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授業体験レポート:2017秋【中国語編】第8回 「それを言っちゃあ お終いよ」

 

スクールブログで人気の連載、レギュラーコースの授業ルポ。この秋、13シーズンめを迎えました!

2017年秋期では、英語通訳クラスと中国語翻訳クラスから、それぞれレポートしていただきます。今学期の終わりまで、どうぞお付き合いください!

ISSの教室では実際にどのような授業が行われているのでしょうか?

毎週金曜更新、英語・中国語を交互にお届けします。それでは、中国語の授業ルポ第8回をお楽しみください。

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丸第15回 中日翻訳
 
今回の課題は若手俳優を紹介する記事の翻訳です。(ほぼ)映画とドラマで中国語を学習してきたミーハーな自分には、うってつけ!
…と思ったら案の定、世の中そんなに甘くありませんでした。

 

訳出に大きな間違いはないにも関わらず、翻訳としては全然ダメ。講師の先生の訳文を拝見した瞬間にそれを悟り、思わず血の気が引きました。

何がダメかを逐一解説していただいた120分の授業は、先生の穏やかな口調とは裏腹に、針のムシロというかゾンビ犇〈ひし〉めくダンジョンというか、ともかく恐怖の連続でした。思い出すのも辛いですが、何とか振り返ってみますと……。

 

・登場人物の個性や記事の方向性を正しく捉え、それを踏まえた表現にできたか


人を紹介する文なのですから、その人がどんなキャラクターか考えずに翻訳するのは無謀という他ありません。訳語選びをミスったせいで、シャイな好青年が、上から目線のエラそうな若造に早変わり。ファンの皆様、本当にごめんなさい、翻訳がそのまま記事になるのに、読者に喜んでもらえる方向に訳せていなければダメですよね。
「誰を演じてもキムラさんらしさを感じる」と「誰を演じてもキムラさんに見える」では与える印象が真逆。ファンに後者を投げつけるなんて、翻訳者というより勇者かと…。

 

・全部を直訳するのではなく、目的に沿って取捨選択したか


原文もタレントのイメージを良くする方向で書かれているはずですが、逐一直訳するとニュアンスが変わってしまうことがあります。「身長があるので」と訳せば謙遜しているのに、「僕は背が高いので」だと自慢げに聞こえてしまうのです。不思議ですね……。わずかな違いも全体の印象を左右するので、おろそかにできません。

 

・話がうまくつながるように工夫しているか


日本語から中国語に訳すときは、情報を補うようにとしょっちゅう注意されますが、中国語から訳すときも、何か言葉を足さないと日本語として座りが悪いことがあるというのは意外な指摘でした。「ただし」「そのあと」「ようやく」といったつなぎの言葉や、ちょっとした付け足し(作品名の前に「出世作となった」と加えるなど)があるだけで、文章のなめらかさ、分かりやすさが全然違ってきます。

読み手の存在がハッキリ見える今回の課題を通じて、中文和訳と翻訳との大きな差を、一段と強く感じ取れたように思います。

 

 

丸第16回 日中翻訳

 

今回の課題は2つあり、1つは短文、1つは企業から消費者へのお詫びの手紙でした。

 

短文の方は、雑誌名の由来を説明した文章です。雑誌名に採用された単語(外国語)が、現地でどういう背景を持つか紹介することで、それとなく雑誌の趣旨も読者に伝えている……のですが、「それとなく」では中国語ネイティブは納得しないらしく、ここはハッキリ、「〜という考えに共鳴して××を誌名としました」等々と補う方がいいらしい。

 

そんなの原文に書いてないし、ちょっと考えれば分かるじゃないですか。皆まで言ったら雰囲気ぶち壊しでしょ、と思う間もなく、では雑誌の趣旨は何ですか、と講師の先生に突っ込まれ、雑誌名=趣旨ではなかったため、途端にしどろもどろに。

 

そうです、よくよく考えてみれば、この文章が本当に伝えたかったのは、誌名の由来になった言葉の説明というよりは、明示はされていない、雑誌の趣旨の方。

 

日本語は、相手が分かるだろうと思うことは文章からどんどん間引いてしまう上に雰囲気重視なので、本当に言いたいことや足すべき情報が何かを考え始めると、結構大変です。

 

2つめの課題であるお詫びの手紙にも同様の問題がありました。事故品を返送してきた消費者に、謝罪のうえ、お詫びの品を送る、という内容なのですが、先生は、直訳しただけでは火に油を注ぐ結果になるかもしれないと仰るのです。

 

先生曰く、返送された製品については代品を送るはずだが、そのことは手紙のどこにも書かれていない。そこに触れずにおまけのことだけ書くと、代品はさておき弊社の新製品をお試しください、という宣伝と解釈されるかもしれませんよ、とのこと。

 

唖然とする私たちに追い打ちをかけるように、先生は、台湾で映画化された『桃太郎』の話をしてくださいました。

 

その映画では、なぜ桃太郎が桃の中にいたのか、どうして鬼が島のことを知ったのか、といった根本的な疑問から、大きな桃をどうやって家まで持ち帰ったのか、島へはどうやって行ったのか等々等々の小さな疑問まで、きっちり補足されているらしいのです。

 

そんなディテール、要りますか?! おとぎ話じゃなくなるし、野暮ってもんよ! とつい思ってしまう、こちとら江戸っ子受講生をよそに、中国語ネイティブのクラスメートは映画に興味津々の様子。いやさ、中国語に入れば中国語のルールに従わなければ……。

 

決意を新たにしたところで、本科2の通常の授業は最終回。授業末に配られた期末テストは、自宅で翻訳して締め切りまでにメールで提出します。

 

次回の授業はテストの解説。どんな恐ろしいことになりますやら、はぁ、幾つになってもテストはつらいよ…。

 

| 授業ルポ | 09:00 |

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