通訳・翻訳養成学校のISSインスティテュートでは、キャリアにつながるプロの語学力を養成します。

ISSスクールブログ

アイ・エス・エス・インスティテュートが運営しています。


<< 『柴原早苗先生のワンランクアップの英語表現』 44回 breadを使った表現 | main | ISS派遣サイトでの通訳コラム/翻訳コラム [2013年]第2回を掲載 >>
特別セミナーレポート:ISSグループ 翻訳会社 社員による「北京最新レポート+α情報」Vol.2

2013年1月23日(水)東京校にて、ISSグループの翻訳会社(北京東桜花翻訳有限公司/衙殘センター)で活躍する岡田清志氏による「北京最新レポート」セミナーが開催されました。

厳しさが増す日中関係のなか、北京での翻訳ビジネスを通じて感じた中国ビジネスの実情から翻訳業界の動きまで、商習慣の違いなどを織り交ぜながら語られたレポート内容を2回にわけてお届けします

第二回目は、「翻訳業界の今後」と「日系企業の動き」について:

1.翻訳業界の今後について

・中国の多くの企業は、翻訳ぐらいは社内でという風潮であった。これは翻訳を軽視していた結果で、社員を軽視していたことでもある。本来、社員は本業を阻害してまで翻訳するべきではない。翻訳の基礎知識・経験がない人が、語学能力だけで翻訳ができると思うのは大間違い。翻訳以外の目的で雇用した社員をそれとは違うことで浪費することも間違い。翻訳会社としては、「翻訳の仕事は簡単なものではない」ということを強調したい。近年、中国の企業のマネージャークラスは、「社員にはそれぞれ目的の仕事があって、適材適所で社員に仕事を遂行させる。翻訳については、専門のプロへアウトソーシングする」という流れにある。これは日本が通ってきた道を中国が歩んできているということ。中国と日本が違うということではなく、そこに向かって中国が成長しているということ。案件レベルでの流動費(翻訳会社で見積りをとりました)と社内で社員が翻訳することを比較したら、当然、社内で翻訳した方がコストは安くすむということになる。しかし、固定費が発生している社員が翻訳のために2、3日稼動した場合のコストがいくらかかるか(税金も保険も備品使用等、全経費を考えた場合)ということを検証したら、生産性・コスト効率ともに低下するのは明らか。さらに、その翻訳業務によって時間外となった場合は、労働時間単価200%を支払うことになる。

・翻訳という仕事が産業として成熟できるかというのは、アウトソーシングの需給を満たせるかどうか、外に発注して信用のおける品質で納品できるかということにかかってくると思う。税金を納めていないような個人翻訳者の寄り集まりで品質コントロールはまずできない。一度は品質が良くても、次に受託したときに品質が悪ければ信用が獲得できない。企業が求めているのは、毎回安定した品質の翻訳。また、品質が良くても料金が高すぎたらビジネスにはならない。翻訳会社として、このような状況で業界全体に貢献できること、「この価格なら、これぐらいの品質は約束できる」ということで実績をつくり、それを積み上げていくことで「スタンダード」をつくっていくということではないかと考えている。「この会社に発注すれば、この価格でこの品質は出てくる」、他に発注したときに、「この会社ではこのレベルができたから、ここでもこの品質・価格でしてほしい」ということが翻訳業界全体に広まっていけば、中国の翻訳業界も成熟していくのではないかと考えている。そして、そのなかでリーディングカンパニーになっていければと思う。

・そのために、翻訳会社は何をしなければいけないか?翻訳の品質として、お客様が何を求めているのか、何に使いたいのか、それを十分に理解し、できるだけクリアにして、実際に担当する翻訳者に伝えていくこと。その後、翻訳者がその要求に応える努力をすること。これは中国に限ったことではなく、翻訳業界全体での基本的なことだと思う(日本でも同様。そして、中国語に限らず英語翻訳、その他言語でも)。

2.日系企業に関する情報について

・中国のなかでの就職先として、日系企業は人気があるか?言うまでもなく人気がない。現在の日中関係の影響は間違いないが、それだけではない。昨日・今日の話ではなく、何年も前から日本企業に対する魅力は減ったという中国人の若者は多い。その理由として、「発展空間が見えない」という言われ方をしていて、中国人の若者が日系企業に入った場合に「自分がこの会社で、将来どういうポジションでどういう仕事をしているか。どういう給与を得て、どういう生活をしているのか」という未来像を描けない、ということを言う。

