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「北京から見る日中翻訳業界」 第15回 「おいしい中国」


12月になっても街にクリスマスの飾りはなく、年末の雰囲気もなく、北京に暮らす日本人はせめて気分を出すためにクリスマスには洋食レストランに行ったり、年越しに日本料理店でそばを食べたりするわけですが、中国の物価が高くなったおかげで美味しいものを食べるのも結構な散財になります。

北京といえば世界各国の駐在員へのアンケートで物価の高い都市ランキングが7位になり、アジアでは上海が1位、北京が2位という高順位につけています。おそらく、北京で日本と同じもの、たとえば日本食レストランや日本食スーパーなどを常用するなら日本より高くなるのは当たり前ですが、中国人が日本に旅行してなにを食べても安くて美味しいというのならやはり北京は高いのだろうという気がします。

日本食は中国ではすでに珍しいものでも、特段高級な料理でもありませんが、それでも日本食は中華料理より割高ではあります。例えば北京でも日本風ラーメンは人気ですが、ラーメンと餃子やご飯物のセットにしたら軽く1000円を超えます。割りと人気の日本食レストランがあってお昼に握り定食を出しているのですが、これが2000円くらいですからやっぱり高いですね。味は日本の回転寿司が美味しすぎるのでしょうけど、残念ながらこれに負けています。それが結構繁盛しており、お客は大半が中国人だから、中国に美味しいレストランはないのかという気になってしまいます。

中華料理のレストランで美味しい店も、日本人駐在員はちゃんと把握しておかなければ日本からの出張者や顧客の接待などにも間に合いません。中国のレストランは相対的にリーズナブルですが、たとえば北京ダックを食べて美味しかったと喜んでもらえるレベルのお店ならやっぱり一人5000円くらいはかかります。ちなみに中国の高級料理店などは桁が変わりますが、昨今の反腐敗キャンペーンのために経営困難になっているところも多いようです。

お客様をもてなすなら多少お金を使ってでも、それなりの店構えのレストランに行きたいものですが、北京に住んでいて日常的にこんなところでばかり食べていては破産します。自炊すればいいのですが、一人暮らしの若者や単身赴任のサラリーマンなら面倒くさいですよね。日本ならコンビニ弁当なんていうところ、中国の場合はリーズナブルな食堂も多くあります。私も通りがかった小さい店にいきなり入る勇気はありませんが、北京で1年以上も営業しているような店ならまずは大丈夫かなと考えています。安全を気にしたら本当にきりがないし、大きい店や高い店だから安心というわけでもありませんから。

私がよく利用するのは陝西麺の専門店で、名物の酸っぱくて辛い麺が1杯280円、膜という中華風のバンズにトロトロに煮込んだ肉を挟んで食べる中国バーガーは130円、地元の燕京ビールは1本100円で出してくれるのですが、一番嬉しいのはお勘定って言った時、店主がニコって笑って「腹いっぱいになったか?」って必ず聞いてくれることです。こういうリーズナブルでおいしくて心が暖まるようなお店も実はたくさんあります。

ただ、高いものでも安いものでも、北京で美味しいものを食べるにはコツがいります。チェーン店でも場所によって値段も味も変わるし、人気が出れば偽物だって現れます。また同じ店でも注文の仕方でも値段と満足度ががらりと変わりますから、北京の外食は1つの技術と言ってもいいかもしれません。

 
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「北京から見る日中翻訳業界」 第14回 「ワケありツアーにご用心」


先日輪タクのおばちゃんと世間話しているとき、「あら、あんた日本人かい?こんどね、わたしも日本に行くんだよ。だからさ、日本でなに買ったらいいか教えてくれない?」なんてことを聞かれました。

輪タクというのはだいたい交通が不便なところで、地下鉄やバスの駅までなんていう短距離専用で利用される屋根付きの三輪オートのことで、本来は障害者の移動に使うためのものであって客を乗せることは認められていない、いわゆる白タクの一種なわけです。地域によって値段が変わりますが北京の中心区では8-15元(約160-300円)ですね。北京の中心区の交通が不便なのかってことは、聞かぬが花というところです。

違法だから取り締まりを避け、こそこそと毎朝ラッシュ時に住宅地区から、また夜は遅くまで今度は駅周辺で客を待つ、結構大変なお仕事なのに大した儲けにもなりません。そういう人でも海外旅行に出かけるということ、しかも日本で爆買いする気マンマンってところに興味深いものがあります。


