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授業体験レポート:2017秋【中国語編】第9回 「366歩のマーチ」

 

スクールブログで人気の連載、レギュラーコースの授業ルポ。この秋、13シーズンめを迎えました。

2017年秋期では、英語通訳クラスと中国語翻訳クラスから、それぞれレポートしていただきました。

今週のレポートが中国語翻訳クラスの最終回となります。どうぞお楽しみください!

5か月間にわたってお読みくださり、ありがとうございました。

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今期の授業も、期末テストの解説をもって最終回となります。長いようで短かった半年間、本科2の目標である「仕事としての翻訳」に果たしてどこまで近づけたのでしょうか。

 

丸第17回 中日翻訳


翻訳科の期末テストは、2〜3行の原文5題を自宅で翻訳して提出します。最終回は課題がないため、ただテストの解説を聞いていればいいから楽勝だ、と思っていたら、やっぱり世の中、そんなに甘くありませんでした。

 

講師の先生が、「配布した資料の最後のページは見ないでくださいね」とおっしゃるので嫌な予感がしていたのですが、授業も終盤になり、いよいよ最後のページを開くと、何とそこには新しい課題文が!

まさかこの場で追加のテストですか? と半ベソをかきながら良く見ると、中国語文の下には日本語の訳例が添えられています。10分間で、同じ原文を指定された別の用途に訳出するという練習でした。

しかし、予想はつくと思いますが結果は惨憺たるもので、授業後の面談(最終回には、講師の先生が個別面談してくださるのです)では、「もう少しできるかと思いました」というキビシイお言葉を頂戴してしまいました。

 

そうです、訳語の選び方ひとつで同じ文章が全く違うものになる、というテクニカルなポイントもさることながら、この課題は本科2での学びが凝縮されたものだったのです。最初の授業で習った通り、仕事としての翻訳は、納期を守れるスピードで、発注者の求めに応じる訳文でなければなりません。全く自分の学習能力のなさには自分で呆れました。

 

思えばこの授業レポートにしても、翻訳本科2の素晴らしい授業風景を皆様にお伝えするという本来の目的からどんどん逸脱してしまい、コース選びのご参考には全然ならなかったのではないかと深く反省しております。今さら遅いですが……。

 

とは言え、本科2の授業は単なるスキル習得に留まらず、日中両言語の違い、さらには自分の母語である日本語についての考えを深めてくれるものでした。脱線気味のレポートではございましたが、その奥深さの一端を少しでもご紹介できたとしたら幸いです。

 

 

丸第18回 日中翻訳


こちらも最後の授業は期末テストの解説でした。テストがこれまでの授業で扱われた事項を反映した内容だったため、総復習を兼ねた授業です。

最終回にふさわしく、大喜利(?)感満載でしたが、いくつかご紹介すると……。

 

なぜ日本に精巧な食品サンプルがあるのか。それは、料理の名前を聞いても中味が分からないからです。確かに、「鉄板焼き」「茶わん蒸し」という料理名から得られる情報は、「闇鍋」と大差ありません。それに対して中国語の料理名は単純明快。“青椒肉丝”(チンジャオロースー)は「青椒/ピーマン」と「(豚)」の「/細切り」炒め。そのまんま作れちゃいそうです。

 

日本語では、皆が了解していることは省略されます。「おーい、お茶」と言えば日本茶、しかも温かい緑茶を持ってきて、という意味だと誰もが理解します。これを中国語に翻訳するなら、省略部分を補わなければなりません。

 

幸か不幸か日本語も表記に漢字を使うので、漢字を並べれば中国語に変換できるだろうと思ってしまいがちですが、このように、抽象・省略に傾く日本語とリアルさを追究する中国語とでは、発想のベクトルがそもそも真逆。

 

“等意”、つまり意味が合っているのは直訳のレベル。翻訳なら“等值”、すなわち等価に持って行きたいと先生はおっしゃるのですが、日中両語間のギャップを埋めるのは相当大変です。

例えば母が子に言った“妈还没洗碗”を「お母さんはまだお皿を洗っていない」と訳すと、日本語としてはリアル過ぎます。「後片付けが済んでいない」でも、まだ具体的です。「手が離せない」まで持ってきて、ようやくこなれた日本語になる。裏を返せば、「手が離せない」を適切な中国語に訳すことの如何に難しいことか…。

 

今期、日中両語の違いを痛感できたことは大きな財産になりましたが、「仕事として翻訳」するなら、違いを見つけ、それをどう埋めるかは自分で考える必要があります。

 

思うだに怯みますが、そう言えば先生は仰ってましたっけ。中国語圏で広く知られる思想家・厳復の翻訳論“信” “達” “雅”、そのココロは、「/原文には忠実でなくちゃ」→「/でも理解してもらえないと意味ないよ」→「/まぁ、良い文章ならいいってことで(笑)」。

 

厳復先生に倣って(?)グダグダ悩まず、精進あるのみ。2歩下がっても3歩進めばいいって、昭和の歌にもありましたよね。今年はオリンピック・イヤーですから「366歩のマーチ」と言ったところでしょうか。って、あれ? 冬季オリンピックの年は閏(うるう)年じゃなかった。授業で、訳出の際は事実関係をきちんと確認しましょう、と毎回ご指導いただいていたのに……

 

 

丸本科2の授業をふり返って


授業では半年にわたり、バラエティに富んだ原文を翻訳し、記事や手紙、公的文書などに整えるという作業を通じて、読み手に届く訳文をアウトプットする練習を重ねてきました。書き手の意図を汲み取って伝える訓練は、単なるスキル習得を越え、日中両言語の違い、さらには母語である日本語について観察を深めることにもつながっていたと思います。

私が翻訳を学ぶ究極の目的は、日中の(ミーハーな)文化を紹介することでお互いのファンを増やし、少しでも世界平和に貢献することです(大きく出ましたね!)。と、口では言いながら、去年の今ごろ、この学校に通い始めるまでは、そんなことは出来っこないと自分で諦めていました。

でも、今は違います。本科1、本科2で課題に取り組んだ1年間、これまで気づかなかった多くのことを学びました。その延長線上に、いつかは読み手の心に響く翻訳ができるはずだという確かな手ごたえを感じています。ささやかな進歩ではありますが…。

 

ということで、常に脱線気味のレポートではございましたが、授業と中日・日中翻訳の魅力の一端でもお伝えすることができたなら幸いです。ご覧くださいまして、本当にありがとうございました!

 

| 授業ルポ | 09:00 |

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