・これは、中国人が日系企業を去る時の理由になっている。会社の将来性を見ているのではなく、自分の将来性を見ているということ。中国には『一人で「龍」になれる、集団になったら「虫」にも劣る』という言葉がある。日本人は、個人の突出した能力よりも集団での協調性を求められることが多く、集団になったら強いが『一人になったら「虫」にも劣る』ということを言われている。こういった民族性の違いを日系企業は会社に取り込めていないという感覚を持つ中国人が多い。日系企業は、会社のトップを日本人で固めて中国人はコマ・兵隊として雇用しがち。「日本人の言うことを聞いていればいい、言われたことをやればいい」という日本的な昔ながらのやり方をしていると、優秀な人材を獲得することもできないし成長することも難しい。中国語では、人材=「人才」と書く。日系企業は、人を育てていくという意味でその素材をみているという考えだと思うが、中国人は「自分が認められ自己実現していく。自分が成長していくのは、自分の責任でもって大きくなっていく」という考え。育ててもらうというよりは、自分が強くなるという考えなのでスタンスが違う。

・日本企業は、中国の文化や慣習を受け入れるべきか?反日デモの時に、ほとんどの日本企業・日本料理店が看板を下げたなかで、日本人としての看板を上げ続けた店は、嵐の過ぎたあとすぐに復活し、夜がメインなのにもかかわらず昼間から行列ができていた。嫌がらせも受けたらしいが、そこの店主は、中国で生きていくことを覚悟しながら「日本」の看板を下げることはできないというポリシーで営業していた。その店主は、日本の誇りを守りながら中国でビジネスをしていく覚悟をしていたと思う。熾烈な価格競争のなかで、日本が勝てるとしたら品質だと思う。日本的な良さを忘れて、価格競争に陥ったら勝てない。日本人の良さを維持することが大事。中国のマーケットは日本や欧米を追いかけている途中。中国のマーケット自身は、日本的なもの・欧米的なレベルの高いところに進もうとしている。日本はこれに逆行してはいけない。ただし、「日本のスペック=質がいい、だから買って下さい」という押し売り的なビジネスでは、今は難しい。相手が求めているものを「丁度いいもの」として、提供する品質とレベルを先回りして「これが欲しいんですよね?」ということが日本はできると思う。オーバースペックを押し付けるのではなく、求められる水準で提供する柔軟性が求められる、ということを感じている。

・ビジネスにおける品質やサービスについて、中国全体でいうと「モノやサービスを売りたいのなら南方、情報やコネクションを手に入れたいなら北京」と言われている。工場を低コストで操業したいなら、地方の大企業が北京の役人のお墨つきとコネクションを持っていればすべてがうまく回る、それがなければ何をしてもうまくいかないという話になる。逆に南方へいくと、上海あたりはサービス業も進んでいる。Aはあるか?と聞けば、AはないがBはあるという答えが返ってくる。この仕事は3日でできますか?と聞くと、3日ではできないが4日ではできる、と返ってくる。一歩先に進んだレベルのサービスに到達しているのが上海。

<さいごに>
旧正月などを過ごしながら、「今の中国が、日本と違うのか?」と考えることがあります。中国に腰をすえて生活すると、例えば年越しに使う暦が違っても、家族と無事に年を越せる喜びをわかちあう心に違いはなく、中国の風習にしたがって爆竹をならしたり餃子を食べていても、異文化体験というよりむしろ、日本での幼いころのお正月がフラッシュバックしてきます。国籍や民族が違うことで、そんなに違うのか?中国は、切っても切れない隣国です。となりの国には引っ越してくれとも言えないし、我々が引っ越すわけにもいきません。できるだけ良い関係にいる方がお互いが幸せに過ごせると信じています。


> 特別セミナーレポート:ISSグループ 翻訳会社 社員による「北京最新レポート+α情報」Vol.1(「北京の現在の様子」と「翻訳市場の動向」について)





| イベントアルバム | 14:05 |

CATEGORIES

RECOMMEND BOOKS


SELECTED ENTRIES

CALENDAR
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

リンク

モバイル
qrcode