日本では1回の旅行で数百万使うような中国人富裕層を面白おかしく取り上げることが多いですが、中国から日本への旅行もバリエーションが広がってきており、5-6日程度のパックツアーなら、なかには航空券単体価格より安い料金にパックされているものも少なくありません。

中国国内のパックツアーで注意を要するのは、「買い物に連れて行かれること」と「エクストラ料金をとられること」です。万里の長城のツアーなのに関係のない商品の即売会に連れて行かれ、一定人数が買うまで説明会が終わらずにツアーが出発できないとか、長城の麓まで到着したと思ったら登る料金は別請求されたりなどといった具合で、買い物する店も、食事するレストランもツアー向けに用意されているのです。

中国の旅行業界は、ツアーを組む旅行会社と、実際に旅行客を帯同する旅行社とが分かれることが多く、下請け側ではひどくなるとお金を払ってツアー客を買ったりします。当然下請け側は旅行社もガイドもこの時点ではほとんどタダ働きです。そこからどうやって回収するかというと、土産物屋やレストランからのキックバックと、現地徴収のエクストラとなるわけで、パックツアーでは割損な買い物とまずい食い物がパックされていることが多いわけです。日本から中国のパックツアーでも現地旅行社との提携で某有名北京ダックチェーンに案内されることが多いですが、まぁ「点到為止」、この辺で置いておきましょう。


さて、冒頭の輪タクのおばちゃんは、そういう事情を良く知っているから、日本で騙されないためにはどうしたらいいのかってことを心配しているわけですが、日本にそんなことはないですよって思いたいところです。

残念ながら現実は理想と異なり、最近中国で話題になるのは日本で騙された体験談であり、おばちゃんの心配は的を射ているわけです。日本で受け入れする旅行社の多くは中国や台湾・香港系で、市価の10倍もふっかけるような「独自の免税店」とか、ツアー客専用の超低レベルメニューを用意した「有名中華料理店」に誘導されます。以前イタリア旅行した時に見た、路地裏の寂れた中華料理店にぞろぞろ入っていく中国人団体ツアーの光景を思い出しました。

せっかくの日本旅行ですから、「なにを買ったらお得か」とか、「どこで買ったら騙されないか」などということから離れ、日本ならではの買い物やグルメ、楽しい体験を日本で提供して、また来てもらえるようになればいいですね。翻訳会社としてもその一助になれればと考えているところです。

 
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「北京から見る日中翻訳業界」 第13回 「白タクとハイヤー」


「此頃都ニハヤル物」なんて口上をたてたら現代北京版はわりと簡単にできてしまいそうですが、社会風刺はさておいて北京のタクシー業界に起きている変化を紹介します。

北京や上海のような大都市では街中で道を聞かれることも多いのですが、北京の場合は道ではなくて、「どこでタクシーが拾えますか」なんて聞かれることもあります。北京市内は場所によってはタクシーが客の乗降をさせてはいけない地域があり、空車のタクシーが停まってくれないという場合には、その場所が禁止区域だからダメな場合もあるし、あるいはその方向だとタクシーが嫌がって乗車拒否する率が高いというような車線であることもあり、そういう地元民でないとわからない情報を聞きたいということが背景にあります。

北京ではラッシュ時や雨天でなくても、タクシーを拾うのに10分から30分かかることが珍しくありません。以前実施された調査によると、北京での「タクシーの拾いやすさ」は調査対象になった38都市のなかで28位という結果でした。ちなみに上海は第3位、天津が第2位ですから、北京は随分悪い評価がされており、上海と天津が好成績ということですから都市の規模などだけに原因があるものではないかもしれません。

北京のタクシーの不便さはこれだけでなく、やっと空車が来ても窓から首をつきだして、行き先を聞いてくる運転手が多いわけで、つまり行き先によっては乗車拒否されます。それを嫌って無理やり乗り込んでしまったとして、行き先を告げると「知らない場所だから道案内してくれるなら行く」なんて言ってのけます。これは本当に知らない場合もあるし、知らないふりして遠回りする伏線だったり、あるいは行きたくないからあわよくば下車させようという目論見であったりもします。

そんななか、最近は道端でタクシーを探す人が減りました。変化を起こしているのはここ数年に次々と生まれてきている携帯アプリを使ったサービスです。ネットにつながったアプリを使い、現在地の近くのタクシーを探すというもので、当初はアプリを使うと拾いやすさが格段にあがって一気に普及しました。ただ、普及してしまえば元の木阿弥で、タクシーの運転手は道端で窓をあけて行き先を聞くかわりに、アプリで配車要求を出した客に直接電話をかけて行き先を聞くようになったので、渋滞が予想される地域へ向かう場合などは、乗車拒否の確率はむしろ上がってしまったわけです。

