにロックを解除することになってしまいました。


このように、「行為の意味や目的」を考えずに「眼前の問題」を解決する最も簡単な方法を考えてしまうという問題は、工場などの生産現場でも多く見うけられ、例えば各工程を管理するためのQCシートを作ったら、作業を始める前にQCシートだけすべて記入されてしまったという笑い話があります。

私自身も翻訳業務のなかで同様の体験をしたことがあり、CAT(翻訳支援ツール)を使って社内で翻訳するように翻訳担当に指示したところ、1文節ごとに訳文を入力して確定する手間を嫌って最初にすべての文節の原文を訳文入力欄に一括コピーし、翻訳メモリを一切参照せずに上から下まで手作業で原文を上書きする形で翻訳したものの、一つ一つ確定する手間を嫌って最後に一括確定してしまったために、本来訳文しか入ってないはずの訳文欄に、結果としては多くの原文が未翻訳のままで残ってしまったということがありました。

翻訳支援ツールについて簡単に説明しますと、文章をセンテンスで分割し、一度翻訳したセンテンスと同じセンテンスが繰り返された場合、1回目の訳文が翻訳メモリとなって2回目の翻訳で活用できるため、用語や表現の統一とともに、作業の効率を格段に向上することができるという性質があります。特にマニュアルや技術文書など、同じような表現の重複が多い文書では効果的ですが、上記のようなやり方をしたため、1回目も2回目も原文はまったく同じものが重複しているのに、訳文がそれぞれ異なっているという結果になりました。

ここで使った翻訳支援ツールはSDL社のTRADOSというソフトウェアだったのですが、実は上記のような「面倒」と見える一つ一つの作業には、すべてショートカットキーが割り当てられています。キーボードにおいていた手をマウスに持ち替えるから面倒なだけで、ショートカットキーを使用するなら1秒もかかりません。また、ソフトウェア自体に未翻訳を検証する機能、原文と訳文で数字が異なっていたり、センテンスが大幅に長い短いという違いを検証したりする機能など使いこなせば上記のような問題はすべて防止することができます。


さて、中国の非効率性についてのお話になりましたが、私たちの翻訳ツールに関して言えば、機能を活かしきれていないのは中国に限ったことではないかもしれません。一般庶民としては自分ができる生産性の向上に励むしかないわけですが、非効率な社会においてこれを実現するのは難易度が高くもあり、しかしながらそれゆえに、自らの工夫によって実現できた場合の効果も期待できるのかもしれません。

 
| 【中国語翻訳コース】 | 11:00 |
「北京から見る日中翻訳業界」 第2回 「翻訳業界における生産性と付加価値」


ちょうど今回の記事が掲載されるころには、北京のAPECも終わっているだろうと思います。陽光降り注ぐ晴天のもとで会議が進められるよう、開催1ヶ月前になって急遽APEC前後の日程が北京の公的機関や社会組織限定で6連休になったわけですが、さて結果はどうだったのでしょう?

中国のトップ主導というと一事が万事この調子で、たとえば年間の休日や祝日カレンダーは国務院から発表されますが、毎年年末押し詰まってからでないと出てきません。つまり正月休暇(1/1前後3日程度)も、春節休暇(1月乃至2月の約7日間)の日程も、12月末にならないと分からないため、1月2月は事前に計画が立てられず、まともな仕事になりません。1ヶ月前に6連休が降って湧いても「またか!」という感じです。

そのような計画性のない社会においては、なにをするにもマージンを広く持つ必要があり、つまりなにをするにも効率が悪くなるのが中国の現実です。大陸的な時間の流れを実感する、それもいいかと思える時期もありました。90年代に中国を旅行すると日本のような時間に縛られた生活からの開放感を感じることさえあったものです。


さて、前回のコラムでそんな中国でも人件費や不動産賃料などの高騰から、様々な面で国際競争力を失いつつあるなか、生産性と付加価値の向上が求められているというお話をさせていただきました。今回は翻訳業界における生産性と付加価値について紹介させていただきたいと思います。

その前に、すこしさかのぼって中国語翻訳の黎明期、日本に中国語の出来る人はすくなく、中国に日本語の出来る人も少ないころ、翻訳の多くは日本国内でされていました。翻訳者の絶対数が少ないので単価も高く、業務の絶対数も少ないものの、労働RATIOは高いオイシイ仕事だったのです。その後中国で日本語の出来る中国人が増えるにつれて、翻訳作業は料金の高い日本から中国へとシフトしはじめたわけです。

