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『ザ・通訳道』:柴原早苗先生 (3)


柴原先生の連載最終回では、これまでに届いたご質問より3つに限定し、先生にお答えいただきます。

<ご質問1>
サマーコース2008「無理なく学べるはじめての英語通訳訓練」を東京校で受講しました。先生の授業に参加して、通訳の奥深さと、厳しさ、また、そこから生まれる楽しさに感動しました。先生に質問があります。私は私立学校に勤務し、外国人の通訳をする機会が多少あります。そのときに困るのが、ディベートです。あちらこちらから一気に声が上がり、通常一人で対応するため、こちらのスピードが追いつかない現状があります。ヒートアップしたときには特に大変です。このような現場ではどのように対処していけばよいか、ヒントをいただけますと嬉しく思います。


 こんにちは。「はじめての通訳訓練」を受講していただき、ありがとうございました。おっしゃる通り、通訳は内容面でも多岐に渡りますし、通訳者がそれまで生きてきた人生で培った知識を総動員する、そんな職業だと思います。自分がいかに物事を知らないかを痛感すると同時に、新しい知識を習得する楽しさもあります。いわば、仕事を通じてたくさんのことを学べる、まさに稀有な職業だと私は思っています。
 
さて、ディベート現場で通訳をしていらっしゃるとのこと。ディベートという、参加者自体が非常に緊張した場面ですので、同時にたくさんの意見が上がったり、ヒートアップしたりというのは大いにありうる状況だと思います。私自身もかつて英語の私塾に通っていたことがあり、そこでディベートを習っていましたので、よくわかります。ただ、参加者としてディベートを行うのと、それを通訳するのとでは大いに異なりますよね。
 
まず、ディベート現場での通訳ですが、対応方法として以下の3つが考えられます。
 
(1)参加者やジャッジなどに対し、「話すときは同時に複数が話すのではなく、一人ずつ話してください」とあらかじめ要請しておく。

 これは、通訳という性質上、同じ部屋で複数の人間が同時に声を出していれば物理的に通訳不能になってしまうからです。通訳者にとっては、本来であれば、防音施設のしっかりした部屋で、一人ずつ話しているものをヘッドホンから聴き、マイクを通じて訳していくことが一番作業としてはやりやすいと思います。なぜならば、通訳という作業自体、大変集中力を要するものであり、集中して訳す以上、なるべく周囲の雑音(たとえば部屋の外から入ってくるヘリコプターの音や、くしゃみの音なども含みます)を抜きにした状態で訳すのがベストだからです。よって、こうした状況が難しいのであれば、せめて通訳者が訳しやすいよう、先方に条件をつけていただくということが、よりよいアウトプットに結びつくと思います。ただし、その際は「通訳」という作業がいかに集中力を要するか、また、正確な訳を生み出すためにもそうした適切な労働環境が必要であるということを、まずは周囲に理解していただく必要があるでしょう。いわば、通訳業に対する認識を全員に高めていただくことがまずは大切かと思います。

(2)通訳者の人数を増やしてもらう

 通訳すべき対象(ディベート参加者やジャッジ)などが複数にわたる場合、本来であれば複数の通訳者を配置することで、通訳者の負担はかなり減ると思います。たとえば肯定側の通訳者はAさん、否定側の通訳者はBさん、ジャッジの通訳者はCさんという具合にすることで、通訳者一人当たりの負担を減らせるのです。または、役割分担せず、複数の通訳者の間で訳出時間を10分ずつ区切るなどすることで、集中力を維持することができます。
 実際、私が携わる通訳現場でも、通訳時間が長時間にわたったり、たくさんのスピーカーがいたりする場合は、複数の通訳者で対応しています。通訳者が一人で対応してしまってアウトプットの質が低下してしまえば、コミュニケーションとして成立しなくなってしまうからです。そうした事態を避けるためにも、訳のクオリティーを維持する上でも、複数の通訳者がいるということは非常に大切になってきます。

(3)通訳者の通訳時間を適宜入れてもらう

 上記の2案が難しい場合、最終手段として、通訳者が内容の概略をまとめて通訳できる時間を時々盛り込んでいただくのはいかがでしょうか?つまり、一字一句を同時通訳あるいは逐次通訳で訳すのではなく、数分間の発言があったら、そこで止めていただき、通訳者自身が解釈した「全体の流れ」を「概略として述べる」という方法です。この場合、通訳者がやるべき作業としては、すべてを通訳するのではなく、「全体の中で話がどのような方向へ向かっているのか」、「スピーカーが一番言いたいことは何なのか」を把握することになります。通訳する際も、かなりの編集力を要することになりますが、全体的な流れを把握しながらになりますので、通訳者自身の負担もかなり軽減されると思います。