タクシーが拾えないラッシュ時に需要の多いオフィス街などでは、交差点付近にとめて客を探す白タクが多く発生していました。タクシー料金の倍から3倍の値段をふっかけられるし、もちろん違法でもあります。発生していたと過去形にしたのは最近ずいぶん減ったということがあります。もっといいナニカが出てきたからですが、取って代わったのが「新しい配車サービス」です。

「タクシー配車サービス」から一歩進み、「タクシー会社ではない一般人の自家用車とその運転手をアプリで配車する」というサービスなのですが、タクシーより低料金で、乗車拒否されることもなく、アプリに付属のナビがあるために道案内する必要もありません。中国語では「快車」とか「専車」とか言われていますが、私はまだ適切な日本語訳を思いついていません。「ハイヤー」以外にあるのかって気もしますが、タクシー会社に所属していないものをハイヤーというのはちょっと語弊があるようにも思います。「それってつまり白タクじゃないの」とは思っても言わぬが花というところでしょう。日本のニュースではハイヤー配車サービスになっていますけどね。

ところで「ハイヤー」の運転手、どんな人がやっているのかっていうと結構お金持ちでハイソなお兄ちゃんがやっていたりします。ある時アプリで予約できたドライバーから早速電話がかかってきたのですが、開口一番「何人ですか?」って普通はなかなか聞かれない質問。子供連れで3人だと答えると、嫁が助手席に乗っているので後部座席3人でよければ引き受けますとのこと。奥さんをナビゲーターにしていたわけです。客が日本人だとわかると、「俺あまり日本語分からないよ」と運転手、「『あまり分からない』と『全然分からない』の違いを教えてあげようか」と奥さん、夫婦漫才が見られるハイヤーは北京にしかないかもしれません。

 
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「北京から見る日中翻訳業界」 第12回 「爆買いの行方」


8月の中国にはいろいろなことが起こりました。権力抗争だとか陰謀だとかは個人的には大好きですが、本ブログの趣旨と異なりますので取り上げません。興味のある向きはネットでも週刊誌でもあふれんばかりに出回っていますからそちらからお願いします。今回のお話はこの記事が配信されるころには結果が出ているはずの、9月3日の記念日連休、中国人訪日ツアー客の人数と、消費金額についての展望です。

爆買いなんて今更な話題と思われるかもしれませんが、今回は注目すべき理由があります。一つには8月に人民元が切り下げられたこと、もう一つには関税徴収基準の強化がされることの2題です。人民元切り下げにも驚かされましたが、関税強化は8月半ばになって急に発せられた通知で、9月1日以降は空港から入国する際に持ち込む物品は、転売目的でなく自分が使用するためのものであっても、トータルで価値が5000元を超える分について関税を徴収するというものでした。この法律自体は新しいものではなく、運用強度を厳格化したということです。

基準とされる5000元といえば約10万円に相当するわけですが、中国人の富裕層が数日で数百万使ったなんて武勇伝が数多く伝わっているなかでずいぶん少額、つまりかなり厳しいものに見えます。また、日本での爆買いにはかなりの割合で転売目的、つまり中国に持ち込んで中国のECサイトで販売されるものが含まれていたはずですからこれらにも影響がありそうです。

そうして見れば、今回の規制強化の目的としては、(1)国内での消費促進による国産製品の保護、(2)国内で消費されていれば入るはずの増値税(付加価値税)を関税徴収で補填、(3)国外への資産流出を制限というあたりになろうかと推測することができるとは思います。

また旅行者が海外旅行で購入して持ち込む以外に、海外からの代購(中国国内の中国人の代理で海外サイトから購入すること)は、「海陶」という新しい言葉ができるほど流行しています。サイトには日本のECサイトなどで購入した画面キャプチャが掲載され、日本のサイトから購入した正規品であることや、また中国で流通している偽物との比較写真、真贋の判断基準などを掲載したネット店舗が数多く出店されています。

これらの「貨源」(仕入れ先)は、日本在住の中国人のほか、日本に旅行した際にネットで購入してホテルへ発送させ、ホテルで受領したものを自分で今度は中国の自宅向けにEMSなどで発送するというケースも含まれています。いずれにしても、日本国内で中国人が「爆買い」したことには変わりありませんが、これらへの関税徴収も厳しくなり、「代購」のコストは少なくとも30%上昇するという解説がネットで紹介されたりしています。

