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英語翻訳コース特別セミナーレポート「AI時代の今、翻訳者をめざす方に知っておいてほしいこと」

 

9月6日(金)、東京校にて、英語翻訳者養成コース特別セミナー「AI時代の今、翻訳者をめざす方に知っておいてほしいこと」を開催いたしました。

 

講師は西山耕司先生。主に日英翻訳を専門に、長年にわたって社内通訳・翻訳を経験され、現在は機械翻訳業界の第一線で活躍されています。当校では上級者向けのクラス、「総合翻訳科・本科」と「ビジネス英訳科・本科」において英訳の指導をご担当されています。


今回のセミナーでは、機械翻訳のお話を中心に、これからの時代にプロ翻訳者に求められるスキルとマインドについてお話しいただきました。

 

●機械翻訳の現状
AI技術の進化により、機械翻訳の精度は飛躍的に向上しています。一番の特徴は、「機械がデータを蓄積して学習していく」ということです。今や開発者にもどんな訳文が出てくるか予想がつかないほど、AIの進化が進んでいるようです。

 

どれくらいの訳出精度なのか、医薬、法務、金融、会社規約、ビジネスメール、広告コピーなど、いくつか実際の対訳例をご紹介いただきました。口語調のビジネスメールや広告コピーは苦手なようですが、かためのビジネス文書に関してはかなりの精度です。

 

その理由はAIを活用した自動翻訳の仕組みにあります。機械翻訳では、用語集や過去の対訳データを蓄積し、使用頻度の高い対訳を瞬時に検索、参照することで訳出を行っています。専門分野別データベースを構成することも可能です。同じ単語でも専門分野ごとに適切な訳語が異なりますが、機械翻訳にかける際に、「金融」、「特許」など分野を選択すれば、より精度の高い対訳を提示してくれます。つまり、機械翻訳は専門用語や定訳、定番の言い回しに強いと言えます。

 

訳出のもとになる参照データによって結果が変わってくるので、企業ごとにカスタマイズもできます。社内文書の過去の対訳データを取り込めば、オリジナルのデータベースが構成され、企業がよく使う表現をAIが学習し、使えば使うほど、より精度の高い適切な訳出ができるようになります
さらに、短い文書であれば数秒で、長い文書でも数分でできてしまうという驚異のスピードを誇ります。機械翻訳の最大のメリットはこの圧倒的なスピードにあります

 

それだけ聞くと、「やはり、人間の翻訳者は勝ち目がないのでは? AIに翻訳の仕事を奪われてしまうのでは?」と不安になると思いますが、実は全くそんなことはありません。

 

●機械翻訳の弱み
機械翻訳は、ただひたすら、1センテンスごとに置き換えていく作業の積み重ねになります。なので、改行などで一文が割れてしまうと、おかしな訳になってしまうエラーが生じます。また、用語集や過去の対訳データからデータをひっぱってきて機械的に置き換えてしまうので、文脈にそぐ合わない訳語をあてはめてしまうことも多々あります。
なので、狙い通りの訳出をさせるためには、まず原文をチェックし、機械翻訳にかけやすい状態に修正する必要があります。場合によっては、原文のリライトも必要になります。これを「プリエディット」と言います。また、機械翻訳された訳文をチェックし、誤訳の修正や読みやすいように編集をかける「ポストエディット」も必須です。最後には必ず、人間の目で原文と訳文を照らし合わせてチェックをする必要があります。

 

ただ原文をコピペするだけで簡単に機械翻訳できると誤解されている方が多いと思いますが、実は実用レベルの精度の高い機械翻訳には、人間の手による適切な運用管理が不可欠なのです。どんなに性能の高いAIでも、でたらめに対訳データを入れてしまうと、精度の低い訳出になってしまいます。入れていいデータの判断や、適切な操作には正しい知識が求められます。

 

