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ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第30回 :星智子先生(英語通訳)

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先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、星智子先生ご紹介の『新装版 日本語の作文技術』(本多勝一著,  講談社, 新装版, 2005年)です。

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皆さんは自分が書く日本語の文章に自信が持てますか?今日は「日本語の文章力を上げたい」と思っている人にお勧めの一冊を紹介します。

 

本書との出会いは大学時代に遡ります。もっとも私が出会ったのは、正確には本書の前身である朝日文庫の『日本語の作文技術』です。著者・本多勝一氏の硬質でわかりやすい文章が好きだったことと、自分でももう少しマシな文章が書けるようになりたいと思っていたこともあって、書店で見かけて迷わず購入した記憶があります。『日本語の作文技術』は1976年に単行本が初版され、文庫版や著者再編集版へと姿を変えながら版を重ねたのち、2005年に『新装版』として本書が刊行されました。まごうかたなきロングセラーですね。初めての購入からずいぶん経ちますが、今も定期的に読み返す大切な一冊です。

 

本書の序文にもあるとおり、著者のいう作文は「読む側にとってわかりやすい文章を書くこと」を到達すべき目標としています。「文章をわかりやすくすること、これは才能というより技術の問題」であり「技術は学習と伝達が可能なもの」との論点に立ち、だれでも学習できるはずの「技術」としての作文について論じています。したがって本書は難しい文法書ではなく、日本語のシンタックスを俯瞰して分析し、どう書けばわかりやすくなるかを検証する、いわば技術書のようなつくりになっています。目次の一部を紹介しましょう。

 

第二章 修飾する側とされる側
第三章 修飾の順序
第四章 句読点のうちかた
第五章 漢字とカナの心理
第六章 助詞の使い方

 

著者は「技術」の最も重要な部分として「修飾の順序」と「句読点のうちかた」を重点的に扱っており、この二つさえ一応のレベルに達すれば文章は格段に良くなると請け合っています。本書で興味深いのは、いくつもの悪文を紹介しながら「わかりにくさ」の原因を究明し解決策を提示している点で、「修飾の順序」では四原則を、「句読点」(とくに読点)では二原則を挙げて丁寧に検証しています。そして実際の作文でこれらの原則を応用するのは難しそう…と絶望しかける読者に対し、つぎのようにエールを送ってくれます。

 

まず自分の書いた文章を読んでみて「おかしいな」と思ったら、そのときだけこうした原則を参考にすればわかるということである。まず原則を頭の中に覚えてそれから作文を考えるのではなくて、作文はどんどん自由に書いて、読み直してみて「おかしいな」と思ったときだけ、なぜおかしいのかを考えるときにこの原則を参考にしていただく、それだけのことである。(本文185P)

 

ところで、日本語と英語という二つの異なる言語と日々格闘している身にとっては、第二章の「修飾する側とされる側」も含蓄に富んでいます。ここでは、わかりにくい文の原因は往々にして「修飾・被修飾」の離れすぎにあるとしており、「わかりにくい悪文の例はよく翻訳にみられる」とギクリとする一文も。その一因は、「英語のように、主語が述語を強力に支配し、その結果補語が述語よりあとに延々とつながる構文を日本文に翻訳するときに、英語のシンタックスを日本語という別のシンタックスの中にそのまま押し込んでしまうこと」にあると論じています。論理的でわかりやすい翻訳文にするには、原文の意味をまず理解してから日本語のシンタックスで文を構築する力が求められることを改めて思わされます。

 

翻訳文なり作文なり、自分の書いた文章が「おかしい」ことに気づくには、日ごろから良質な日本文をたくさん読んで見識眼を鍛えておかなければなりませんね。

 

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星 智子(ほし ともこ)

9歳から16歳までニュージーランドで過ごす。成城大学文芸学部英文学科を卒業後、ホテルや観光業関連の団体に勤務。社会人4年目にして初めてISSの門を叩き、会社勤めのかたわら通訳訓練を開始する。同時通訳科在籍中にOJT制度を利用しながら徐々に仕事を始め、食品会社や化学メーカー等の社内通翻訳を経てフリーランスに。近年は文部科学省やUNESCO関連事業での通翻訳業務に携わる。アイ・エス・エス・インスティテュートでは本科3レベルを担当。

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