時間を戻して現代中国で、為替レートの変動は日本円で給与を受けている駐在員が帰国を切望するレベルになっています。中国国内のコスト増大に反して、国外への販売は人民元高による利幅の目減り、競争力の低下から値上げも出来ないという板ばさみのなかにあります。生産性を上げることで翻訳にかかるコストを抑え、付加価値をあげることで顧客からの値下げ圧力に耐えるということが、中国ではほかのあらゆる業界と同じく、翻訳業界もまた直面している問題であるといえます。

では翻訳業界における生産性の向上とはどのように進められるべきなのか、また翻訳の付加価値とはどういったものが求められるのかということになるわけですが、生産性の向上とは言うまでもなく翻訳や校正作業の効率向上であり、特に産業翻訳や技術翻訳の世界におけるそれは、CAT(翻訳支援)ツールの導入であったり、校正ツールの導入であったりすると同時に、翻訳や校正作業者の計画性や作業効率の向上ということが出来ます。

また、付加価値という点については、翻訳「サービス」という認識に則り、内容理解のための低コストの翻訳なのか、申請書類などの正確な翻訳、契約書など相互の権利責任の範囲を明確にする翻訳、販促パンフレットなどの心に響く翻訳など、「どのように」翻訳するのかという点にあるだろうと考えるところです。

 
| 【中国語翻訳コース】 | 22:20 |
「北京から見る日中翻訳業界」 第1回 価格と品質の平衡点


今回から中国の翻訳事情や北京のニュースなどを中国は北京よりお届けさせていただくことになりました北京東櫻花翻訳有限公司(英語名HC Beijing Inc.)と申します。弊社はアイ・エス・エス・インスティテュートと同じ翻訳センターグループの中国子会社です。

弊社が、北京に設立されたのが2008年ですので、すでに6年が経過したことになりますが、この間に北京ではオリンピックが、上海では万博が開催され、都市内でも都市間でも地下鉄や高速鉄道や各種設備などのインフラ建設が一気呵成に進められました。しかしながら、ハード面の整備に対してソフト面の成長の遅れが指摘されることの多い中国経済において、翻訳業界もまた同じ課題に直面していると言うことができるかもしれません。

豊富で安価な労働力に頼っていたからこそ、工場などの機械化は遅れ、個々の従業員の技量向上より全体で平滑化された作業レベルを維持することで、高品質でなくても一定品質の大量生産が低コストで実現できたわけです。しかし、現在は事情が変わり、5年で倍になったことで有名な労働者の最低賃金や、オフィスや工場の賃料の高騰などで生産コストが増大し、同時に中国の成長を支えてきた輸出が、継続的に高くなっている人民元の為替レートの圧迫と重なり、価格と品質の両面で競争力を失いつつあるということです。

やや大きな話になってしまいましたが、実は翻訳業界にもその縮図を見ることが出来ます。翻訳者を育て、品質を向上させることよりも、安価に、大量にさばいていくことに注力されがちで、品質が少々悪くても、それを補ってあまりあるコストの優位性があり、国内外の需要にこれがマッチしていたということが言えると思います。

少し脱線しますが、私が日本に帰国するたびに感銘を受けるのは、日本のサービスの高さではありません。日本のレストランやコンビニで働く中国人の素養の高さです。言葉はややたどたどしいですが、お客様の気持ちを意識した接客をしていることが実感できます。北京のコンビニはお客様が来店しても「歓迎光臨」(いらっしゃいませ)の一言も発せず、お客様が見えていないがごとくに商品の入れ替えをしたり、さらには従業員同士でおしゃべりを続けていたりします。

なにを言いたいのかと言えば、日本で求められていて、中国で求められていなかったものがそこに現れているのだろうということです。中国人でも日本人でも違いはなく、相手を意識して相手の立場にたって行動するか、自分の都合だけを考えて行動するか、そこに分かれ道があるように思います。

さて、翻訳を自分の都合で解釈して進めたらどうなるでしょう?翻訳する文書の種類、用途や目的によって、翻訳の仕方は千差万別に変化するはずです。自分が良いと思うものではなく、顧客が求めるものに仕上げるのがサービス業としての翻訳のあり方だと思いますが、顧客のニーズが理解できていない翻訳者にはこういう仕事はできません。

すべてがそうだとは言いませんが、これまでは低価格で、その価格に見合った品質のものが国内外の需要にマッチしてきたわけですが、現状としてはやはり工場生産と同じく、需給の乖離、競争力を失いつつあります。では、今後、翻訳業界としてはどのような対策をとり得るのか、どのような道を進むべきか、次回以降に掘り下げていきたいと思います。

 
| 【中国語翻訳コース】 | 12:00 |

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