 いかがでしたか?通訳者というのは黒子ではあるものの、その一方でコミュニケーションの懸け橋となる、重要な役割を担っています。通訳者自身がより良い品質の通訳をしていくためにも、周囲に対して通訳業そのものの啓蒙活動も必要になってくるでしょう。通訳者に対する理解が深まることで、通訳者自身も作業がしやすくなりますので、ぜひがんばって環境改善を行ってみてくださいね。


<ご質問2>
柴原先生こんにちは。いつも楽しくブログを拝見しております。現在基礎科1クラスを受講しておりまして、今回ぜひお話を伺いたいと思いメールをお送りしました。
通訳訓練の受講は2学期目なのですが、仕事が忙しく週に2,3回は夜11時過ぎまで、時には終電まで残業しなければなりません。家に帰ったら勉強する気力が起きないため、土・日に集中して勉強しているのですが、それではどうしても大量の単語を覚えきれませんし、予習・復習も不十分になってしまいます。できるだけ教材に触れる時間を作ろうと、通勤途中に単語帳を広げたり、ポータブルプレーヤーで教材の音声を聞いたりしているのですが、あまり成果が出ていない気がします。こんなやり方でいいのでしょうか。先生はお仕事が忙しいとき、時間をどのように使っていらっしゃるかお教えいただけないでしょうか。


 ご質問ありがとうございます。お仕事が多忙な中、ISSでの受講もよく頑張っていらっしゃると思います。2学期目まで続けるということだけでも大変なのですから、まずは自分の努力は大いに認め、自分の頑張りを褒めてあげましょう。

 さて、勉強のタイミングですが、これはその人その人が置かれている状況によって、大いに変わってきますよね。ご自身の場合、平日の夜は疲労感で勉強する気力がわかないとのことですので、以下の点で工夫をしてみてはいかがでしょうか?

(1)早朝時間の活用

 人間の体は夜に眠り、朝起きるという構造になっています。ですので、無理に夜に勉強しようとせず、疲れているのであればなにはともあれ睡眠をとるようにしましょう。ただし、ほんの10分でも良いので、その分、朝早く起きるようにしてみてください。ぐっすり眠った分、わずかでも早く起きることで、早朝の時間を自分でコントロールできるようになります。たとえ10分でも、「疲れた状態の夜の10分間」と、「多少眠いけれどがんばって起きた朝の10分間」では質が違います。
 その10分間で、単語テストの予習をする、あるいは学校の教材の復習をするなど、うまく活用してみてください。なお、声を出すと体全体が目覚めますので、単語暗記や教材復習においてもぜひ声を出しながら勉強をしているといいでしょう。

(2)興味のある教材の活用

 一日忙しい仕事を終えた時というのは、電車の中で本も新聞も読みたくない、ただぼーっとしていたい、という心境になりますよね。私も通訳業務でぐったりしたときなど、まさにそんな心境です。車内で読もうと思ってせっかく持参した本も、カバンをかえって重くしているだけ。そんなことはしょっちゅうです。けれどもそれでは時間がもったいない、というのであれば、ぜひポッドキャストを活用してみてください。
 私はBBCのポッドキャストでいくつかお気に入りの番組を登録しているのですが、その内容も硬派のドキュメンタリー番組から、柔らかいコメディ、短時間の子ども向けニュースなど、いろいろと入れています。頭が元気なときは長いドキュメンタリーを集中して聞いていますが、長時間聞くのは体力的に大変というときは、数分間の子どもニュースに耳を傾けています。子ども向けですので単語や構文もわかりやすく、内容も多岐にわたるので楽しめます。一方、「体はぐったりしている。何かパッと楽しい話題が欲しい!」というときは、コメディを聞いています。電車の中なのでにやにやしたり笑ったりすると怪しまれますので、自分の表情をクールにするのがむしろ大変なのですが、英語も聴きながら、気分転換もできるので、大いに気に入っている作業です。
 最近はiTunesでオーディオブックも購入できます。コメディに限らず、自分の関心のある分野のものを入手し、疲れているときに聞いてみると、英語力・知識力のアップにつながるでしょう。

(3)目標の明確化
 
 勉強にしてもスポーツにしても、一番大事なのは目標の明確化だと言われています。ですので、たとえば「来学期は絶対に進級する!」「来月の検定試験のスコアをあと○○点アップさせる」といった具体的な目標を考えてみてください。「来学期」「来月」という具体的な期日があるほうが、行動計画も立てやすくなります。
 通訳学校にお金と時間を費やして通学しているのであれば、やはり進級という大きな目標を掲げたほうが、普段の勉強や授業の受け方も、より真剣になると思います。「進級するためには単語テストでどれぐらいとるべきか」「中間・期末試験の復習教材ではどれぐらいの訳を目指せばいいのか」といったことも、より具体的に考えられるようになるでしょう。
 私自身、現場で通訳作業をするようになってからも、自分の英語力維持のために定期的に検定試験を受けるよう心がけています。自分の「今」の英語力が判定されるので、ある意味ではコワイのですが、そのようにして客観的に自分の力を判断することも、英語力アップのために大切だと思っています。ぜひご自身も、いろいろと工夫してみてくださいね。


