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ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第46回:和田泰治先生(英語通訳)

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先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー

プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、和田泰治先生ご紹介の日英語表現辞典」(最所フミ編著, ちくま学芸文庫, 2004年)です

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本書は最所フミ氏が執筆された「日本語にならない英語」と「英語にならない日本語」を合冊して改定出版されたものである。
書籍のタイトルは「辞典」となっているが決して辞書ではない。見出し語がアルファベット順になっているので確かに体裁は辞典のようになっているし、必要に応じて特定の言葉を調べることもできるが、この本はまずは最初から最後までしっかり通して読破すべきだと思う。拾い読みではあまりにももったいないのである。筆者が前書きで述べている通り、英語と日本語の持つ固有の思考法と論理が様々な角度の分析と豊富な例文で解説されている。英語、日本語のネイティブスピーカーの思考法、風俗、習慣、歴史的背景など多岐にわたる思索は辞典というよりもエッセーに近いものだ。私は、通訳者にとって最も重要な語学的能力は、恐らくそれぞれの言語の「語感」を自在に感じ取ることだと思う。表層的な言葉は真実の影であり、その言葉からスピーカーの思考へと分け入り、思考、論理という抽象化されたイメージから、同じ「語感」を持つ別の言語で説明をし直すことが通訳というプロセスだと考えている。だが、その「語感」を養うことは筆舌に尽くし難い修養を要する。日本語、英語の両言語に関するすべてを知識、感覚として会得しなければならない。本書は、先人の助けを借りて、少しでもその理想に近づこうとする者にとっての一条の光となるものだ。

 

全体は英和の部と和英の部に分かれている。それぞれの言語毎に多くの言葉の持つ意味、思考、背景が解説され、訳と例文で構成されている。英和の部を一読すると、もちろんこれまで全く知らなかった言葉も数多くあるのだが、それ以上に、これまで自分では十分に意味が分かっていたはずだと考えていた言葉、少なくともある程度は正しくその意味を理解して使っていたと思っていた言葉が見出し語として多数並んでいる。そして、そのほとんどに関して何らかの新たな知見を学ぶことができる。あまりにも自分が勉強不足で言葉を知らなかったと落胆することも確かではあるが、あらたな思索のヒントを得た喜びのほうが大きいだろう。和英の部も構成は同じだが、こちらは母国語の日本語を英語で説明するための解説である。英和の部と同様、今度は元の日本語に関する日本人の思考法や論理的な発想、歴史的、社会的背景から、それを適切に説明する英単語や英文が示されている。順番に読んでゆくのだが、まず見出し語を見て、自分自身で英語の表現を頭に思い浮かべてから解説を読むと、筆者の発想との比較ができて非常に勉強になる。
英和の部、和英の部を合わせれば相当な数の言葉に触れることになるから、一読しただけでその全てを吸収することは出来ないが、大切なのは、英語、日本語それぞれの違いを認識しつつ、どのような思考法によって別の言語で説明するべきかいうことを偉大なる先人の発想に学び、感覚を磨くことである。編者の最所フミ氏は1990年に逝去された。それから既に30年が経ち、英語も日本語も新しい言葉や用法が生まれている。本書が出版された当時は新しい言葉として、未だそれほど普及していなかったものの現在ではごく普通に使われている言葉、あるいは当時とは語感が変わった言葉もあろう。職業として言葉に携わっている者の端くれとして、今後は我々が言語の背景にある様々な思考や論理、文化そして記憶や情感すら咀嚼し、研ぎ澄まされた感性を持って言葉に対峙してゆく義務がある。そう襟を正す覚悟を問う名著でもある。

 

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和田 泰治(わだ やすじ)
明治大学文学部卒業後、旅行会社、マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。
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