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ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第43回:石原香里先生(英語通訳)

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先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー

プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、石原香里先生ご紹介の「Prognosis: A Memoir of My Brain」(Sarah Vallance著, 2019年)です

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中学時代を過ごしたシドニーの現地校で、私に最初に話しかけてくれた女の子が2人いたのですが、その1人がこの本の著者、セーラ・ヴァレンス(あえて原語に近い表記にします)でした。州立音楽院付属のハイスクールでヴァイオリン専攻だったにもかかわらず「ジャーナリストになりたい」と言っていたセーラ。ピアノ専攻だった私は伴奏やレッスンを通じて彼女と仲良くなり、この本に登場する彼女の両親とも面識がありました。社会人になってからのことは州政府のキャリア官僚になり一時香港に住んでいた、というくらいしか知らなかったのですが、フェイスブックで「今度本を出す」というではありませんか!しかも、再起不能といわれた脳損傷からの回復の記録と聞いて2度びっくりしてしまいました。一体何があったというのでしょう!?

 

読んでみると、内容もまた衝撃的なものでした。脳損傷の原因になったのは20代の時の落馬事故で頭を強く打ったこと。事故後、冷蔵庫からランプが、冷凍庫からトースターが出てきても、本人は全く身に覚えがありません。博士論文の執筆中だったのに、読み書きも不自由になり、自分の書いたものが理解できず、仕事も解雇されてしまいます。「ホワイトカラーの仕事は無理」との宣告を受け、リハビリ施設で単純作業をしたりするのですが、そこから彼女は自らに鞭打って後遺症と戦いながら、毎日、記事の書き取りをしたり、音読を繰り返したりして言葉を再習得していくのです。その原動力になったのは厳格だった亡き父親の存在であり、最も辛い時期に彼女に寄り添ってくれたのは元保護犬たちでした。(犬たちとの「会話」が絶妙!)脳の奇跡的な回復と社会復帰がストーリーのタテ糸だとするならば、ヨコ糸となっているのが親子の愛憎、介護や尊厳死、恋愛(彼女はゲイです)、老いに対する不安などの普遍的あるいは今日的なテーマなので、一定以上の年齢の(?)読者なら大いに共感できると思います。

 

たとえ側にいても、人はなかなか心の奥底にあることを打ち明けたりはしないもの。シャイな彼女の赤裸々な告白を意外に思うと同時に、セーラにとって書くことが何よりの癒しになったのだろうと感じました。

 

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石原 香里(いしはら かおり)
桐朋学園大学音楽学部ピアノ科卒業。ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院、ロンドンRoyal College of Music Postgraduate Courseに留学、修士課程修了。帰国後、音楽活動の傍ら通訳スクールで学び、米同時多発テロを契機に、NHKの報道・音楽番組の映像翻訳、インタビュー通訳に携わるようになる。現在はCNNj をはじめ民放各局でも首脳会談、記者会見等の同時通訳者として稼働中。

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