そして、当然のことですが、機械には「意思」がありません。「前後の文脈を見て文章の意図を汲む」と言った高度な読解や、「読み手に響くメッセージを打ち出す」といった表現の工夫はできません。そのため、いわゆる「意訳」ができないので、広告コピーのようなマーケティング翻訳などは苦手です。「意思を持って相手に刺さるような文章を書けるのは人間だけ」という西山先生の言葉が印象的でした。

 

今のところ、クリエイティヴライティング、またはそれに準じる翻訳作業に関しては、まだまだ人間がやらないといけないというのが現状のようです。

 

 

●ローエンド案件とハイエンド案件
今後は、以下のような住み分けが進んでいくだろうと予想されています。

 

ローエンド案件(読むための翻訳→機械翻訳で完結可)
ハイエンド案件(書くための翻訳→機械翻訳+ポストエディットまたはフル人力で刺さる文章に)

 

ローエンド案件とは訳出の精度が高くなくてもよい、というような案件です。たとえば、英語ができる研究者が、英語の参考資料を読む時間を短縮するために、ざっくり日本語訳してほしいときなどです。もし誤訳があっても、専門知識があるので何のことか見当がつきますし、気になるところだけ原文を確認すれば済みます。

 

対照的に、ハイエンド案件の場合は、訳文だけで読者に正確に伝える、精度の高さが求められる案件です。たとえば書類審査を通すために説得力を持たせたい文書や、読み手に購買意欲をわかせるための広告文書などです。このような案件は今後もずっと人間の力が必要とされます。入念なポストエディットを行うか、または最初から機械翻訳を使わずに人力で翻訳を行って、精度の高い訳文に仕上げます。

 

●今後、翻訳者に求められるスキル
今後は、翻訳者にハイエンド案件に対応できる実力が求められるのは確実です。
つまり、質の高い翻訳スキルまたは質の高いポストエディットのスキルです。できれば、両方のスキルを持ち合わせて、案件によって柔軟に対応できることが理想です。

 

海外では機械翻訳の台頭にともない、ポストエディターの需要が爆発的に高まっているので、日本でもその動きがくるだろうと予想されています。
先に述べたとおり、機械翻訳を正しく使いこなすためには、機械翻訳の仕組みを理解し、かつソース言語とターゲット言語に精通した人間が必要です。
その特性から、今まで英語ネイティブが行っていた英訳チェックも、バイリンガルの日本人が行うように変わってきています。機械翻訳によって非英語ネイティブにも英訳・英訳チェックのチャンスが拡大しているのです。

 

西山先生は、「これからはAIを育てる人材が求められる」とお話しされていましたが、良質な対訳を見極められる、機械翻訳を自在に使いこなせるだけの高度なスキルを持った方は、今後も仕事の需要は高いでしょう。

 

プロ翻訳者の中には機械翻訳を上手く使いこなして仕事をしている方も多いようです。機械翻訳は翻訳者にとってのライバルではなく、実は強力なサポートツールなのです。
今後、翻訳者には機械翻訳と仲良く共存していく姿勢が求められます。

 

また、翻訳の仕事だけで考えず、機械翻訳が浸透することで英語ネイティブと非英語ネイティブのハンディキャップがなくなり、世界中の人が母国語で好きなことを掘り下げられる世の中になる、その動きに自分が勉強したことを活かして貢献できる、そうした広い視野で考えてほしいというお話もありました。
時代の変化に対応できる柔軟性やポジティブなマインドもとても大切です。

 

●おわりに
機械翻訳の現状と今後翻訳者に求められるスキル、学習アドバイスについて、実体験を盛り込んでお話しいただきました。
「一番大切なことは、時代の変化を受け入れ、好きなことをやり抜くこと」という力強いメッセージに励まされた方も多いのではないのでしょうか。また、「機械翻訳がどれだけ浸透しても、英語の勉強は必ず役に立つ。怖がっている暇があったら、勉強して実力を磨くこと」という叱咤激励もありました。
これから翻訳者をめざす皆さまには、先生のメッセージを思い出して、ぜひ勉強を続けていただければと思います。
お忙しい中、特別セミナーにご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。
今回のお話が、皆さまの参考になりましたら幸いです。

 

 

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