さて、私が注目したいのは8月の人民元の切り下げと関税徴収強化で、爆買いによる中国人の日本での消費は減るのか、中国人の訪日観光客数の増加には影響があるのかという二点です。中国国内販売では関税のほかに増値税、品種によっては消費税が重なり、同じ商品が日本の2倍3倍になることもあります。また、税額面で、日本で買うメリットがなくなったとしても、日本で買えば偽物の心配は少なそうです。

激安ではなくなったとして、それでも日本で買うのか、それでも日本に行くのか、私としては、これまでの訪日ツアーがただの買出しツアーでなかったと信じたいのです。もう1つ、中国には「上に政策あれば下に対策あり」という言葉があります。政策は出ましたが、さて人々の対策やいかに、というところは、もっと気になっているところでもあります。

 
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「北京から見る日中翻訳業界」 第11回 「麻婆茄子と魚香茄子」


日本へ旅行する中国人が増えるにつれて、グルメやメニューに関する翻訳に携わる機会も増えてきました。日本で見る料理にも中国人に馴染み深いものからそうでないものまであります。翻訳においては、馴染みのあるものにほど落とし穴があったりするわけです。

さて、異郷で母国の料理が恋しくなるのはよくありますが、日本にくれば中華料理も日本風になっていたりします。たとえば麻婆豆腐なんて日本で食べると花椒(フアジアオ)が入っていないものが大半です。麻婆豆腐の「麻」はしびれるという意味で、これは花椒が入っているから口がしびれるのです。料理を表す肝心な要素が抜けているわけで、本当なら「豆腐の甘辛煮込み」ってあたりが正しい訳語な気がします。

また、日本の中華屋さんで餃子を頼んだら厨房のなかでは「コーテル、イーガー(锅贴一个)」という元気な和製中国語が聞こえます。中国で餃子と言えば茹でたものがスタンダードだし、餡ににんにくが入っていないから会議前でも口臭の心配はいりません。中国北方では餃子を食べるときに生のにんにくを丸かじりしながら食べる習慣もありますが、餡のなかに刻んで入れるのは日本風だと思われます。日本に出張にくる中国人は要注意なところです。

同じ漢字の料理名でも国がことなれば発祥元と異なるものになることもあるわけですが、日本国内でも地域によって同じ名前の料理が変わったりもします。たとえば「たぬきそば」は関西でたのむと油揚げがのせられたそばが出てきます。「たぬき」だから「タネ抜き」つまり「天カス」のはいったそばという説は日本全国のスタンダードではないわけです。では油揚げの乗ったそばは関西だけのものかというとそうではなく、関東ではこれを「きつねそば」というわけですから、これらを中国語に翻訳するとしたらどうしたものですかね。興味のある人はネットで検索してみてください。いろんな人がいろんな翻訳をしています。

さて、中華料理で名前のまま翻訳できないものということをテーマにすると、代表格になるのが天津飯とか冷やし中華になろうかと思います。中国生活の経験がある人ならわかりますが、中国に天津丼なんて料理は存在しません。冷やし中華にいたってはそもそも縮れ麺が中国本来の麺ではないし、冷やして食べるというのもレアケースです。そこに酢をかけて「和がらし」をそえて食べるなど、中国人からすればウルトラCもいいところです。

これが難度最高かと思っていたらまだありました。「麻婆天津麺」という料理は、日本風ラーメン(縮れ麺)の上に麻婆(「麻=花椒」が入ってない日本風甘辛あんかけ)が乗って、その上に蟹肉のはいってない芙蓉蟹(カニ玉)がトッピングされたものだそうです。個人的には難易度Eランクくらいまでいってそうな気がしますがどうでしょうかね。

日本には麻婆茄子などの麻婆つながりの料理がありますが、これも中国にはありません。良く似た料理に魚香茄子という料理があり、これは麻婆豆腐と違って「麻=花椒」が入っていないのです。さて、するとこの料理の餡は日本の麻婆豆腐とほぼ同じ(細かいことはきにせずに)ってことになりますかね。余談ですが最近、中国では北方から旅行してきて四川でこの料理を食べた客が、「魚が入ってない」というクレームをつけたことがあったそうです。関東でたぬきそばを頼んだ関西人が「油揚げがはいってない」とクレームをつけたネタを思い出して笑ってしまいました。メニューの翻訳って難しいですね。

 
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「北京から見る日中翻訳業界」 第10回 「老師と先生」


5月のことですが、北京では「北京日本人会」が主宰する蒼井そらさんの講演会が開催されました。場所は北京の長富宮飯店(ホテルニューオータニ)にて、日本人会会員向けのイベントではありましたが、中国人に言わせると「さすが日本人、(中国人なら)ちょっと出来ない、というか思いつかないことをやるね」ってことでした。

