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ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第27回 :飯岡慶枝先生(英語通訳)

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先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、飯岡慶枝先生ご紹介の『マキアヴェッリ語録』(塩野七生著、新潮文庫、1992年)です。

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塩野七生といえば古代地中海世界を描き、幾多のベストセラーを出している作家だが、歴史小説からエッセイまでその作品を買って後悔することがまずない。その中で『マキアヴェッリ語録』はマキアヴェッリの著作や書簡から言葉を抜粋したもので、思想の要約や解説書ではないことから初めての読者にも読みやすくなっている。全体は君主篇、国家篇、人間篇の三部で構成されている。その一部をご紹介したい。

 

「君主にとっては、愛されるのと怖れられるのとどちらが望ましいであろうか。当然のことながら、ほとんどすべての君主は、両方とも兼ねそなえているのが望ましい、と答えるにちがいない。しかし、それを現実の世界で行使していくのは実にむずかしい。できないわけではないが、たぐいまれな力量の持ち主であることが要求される。それで、ほとんどの場合一方を選ぶしかないとなるのだが、わたしは、愛されるよりも怖れられるほうが、君主にとって安全な選択であるといいたい。なぜなら、人間には、怖れている者よりも愛している者のほうを、容赦なく傷つけるという性向があるからだ。」


「思慮に富む武将は、配下の将兵を、やむをえず戦わざるを得ない状態においこむ。古代の将軍は、人間の意欲というものは、必要に迫られてこそ充分に発揮されるものであることを知っていた。」(以上、君主篇)

 

「弱体な国家は、常に優柔不断である。そして決断に手間どることは、これまた常に有害である。」

 

「困難な時代には、真の力量をそなえた人物が活躍するが、太平の世の中では、財の豊かな者や門閥にささえられた者が、わが世の春を謳歌することになる」(以上、国家篇)

 

「力量に欠ける人の場合、運命は、より多くその力を発揮する」

 

「人間というものは、必要に迫られなければ善を行わないようにできている。」

 

「中ぐらいの勝利で満足するものは、常に勝者でありつづけるだろう。反対に、圧勝することしか考えない者は、しばしば、陥し穴にはまってしまうことになる。」

 

「いかなる種類の『闘い』といえども、あなた自身の弱体化につながりそうな闘いは絶対にしてはならない。名をおとそうがどうしようが、避けられるかぎり避けねばならない。このことを考慮しない、いわゆる強気は、害あって益ない愚行である」(以上、人間篇)

 

鋭い人間観察とストレートな表現に時々ドキッとする。なかにはあまりに有名になっている言葉もあるので、さして新味を感じないと思う方もいらっしゃるかも知れないが、仕事などで行き詰まったとき、思考を整理するのにマキアヴェッリの著作を参考にするという現代のビジネスパーソンの話を聞くと、その作品の息の長さに驚かされる。語録ではあっても、簡単なhow-to対策法ではなく、二者択一を超えた第三の道を模索する出発点としていまだ健在であることを示している。

 

マキアヴェッリの私的な生活についての記録は多くはないが、同じく塩野七生著の『わが友マキアヴェッリ』(中公文庫)が当時のフィレンツェ共和国の状況を伝えている。メディチ家、修道士サヴォナローラ、チェーザレ・ボルジア、そしてマキアヴェッリが書記官として仕えたピエロ・ソデリーニ大統領などとの具体的なエピソードを交えて、マキアヴェッリがその時代に向けていた視点が描かれると同時に、そのしなやかでユーモラスな人柄まで伝わってくる。権謀術数の権化のように捉えられがちなマキアヴェッリだが、その言葉の背景理解が深まり、語録とともにあわせて読みたい一冊である。

 

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飯岡慶枝(いいおか よしえ)
フリーランス通訳者。五輪誘致から、製造、教育、ビジネス一般まで幅広い分野で活躍中。
アメリカ留学後、ISSにおいて通訳訓練を開始。1997年からISS英語通訳者養成コース講師を務める。英語教授法修士号。

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