英語翻訳者養成コースをご担当いただいている翻訳者の佐藤エミリー先生の講師インタビューをお届けします。
・どのようなステップを経てプロの翻訳者になりましたか。
母方が日系アメリカ人で、世界中を旅行していた祖父母から各国のおみやげをもらったり話を聞いたりするなど、国際的な環境で育ちました。しかし、元々バイリンガルだったわけではありません。英語ネイティブの母は、赤ん坊の私に向かって英語と日本語を交ぜて話しかけていたのですが、私がなかなか言葉を発しなかったため、混乱しているからにちがいないと日本語だけに切り替えたからです。「英語が仕事になる!」と最初に知ったのは、アポロ11号月面着陸時の交信の同時通訳を聞いた小学生の時です。それから通信教育を受けたり、ペーパーバックを読んだりして独学し(母に教わると「こんなこともできないの!」、「わかってるってば!」となるため)、高3で英検1級を取得しました。最初めざしていたのは通訳者でしたが、1980年代半ばにパソコンをローンで購入(当時は一式100万円!)。それまで手書きだった英日翻訳と、タイプライターを使っていた日英翻訳を効率的に行えるようになったと判断し、勤めを辞めてフリーとなりました。子どもが生まれてからは、在宅での翻訳がメインとなり、あっという間に四半世紀が過ぎました。
・プロの翻訳者になるための資質は何だと思われますか。
「歩く・走る・飛ぶ」などがスポーツマンの基本であるように、「読む・書く・聞く・話す」英語力は、翻訳者にとっての基本です。TOEICで高得点を取るのは必要条件であって、十分条件ではありません。
翻訳者に向いていると思われるのは…
・とにかく文字を読むのが好きな人
・硬い内容の長い本を読み通すことができる人
・言葉にこだわる「職人」的な人
・とことん調べるのが好きな人(昔はわからない専門用語ひとつを調べるのにも、辞書を購入しなければなりませんでしたが、今はネットを駆使できます)
・毎日、コンスタントにこつこつと仕事ができる人(1日何ページ訳すとノルマを決めて、それを少しでも超えると幸福感を味わえる人)
・早く仕事ができる人(今は、短期・大量の仕事が増えており、通訳並みのスピードで訳すのが必要な場合もあります)
・翻訳とは裏方の仕事であることに耐えられる人
・PC等の技術に強い人、あるいは強い人が身近にいる人
・得意分野・専門分野をもっている人、しかし突然その分野の仕事が激減することもあるので、幅広い知識を持っていて、柔軟な対応もできる人。
<関連情報>
佐藤エミリー先生の著書:『プロが教える技術翻訳のスキル』