<ご質問3>
柴原 早苗先生、はじめまして。現在入門科クラスに在籍している者です。
いま勤めている職場には外国人の同僚もおり、仕事では英語を使う機会があるのですが、将来的には通訳や翻訳の業務がある職場で働き、いつかはフリーランスの通訳者になりたいと思っております。
ただ、通訳・翻訳業務がある職場に転職しようと思っても、実務経験を問われ、なかなか応募できるものがありません。
履歴書に書けるような通訳・翻訳の経験はどのようにしたら積むことができるのでしょうか。何かヒントをいただければ嬉しいです。


 ご質問、ありがとうございます。通訳コースの入門科に在籍していらっしゃるとのこと。お仕事をしながら授業の予習復習は大変かと思いますが、ぜひ上のコースをめざしてコツコツと努力を続けてくださいね。

 さて、ご質問は「将来的にフリーの通訳者になりたいけれど、実務経験がない。どのようにして実務経験を積んだ上でデビューすればよいか」ということですよね。では具体的な方法を見てみましょう。

 (1)社内での通訳翻訳業務に携わる

 今の職場は外国人スタッフもいらっしゃるとのこと。社内のほかの部署で英語を使うところはありますか?たとえば翻訳ができる部署、かんたんな通訳作業があるところなど、ぜひ調べてみましょう。そうした部署に異動できるのであれば、これは貴重なチャンスです。上司の方に事情を説明して、人事異動が可能かどうか打診してみてください。せっかくフルタイムの職場にいらっしゃるのですから、まずはそこの中でできる限り経験を積むことが、後にフリーになった時に生きてきます。ですので、現在自分が置かれている場でチャンスがあるかどうか、検討してみましょう。

 (2)ボランティア通訳に携わる

 会社で通訳翻訳作業が全くない、という場合、地元の国際交流協会などに登録してみてはいかがでしょうか?今はどの都道府県や政令指定都市にも国際交流協会があり、ボランティア通訳者・翻訳者を募っています。「平日は仕事が忙しいのでお手伝いできないけれど、休日のイベントなら参加できる」といった具合に自分のスケジュールに合わせてかかわることができます。私自身、通訳者デビューを目指し始めたころから自分が住んでいた市と県の国際交流協会に登録し、さらにその後、隣の市の協会にも登録しました。当時私も会社員でしたので、ボランティア通訳ができたのはもっぱら休日だけでしたが、通訳者になるという大きな夢がありましたので、依頼があった時は本当にうれしかったのを覚えています。完全にボランティアベースで持ち出しになることもありましたが、携わった業務はどれも興味深い内容ばかりで、通訳現場が具体的にどのようなものなのかを知ることもできました。非常に有意義だったと思っています。

(3)通訳・翻訳実績表を作っておく

 たとえ少量の翻訳作業であれ、会議の受付で英語を使ったのであれ、ボランティア通訳であれ、ほんの僅かでも「翻訳」「通訳」の作業を伴うものに携わったのであれば、ぜひ自分の通訳・翻訳実績表に記録しておきましょう。書き方としてはこんな感じになります:

例1:「2008年12月15日 ○○シンポジウム 受付業務。外国人来賓の受付および日本人スタッフとの逐次通訳作業 (英日・日英、5時間)」
 通訳業務であれば、開催日、内容、通訳作業の内容や総時間などを記入します。

例2:「2008年12月16日 ○○部△△課 マーケティング用プレゼンテーション資料翻訳 (日英、2000字)」
 翻訳作業の場合、資料内容、英日か日英か、元の資料の文字数を記しておきます。

 ちなみに私は自分の実績表に通し番号を付けているのですが、通し番号が増えるたびに「よし、次の大台も目指して頑張ろう!」と自らを励ましています。どんなに小さな作業でも、通訳翻訳作業があった時にこまめに記録しておくこと。これが蓄積となり、自分だけの実績表が出来上がっていきます。ぜひ試してみてください。

 アイ・エス・エスではOJTの機会もあります。また、人材派遣に関する説明会なども開催されていますので、業界について知る上でも、ぜひ活用してみてください。


英語通訳コース講師 柴原早苗(しばはらさなえ)

上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。獨協大学、順天堂大学の講師も務める。
 

| 『ザ・通訳道』 | 16:58 |

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