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講師からの応援メッセージ:第5回 包紅征先生(中国語通訳者養成コース)

講師からの応援メッセージ第5回は、中国語通訳者養成コース包紅征講師からです。


通訳の分野として法廷通訳があります。法廷通訳では、通訳者は審理に影響を与えないようにあくまでも黒子的立場で通訳に徹することが大切です。しかし、包先生が担当したある案件では、日本語と中国語の成り立ちの違いから通訳者が黒子以上の役割を求められることがありました。以下の事例が、通訳者を目指される皆さんにとって、通訳者に求められる役割とは何かを考えるひとつの契機になると幸いです。


否認事件の法廷審理だった。

被告人が一貫して否認したため審理は長引いた。関係者など次々と証人として法廷に呼ばれ、証言を求められた。
審理を重ねるごとに検察官と被告人の攻防戦は繰り広げられている。公判検事はパフォーマンスが実にうまい。弁護人の質問や被告人の受け答えを聞いている間、肝心なところになると必ず「またそんなくだらないこと」と言わんばかりに大袈裟にため息をついたり、皮肉たっぷりに薄笑いを浮かべたりして、徹底的に相手に揺さぶりをかける。
一方、一見真面目そうな被告人だが、事件に関する供述は少し腑に落ちないところも確かにある。
とはいえ、被告人が真犯人かどうかを追究することは私の仕事ではない。詮索は一切不要なものである。あくまでも中立の立場で、誠実な通訳に徹底することだ。

ところが、興味深いことに中国と日本の言語習慣や文化背景の違いは、時には法廷で浮き彫りされる。
ある時、日本人の証人がこんなことを証言した。
「イトコの所有物です。」 
実にわかりやすい文章ではないか。
しかし、これが中国語に訳せないのだ。これを正確に訳出するには少し大袈裟かもしれないけれど、簡単な家系図がほしいわけである。
イトコはイトコでも、中国の場合、父方と母方のどっちの血縁関係か、イトコその当人は男か女か、証人より年上か年下か、全部明らかにしないと訳出不能なのである。従って、ここで通訳を一時中断して証人に事情を説明し詳細を尋ねる段取りになる。
逆の場合、中国人が「是我表弟」と言ったらどうだろうか。
たったの四文字でも情報はぎっしり詰め込まれている。これを正確に訳すならば、「私の母親の兄弟か姉妹の息子で、私より年下のイトコである」というところだろうか。

こんな調子で延々と訳していると事情のわからない裁判官その他の関係者一同はたちまち不信と不安の渦に陥ってしまうだろう。やはりその背景をある程度前置きとして説明しなければならない。

黒子であるべき通訳者が自分の言葉を語りはじめる瞬間である。
審理の流れをかき乱すことのないように慎重に運ぶことが必要だ。通訳人は法廷の主役に回ってはいけない。いるのかいないのか気付かれないように、ひっそりとしていたいものだ。「あれ?そう言えばあの時通訳がいたっけ?」という風に思い出してくれる程度で十分である。



| 応援メッセージ | 15:56 |

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