Wikipediaによると蒼井そらさんの紹介は「AV女優、女優、タレント、歌手である」とされていて、現状ではかなりマルチな活動をされており、AV引退説なども流れたりしたようですが、上記の講演会では「私はいつでも脱ぎますよ。ただ中国では許可してもらえないんですよね」なんて話されていたそうです。

さて、なぜ中国で蒼井そらさんかというと、ご存知の方も多いとは思いますが、彼女は実は中国で「老師」と呼ばれるほど人気で、また尊敬もされていて、中国のマイクロブログには1500万人ものフォロワーがついているのです。ブログには中国語でつぶやかれていて、間違いやたどたどしい表現も多いそうですが、ファンにとっては小さなミスもむしろ好ましく映るのでしょうね。このように人気者の蒼井そらさんですが肩書は上記のとおりですから、中国人の感覚からしてみれば、日本人会のような公的機関が企画する行事としてはかなり意外に感じられたようです。

そんな彼女につけられた敬称である「老師」について、このブログの読者なら説明は不要と思いますが、日本語では「先生」のことです。ちなみに中国ではフリーランスの翻訳者への敬称にも、「○○老師」とするのが業界の流儀になっています。蒼井そらさんが何の先生なのかは別として、まぁそのように尊敬され、そして愛されているわけですね。

今回もう少しお話したいのが、この敬称についてです。例えば日本で弁護士の先生への敬称なら「○○先生」っていうのが普通ですが、中国では「○○律師(弁護士)」っていうのが一般的です。この場合は日本語の「先生」が中国語の「老師」には対応しませんよね。老師といえばカンフードラマを思い出す人も多いと思いますが、ああいうのに出てくるお年寄りの達人はむしろ「師父」であって、ジャッキー・チェンとか習う方は「弟子」になり、「老師(先生)と学生(生徒)」とはちょっとニュアンスが変わります。

「先生」という敬称は中国の日常生活でもよく耳にするもので、たとえば道を聞く時やレストランで店員が客に呼びかける際などにも使えますが、もちろんこれは男性に対してです。女性に対しては年齢に応じて変わることも多くなったようですが、若い女性なら(あるいは若く思われたい女性には)「小姐」とか「姑娘」とか呼びかけることも多いようです。街の食堂などで店員を呼ぶ時は「服務員!」と叫ぶか、上品なレストランなら「ニイハオ」って手を上げるのが今風です。

さて、翻訳のお話です。小説や漫画でカフェの席についたばかりの清楚な若い女性がいるワンシーン、イケメンの中国人ウェイターが彼女に「姑娘」と声をかけました。さて、日本語に訳する場合、カフェのウェイターが客に対して「お嬢様」と声をかけるシーンを想像できるでしょうか?日本のカフェなら「お客様」って声をかけるのが普通だろうと思いますが、もっといいのを思いつく方がおられたら教えてもらえると嬉しいです。

もう1つ、もし中国にAV女優出身のアイドルが今後売れっ子になったとして、蒼井そらさんのように「○○老師」とか呼ばれるようになったとしたら、この方を日本語で紹介するにはどういう日本語がいいでしょうか。「蒼井そら老師」って日本語でも通じるけど、私の感性では非常に野暮ったく聞こえます。彼女の華やかな雰囲気なら「カリスマアイドル蒼井そら」とか、「愛のマイスター蒼井そら」とか―――ダサい?―――そう思った方はご自身の想像力の翼を多いにはためかせて、もっと良いものを考えてみてくださいませ。

 
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「北京から見る日中翻訳業界」 第9回 「中国医学と陰陽五行と翻訳の話」


唐突ですが中国の伝統文化の奥深さとコンピューター技術の発展から、IT翻訳にこじつけるのが今回のお題でございます。

さて、漢方薬の煎じ方も知らない世代が増えている中国ですが、それでも大きな病院には西洋医学と中国医学の両方のお医者さんがいて、それぞれのアプローチで診察し、薬を処方してくれます。ここでいう漢方薬とは何種類もの生薬を組み合わせて処方されるもので、中国では「中薬」と呼ばれます。日本の薬局で漢方薬を買えば、一般的には効果が遅いが身体にやさしいとか、副作用がないなどという認識を持たれがちでもありますが、中国で中薬と言えば毒も含みます。毒をもって毒を制すとは中医から来た言葉であり、その場合は健康な人が飲んでも身体を壊すだけで、これは副作用ではなく正しい作用の生薬を、誤って使用しただけのことであります。

