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ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第28回 :津村建一郎先生(英語翻訳)

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先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、津村建一郎先生ご紹介の『日本語から考える! 英語の表現』(関山 健治著, 山田 敏弘著、白水社、2011年)です。

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日頃、受講生の皆さんと翻訳(医薬翻訳)の勉強をしていて思うことは、皆さんの日本語の理解や表現がいささか乏しいことです。私たちはNative Japaneseですから「日本語は出来てあたりまえ!いまさら勉強しなくても…」と思っている方が多いようです。しかし、翻訳とは外国の文化を日本の文化に変換する事です。例えば、英語の「Good morning.」を和訳する際に「良い朝」と訳す方はいないでしょう。これでは文字を翻訳しているに過ぎません。英語文化圏ではどういう時に「Good morning.」と言うかというシチュエーションを理解し、それを日本の文化に当てはめることで、「おはようございます」と正しく翻訳出来るのです。


もうひとつ例を挙げましょう、国際会議で海外から無理難題を迫られた日本代表が発した一言「前向きに検討します」。通訳の方がこれを奇しくも「We will do our best.」と表現してしまい、その後大混乱に発展したとかしないとか…。この例も文化ではなく文字(言葉)を翻訳したのが原因です。日本語で「前向きに検討します」が使われるシチュエーションは、丁寧に言えば「あなたの言われたことは理解しました。(やるかどうかについては)持ち帰って考えさせてください。」と言う意味ですが、その真意は「やらないよ!」に限りなく近いのです。


反対に、日本語を英訳するときに気をつけなければならないのが助詞(てにをは)と省略という日本特有の文化です。学校では「〜は」が主語…と習いましたので、「あのレストランは、美味しい」を英訳して「That restaurant has delicious tastes.」!?!? 日本語の「〜は」の使い方は「〜についてこれから話をします」と言うことです。ですので、「あのレストランは、美味しい」の本当の意味は、「あのレストランについて言えば、出す料理がどれも美味しい。」ということで、翻訳者は助詞「は」の意味と省略「出す料理がどれも」をくみ取って「That restaurant serves delicious dishes.」としなければなりません。この様に、日本文で「〜は」が出てきますと、読者はその後に話題の展開があると思い、心の準備をします。和訳文で「〜は」に続いて「〜は」、「〜は」と来ると、読者は二重三重に心の準備が必要となり「なんて読みにくい文章だ!」となってしまいます。


文化を翻訳するとは、日本の文化がどうなっていて、相手の外国語と何処がどの様に違うかをちゃんと理解しておくことが重要です。

 

今回紹介する『日本語から考える! 英語の表現』は、文法だけからは見えてこない日本語の持つカルチャーを紹介し、それを英語で正しく表現するにはどうすれば良いかが紹介されています。

 

一例を示すと、条件や時間の表現となる「と」や「ば」、「たら」、「なら」がどのようはシチュエーションで使われているでしょうか?


1. 春になる花が咲く。 ← 恒常的な条件
2. 雨が降れば、お祭りは中止になる。 ← 一般的な条件
3. 飲んだら乗るな、乗るなら飲むな。 ← 「たら」は完了形で「その後」、「なら」は既定条件を意味します。

 

1番の「と」を英訳するときは条件と言うよりは時を表すと考えましょう。また、毎年繰り返されるような出来事を英語で表現する場合は「現在形」となります。

 

この本では、日本語が使われる具体的な和文を示した上でそのシチュエーションの意味・解説があり、続いて、それらを英文で表現する際の注意点が記載されています。


その他には「〜は」と「〜が」の違いとか、「〜た」の使い方など、24種類の日本語特有の文化(表現)が解説されています。また、挿入されているコラムも面白く「の」の使い方とか、日本語の「名詞」性質などが紹介されています。和文英訳だけではなく、英文和訳にも、さらには、通訳の際にも十分活用できる内容になっていると思います。


最後に、この本はシリーズになっていて、「日本語から考える」と銘打って、フランス語や中国語、ドイツ語、スペイン語なども冊子になっていますので、ご参照ください。

 

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津村 建一郎(つむら けんいちろう)
東京理科大学工学部修士課程修了(経営工学修士)後、およそ30年にわたり外資系製薬メーカーにて新薬の臨床開発業務(統計解析を含む)に携わる。2009年にフリーランスとして独立し、医薬翻訳業務や、Medical writing(治験関連、承認申請関連、医学論文、WEB記事等)、翻訳スクール講師、医薬品開発に関するコンサルタント等の実務経験を多数有する。アイ・エス・エス・インスティテュートでは医薬翻訳クラスを担当。

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