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中国マンガを翻訳してみて考えること【第1回】仕事につながった経緯

 

 

中国語翻訳者の串山と申します。ISSには十数年前に翻訳者養成コースの基礎科一番下のクラスから本科2まで通っていました。このたび中国マンガの翻訳について、この場をお借りして書かせていただくことになりました。何か皆様のご参考になる部分があれば幸いです。

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 フリーランスで翻訳の仕事を始めて15年ほどになりますが、これまでの実績はほとんどが実務翻訳で、とくに専門分野といえるものはなく、企業広報、議事録、プレゼン資料、論文、企業家の経営哲学など、来るものは拒まずさまざまな内容を経験してきました。一時期、翻訳会社の中で働いていたこともありますが、その会社が廃業し、再びフリーの翻訳者として取引先の開拓に励んでいた3年ほど前、あるサイトで「中国語翻訳者募集(マンガ)」という求人を見つけたのがマンガ翻訳の仕事をするきっかけでした。

 

 「中国のマンガを日本に輸入する!」という発想にとても魅力を感じ、すぐにトライアルに応募しました。なんとか6人の翻訳者に選ばれ、6つの連載予定作品の中から希望する「設定が特殊な料理マンガ」を担当できることに決まり、最初の10話分を約3カ月かけて納品。連載開始が予定より1カ月遅れるとの連絡にもそれほど不安は感じず、当初は連載後に反響を見てからといわれていた追加分の発注もあり、しかし連載開始はさらに延びるとの連絡に多少落胆しつつも、追加10話の翻訳をややタイトな分納スケジュールで進め、ついに連載開始日が確定したとの連絡があり、そしてワクワク、ソワソワとその予定日の1週間ほど前になり、なぜか突然に「連載中止」との耳を疑う連絡が……。えっ、まさかの権利元との契約トラブル?! 信じられない……。信じたくない……。動揺し、混乱した私は、納品した訳文(買い切り)を買い戻して、別の出版社に持ち込んで……などと、電話口で担当編集者さんに無茶な訴えをするも、それは現実的ではありませんと諭される。しかし、あきらめきれない。

 

 中国マンガの翻訳には未来があると何の根拠もなく確信し、かなり力を入れていた。2話完結の話ごとにテーマとなる料理があり、見るからに衛生的に問題のありそうな奇抜な創作料理以外は、なるべく専門の中華料理店で実際に食べてみるようにしていたし、ウイグル料理については都内の専門店へ行き、オーナーに取材まがいのこともしていた……。

 

 それが翻訳をする上で実際に意味のある行為だったかは分かりませんが、それだけ気合いが入っていたということです。「また新たに中国の作品を展開できれば、串山さんに依頼を……」という社交辞令かもしれない言葉を信じるとしても、日本で通用しそうな中国マンガもそうそうないだろうと思っていました。そこで、待っているだけではダメだ! 自分で探そう! と思い立ち、騰訊動漫というサイトでマンガ漁りを始めました。

 

 中国のマンガはWebが中心で紙にすることはあまり考えていないのか、フルカラーが基本です。ただ、閲覧数が数十億(!)を超えるような人気作品でも、カラフルすぎて目が疲れるものはちょっと……パソコン画面で立て続けに何作品も見ていると目がチカチカしてきます(40代男性談)。気がつくと、私は「目にやさしい作品(?)」を探していました。


 そうして行き着いたのが『如夢令(じょぼうれい)』という作品です。色彩のバランスが絶妙で、目が疲れない! そして内容も、宮廷ドラマ+武侠という好きなジャンル。さっそく編集者さんに提案してみると、けっこうな好感触。各方面への確認を経て、権利元との契約を目指すこととなり、今回は確実に契約を結んでから翻訳を始めることにしましょう、という話に。そこからは順調に話が進み……というわけでもありませんが、私には見えていない紆余曲折を経て何とか契約、原稿入手、そして翻訳、編集、配信、単行本の出版へとこぎ着けることができました(私がやったのは「翻訳」の部分だけ)。

 

 現在、LINEマンガ内のジーンLINEというレーベルで連載しているのですが、翻訳物に限らず、日本人作家さんの作品でもけっこう入れ替わりがあり、連載を維持するというのはやはり大変なことのようです。魅力ある原作というのは間違いないと思っているのですが、連載が続く限り、その魅力を損なわないような翻訳を心がけていきたいと思っています。

 

* * *

 

 以上、自己紹介も兼ねてマンガ翻訳の仕事につながった経緯をざっくりと書きましたが、次回は、どのようなことを考えて実際の翻訳をしているのかという技術的な面を、『如夢令』和訳の具体例を交えて書いていければと考えています。当該作品の中国語版、日本語版は下記サイトで配信されています。ご参考まで。

 

中国語版:《如梦令》 腾讯动漫
https://ac.qq.com/Comic/comicInfo/id/550368


日本語版:『如夢令-偽りの花嫁-』 LINEマンガ(ジーンLINE)
https://manga.line.me/product/periodic?id=0000czbu

 

 

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串山 大(くしやま・だい)
ISSの中国語翻訳者養成コースで翻訳の基礎を学ぶ。フリーランスの翻訳者、チェッカーとして10年ほど活動した後、中国語専門の翻訳会社にて品質管理を担当。2017年に再びフリーとなり、以後、実務翻訳だけでなく、角川まんが科学シリーズ『どっちが強い!?』など漫画作品の翻訳も手がける。

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