中国医学とは「患者の状況」に応じた治療を行うことであり、風邪にはこの薬、下痢にはこの薬というレベルではなく、患者は年齢が何歳で、慢性的に身体の状況がどのようになっていて、生活リズムや精神状況や場合によっては家族構成や生年月日などまで総合的に判断して決定するものであり、ですからその意味において、日本のドラッグストア(病院の処方箋を売る薬店を除く)で売っている漢方薬と中国の「中薬」は意味が異なる、はずなんですが、中国でも最近は薬局の薬を指して、これは中薬だから副作用ないなんていう中国人がおられます。言葉はいきもの、ってことかもしれません。

さておき、中医が判断する材料として主なものは、舌や指先、顔色などを見ること、声や息遣いなどを聞くこと、脈や腹部を押した感触、本人や家族の病歴や既往症、生活状況などの問診で、ここに陰陽五行の理論が応用されます。陰陽五行とは陰と陽、五つの性質すなわち「木」「火」「土」「金」「水」であり、これが身体においては「肝」「心」「脾」「肺」「腎」に相当します。これらには相生相克の関係があり、相生関係として、木は火を生み、火は土を耕し、土は金を育みますが、相克関係が同時に存在し、土から生まれた金は木を切り倒すが、火に溶かされもするものだということです。

この原理に基づけば、心臓が弱っているなら肝臓からの流れを通してやればよく(相生)、また水の気による制御を避ければいい(相克)という考え方ができます。身体の一部を切除したり、一部を保養したりするということではなく、いかに全身のバランスと気脈の流れを整えるかということが中国医学の考え方であり、そのためには家族環境や食生活、ひいては生年月日時による四柱推命まで行う医者が珍しくありません。

四柱推命とは中国語では八字と呼び、これは生まれた年月日時から求められる符号の組み合わせになります。八字と言われる所以は、この符号が膨大な種類のなかから8つの組み合わせとして算出されることにあります。そして、その組み合わせから、この八字の持ち主はどのような人間で、どういう性格で、どういう仕事に向いていて、ひいては将来どのような運命が待っているかを読みとることを、「算命」といい、占い師の仕事になります。

八字を求めるだけなら、実はそれほど膨大な資料は必要なく、計算式と表があれば素人でも出来るので、それを活用した四柱推命のようなコンピューター占いも多く見受けられますが、コンピューターの行う思考とは統計の参照と計算であって、占い師の「算命」とは異なるし、それゆえに例えば中医が患者の病状を細かく問診票にしてコンピューターに入力しても、中医の診断にはならないように思います。

さて、翻訳業界でもコンピューターの出番が増えてきましたが、コンピューターが翻訳文を決定する方法と、人間のそれの決定的な違いとはなんでしょうか?ルール型と統計型の違いをとりあげたことがありますが、どのような方法であってもコンピューターの特徴は「考えない」ことだと思います。

原文の言いたいことを解体し再構築する、そういう能力が人工知能に備わったなら、翻訳者も占い師も中医もコンピューターに仕事を奪われそうですが、人間のAIに対する優位性とは捨てることが出来る点だと言われたりすることもあります。人間だって「考える」という活動を説明しきれているのかなんて言い始めると、哲学的でSFっぽいお話はマニアックになりすぎるからこの辺で、あとは皆様の思索にお任せしますかね。

 
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「北京から見る日中翻訳業界」 第8回 「敢えて変えるのか、敢えて変えないのか」
中国人の訪日旅行ネタは話題が尽きませんし、日本の受け入れ側の翻訳需要も増えており、日常的な言葉遣いが増えると、同じ漢字の同じ熟語が多く存在する日本語と中国語の間の翻訳でも、違う言葉に変換しなければならないケースが多くなります。

例えば「地元の名物料理、ぜひ挑戦してみてください!」なんて文章を翻訳する時に中国語でならどうなるでしょう。あるいは「新しくできたアトラクション、ぜひ挑戦してみてください!」ならどうでしょう。「挑战」という中国語はありますし、辞書を引いてもほかの訳語が掲示されませんけど、あんまり適切な訳語とは思えませんね。辞書は言葉の意味を説明するもので、訳語を提案してくれるものでない例の一つだと思います。

アトラクションと言えば1年延期されましたが、来年には上海ディズニーランドが開園予定で、設備や資料などの準備が着々と進められているところです。日本の東京ディズニーランドでは「シンデレラ城」になっているところ、中国では「奇幻童話城堡」になる予定だそうです。

