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授業体験レポート:2011秋【中国語編】第6回 「中国語における強制的観察」

ISSでは実際にどのような授業が行われているのでしょうか?2011年[秋期]10月レギュラーコースの授業の模様をレポートします。今学期の終わりまで、どうぞお付き合いください!今回は、中国語コースのNさんのレポートをお届けします。

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この回の授業は王先生の面目躍如、これまでの授業の中でも白眉とも言える回でした。先生の説明を一部のみですが、できる限り再現してみます(注:わかりやすくするために、一部違う回での説明に使われた例文も紹介しています)。


ある言語で文をつくろうとしたときに、最低限何が決定されている必要があるのでしょうか?


母語話者にとっては意識されにくいことですが、たとえば英語の場合で考えてみると、それは「数」となります。なぜなら、不可算名詞を除いて、英語の名詞には、単数・複数の区別があるため、(仮定としてでも)単複のどちらかに定めないと、文がつくれないことになるからです。日本語では、基本的に名詞の単複の区別は重要ではないため、数について話者が未決定だったり、曖昧なままだったりしてもそのまま流して文をつくることができます。


逆に日本語の場合には、語る対象との関係性や距離感がわからないと実は意味内容を正しく伝えるナチュラルな文がつくれません(関係性が表現として端的に現れているのが「敬語」ですが、敬語だけがすべてではありません)。


例:
文章を磨くコツは、一に推敲、二に推敲、三四がなくて五に推敲だと昔、先輩に教わったことがあります。改めて御礼を申し上げたいと思います。


これが「(おそらく大勢を前にした)スピーチ的な何かである(少なくとも友達との間で1対1で交わされるフランクな会話ではない)」ことが日本語ネイティブには自然にわかりますし、「改めて御礼を申し上げたいと思います」の「御礼」の対象が誰であるかということも日本語ネイティブにとっては自明です。が、この文を外国語に翻訳する場合には、日本語では自明であるとして省略されている部分を補うことが必要となってきます。


同様に、中国語でもあらかじめ決定しておくべきことがあり、それは英語や日本語の場合とは異なっています。中国語の場合、必須となるのは名詞の分類・類別(カテゴリ)です。なぜなら、量詞や動詞も名詞によって変える必要があるからです。動詞なら「する」「つくる」、量詞なら「1個」「ひとつ」など、さまざまな名詞に対して比較的同じものが使いまわせる日本語とは大きく違うところです。


外来語も例外ではなく、中国語の中に入ってきたとたん、なんらかのカテゴリに分類される必要があります。例えば、中国語で「ビール」は「啤酒」(=「酒」の一種に分類)、「おむつ」は「尿布」(=「布」の一種に分類)ですが、では「ノンアルコールビール」「紙おむつ」という新語が出てきたときには中国語でどう表現するのでしょうか?


「酒」「布」という分類に対して、「ノンアルコール」「紙」というその分類自体を破壊することばをそのまま前につけると、一語の中で矛盾を生むことになります。そのため、「ノンアルコールビール」は「无醇(脱醇) 啤酒」、「紙おむつ」は「尿片」(=「布」自体を使わない)というふうに若干工夫が必要とされることになります。


こういった言語特有の「重要とされるポイント」「視点」の違いについて、王先生はロマン・ヤコブソンの「強制的観察」(=事象のある側面に人の目をいやおうなく向けさせる言語の働き)を用いて説明されていました。おもしろいですね。


王先生の授業を受けていると、中国語だけではなく、日本語特有の見方や言語学についても勉強がしたくなってきます。まずヤコブソンの本を図書館で予約してみました。
 

 

> 授業体験レポート:2011秋【中国語編】第7回 中国語新聞を活用!

 

| 授業体験レポート | 09:35 |

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