ところでディズニーランドの中国語、みなさんご存知ですよね。こういった訳語は同じ中国語圏でも訳語が分かれることもありますが、ディズニーランドの場合は香港と同じ「迪士尼乐园」が上海ディズニーランドの公式ページでも採用されています。

ただ、香港のディズニーランドなどが登場する前に、訳語が定まっていないころ、ディズニーランドのように「音」から漢字をあてる「音訳」では訳語が不統一になることもありました。特に台湾ではウォルト・ディズニーのことを「華特狄斯奈」とか「迪斯奈」などと言っていたころもあり、欧米の政治家や、ハリウッド俳優の名前などと同じく漢字の当て方がばらけるということは一定以上の知名度を得るまでの期間によく発生します。最終的には自然淘汰されるのを待つか、あるいは当事者が自分で決めることで定訳化されます。

蛇足ながら、中国では意味から翻訳出来る場合は、音訳は避けられる傾向があると思います。音と意味とを兼ね備えたコカ・コーラの中国語(可口可乐)なんて今でも名訳として取り上げられますしね。

さて、上海のディズニーランド以外に、5年後には実は北京にもユニバーサル・スタジオが開設される予定になっています。今年から改正された環境法なども奏功して、今は低迷している日本や国外から中国への観光客も復調したらいいのにとは思いますが、時を戻して今、日本へ出かける中国人の「爆買い」はまだ勢いが衰えていないようです。本稿執筆中はまだゴールデンウィーク前ですが、中国も1日から3日は三連休、この機に日本へ旅行を計画する中国人も多いようです。


春節休暇の際の「爆買い」は中国でも話題になりましたが、報道ではどういう中国語になったかというと「爆买」がそのまま使われるケースも多くありました。初めて聞いた時はしっくりこなくて、「抢购」(買い漁る)なんかの方が適切じゃないかと思っていたわけです。過去形にしたのは考えを変えたということですが、なぜかというと後者は中国にもともとあった「光棍節」(独身者の日 シングルデー)のオンラインショッピングキャンペーンに使われていた印象が強すぎて、言葉としてはなんだか借り物みたいな便りなさを感じました。

中国も新しい言葉がどんどん生まれていますし、日本からの言葉の逆輸入だって今始まったことではありません。根付くかどうかは別問題ですけど、こういう文化と言葉の交換が本当の意味で相互の関係を深めていくのだとも思うのです。

 
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「北京から見る日中翻訳業界」 第7回 「中国語翻訳に使うべき検索エンジンは?」
今回は翻訳や校正でお世話になっている検索エンジンについてです。

日本でよく使われているのはYahooGoogleであり、ほかを圧倒していると言って良さそうですが、世界のシェアで見ればトップはGoogle、2位はなんと中国の百度(バイドゥ)です。

日本で分からないことがあったら「ググってみな」なんて言葉が生まれましたが、中国で分からないことがあったら「百度一下」(バイドゥしてみよう)って言葉が生まれ、試験の問題に対して「百度したら、すぐわかります」って回答をした生徒がいたという笑い話にもなっています。


さて、それでは中国の検索エンジンのシェアをもう少し詳しく見てみると、トップは確かに百度で58.3%、2位が360(奇虎Qihoo)で24.9%、世界トップのGoogleは1%、Yahooはそれ以下ってことになっています。これにはいろいろ背景事情があり、2010年まで遡ればトップは百度ですがシェアは73%でした。今よりも高いですね。そして当時、百度を追随するのはなんとGoogleで24.3%をしめ、2強として市場を圧倒していたのです。

2010年はGoogleが中国を撤退した年です。サーバーを香港に移転して検索サービスは継続されましたが、中国大陸ではその後ネット検閲の規制が強まり、Google検索を含めたGoogleサービスは非常に不安定になり、速度や反応も悪くなったことからシェアをどんどん下げ、2014年の7月にほぼ全てのサービスが遮断された結果、上記のとおりシェアが1%ということになってしまいました。

2位の360はもともと、セキュリティソフトで有名です。360以前に中国には3強と呼ばれるセキュリティソフトがあったのですが、360は完全無料という戦略でシェアを拡大しました。また、360は2012年に検索エンジンのサービスを開始する前に、「ウェブブラウザ」もフリーウェアとして提供しており、検索エンジンサービス開始時にはすでにブラウザソフトのシェアを25%も占めていたのです。

360のとった戦略は自社の提供するブラウザの検索エンジンを、初期設定で自社のものにした結果、1年たらずで百度から10%以上のシェアを軽々と奪い去ったのです。百度も同様にブラウザソフトやセキュリティソフトを作っているので、市場の競争は激化しました。ブラウザとバンドルでインストールされるセキュリティソフトには、自動的に他社のソフトをアンインストールもしくは無効にしてしまうようなものや、あるいはインストールされたパソコンのなかで情報を自動収集するプログラムするものなどが含まれるなど、セキュリティソフトからのセキュリティを考えなければならない事態となったのです。

念の為に申し上げますが、どの検索エンジンを使うにしても、そのためにブラウザソフトやセキュリティソフトをインストールする必要はありません。検索エンジンのサイトやポータルサイトから検索すればいいだけです。

その上でさて、どの検索エンジンがいいのかって言えば、現在のところ、日本語はGoogleかYahooで多少性格が変わるので、好みの合う方を優先、もう一つをサブにすればいいかと思います。中国語は筆者の場合はシェアの高いところから優先して使用していますが、Googleがおりた後で百度が1強になった期間に精度が落ちたというようなことも囁かれています。

360という伏兵の躍進で市場競争も上記のように激化していますが、他社の妨害ではなく自社の品質や精度の向上で競争し、ユーザーが安心して便利に使える選択肢が増えることを願うところです。

 
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「北京から見る日中翻訳業界」 第6回 「中国人はなぜ日本の炊飯器が好きなのか」
春節あけて初回のブログです。

今年は中国人の訪日観光客による「爆買い」なんて言葉が生まれるほど日本のメディアでも注目されていました。

特に話題になったのは中国メディアでも報道されましたが、電子炊飯器と温水洗浄便座で、中国でも安くて実用に耐えるものが売っているのに、なぜ日本に行ってまで、友人知人の分まで1人でいくつもの炊飯器を買ってくる必要があるのかってことでした。たしかに日本米を軟水で炊くなら日本の炊飯器だとまるで違うという日本人の声はあります。でも中国の水は基本が硬水ですし、日本米は輸入品がありますけど普通の米の10倍ですよ。

主な理由として一つには同じメーカー・ブランドでも、あるいは同じMade in Chinaでも、海外で販売されているものが信頼されているということはあると思います。日本でもかつて、同じ日本メーカーでも日本国内向けは1年で壊れるのに海外に輸出されたものは10年使えるなんて話題があったことを思い出しますね。化粧品などは中国人女性にとって日本旅行のマストバイ、同じメーカーの中国国内向け商品が、中国各都市のワトソンズ(ドラッグストアの名称)で安く売られているにもかかわらずです。

二つ目の理由として、中国国外で販売されているものの購入を考えた場合、同じ商品でも中国で購入する方が高くつくケースは多いことがありそうです。中国でも大人気のiPhone6は日本で87,800円の機種が、中国で買うと6,088元約118,000円です。これでも3割以上違うわけですが実は差異としては小さいほうです。モノによっては2倍、3倍になることも珍しくなく、温水洗浄便座などは日本の4倍の値段で売られているものもあるそうです。iPhone6だって品薄の時は瞬間風速で2万元(30万以上!)にまでなりました。

さて、これほどの差になると出てくるのが上記でも少し触れましたが転売屋です。もちろん正規のルートで売れませんけれど、例えば「タオバオ」で日本進口(日本からの輸入)とか原装(輸入品)とか代購(代理購入)とかで検索したらいっぱい出てきます。なかには商品がニセモノでないことの証拠として、日本のアマゾンでの発注画面を掲載しているような出品者もいます。どれがホンモノでどれがニセモノかの判断は、購入者のレビューを見たり、QQ(中国のチャット)で出品者とチャットして探ったり、値段が相場から見て妥当かを検討したりして判断します。日本で買えばニセモノかどうか疑う必要がありませんね。これが三つ目の理由と言えそうです。

タオバオといえば昨年にNY上場したことで話題になったアリババ・グループのECサイトですが、ニセモノや不正規品が多いことも指摘されていました。中国のECサイトは他にもテンセント(騰訊)が運営する京東(JD.COM)や、アマゾン中国など多数ありますが、上記のような、相場を知りたいという場合、一つの判断基準として申し上げますと、京東やアマゾンにはTradosのパッケージ版や、1本10元のWindows8のシリアルキーなんてものは出品されていませんが、タオバオにはあります。Windows8が10元と思う人も、SDL社は中国に限ってパッケージ版を販売していると考える人もいないでしょうけど、こういった背景事情を知っていることは翻訳の精度をあげることにとても大切だと思うところです。

ちなみに炊飯器、私は日本から持ってきたものを使っています。中国の東北米はかなり日本米に近くて、結構美味しく炊けるのです。

 
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