通訳・翻訳養成学校のISSインスティテュートでは、キャリアにつながるプロの語学力を養成します。

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ISSインスティテュート創立50周年記念「ISS講師からの応援メッセージ」 第29回: 和田泰治先生(英語通訳者養成コース)

 

1966年、日本で最初の同時通訳者養成学校(当時の名称:アイ・エス・エス通訳研修センター)としての開設以来、株式会社アイ・エス・エス・インスティテュートは、第一線で活躍する通訳者・翻訳者を養成してまいりました。

 

創立50周年記念として、これからISSで学習を始めてみようとお考えの皆様や、ISSで学習中の受講生の皆様へ向けて、プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師から「応援メッセージ」をいただきました。本スクールブログにて、「応援メッセージ」を一つずつご紹介いたします。

 

通訳・翻訳訓練を始めてみたいけれどあと少しの勇気がでない皆様、学習を長年続けているからこその伸び悩みを感じている皆様、ぜひ、ご一読ください!

 

                      

 

 

 

 

 

           

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「北極星」

         和田泰治先生(英語通訳者養成コース)

 

 

私がISSに通学していたのはもう20年以上も前のことです。


時は90年代初頭、日本はバブルの夢うつつから醒めたか醒めぬか現実が掴めぬまま、その後の「失われた20年」へと転落していく淵で彷徨っていた時代です。


その当時から20有余年。今にして思えば、海外での生活経験も無く、頭も悪くて勉強も仕事も大嫌いという人間が、何と四半世紀もの間、ただ人前でしゃべるのが好きだというだけでこの世界で生き延びてこられたことは奇跡としか言いようがありません。正直に言って自分でも驚いています。本稿では、そんな私が通訳者として何よりも大切だと思ってきたことを書かせていただきます。独り言だと思って読んでください。

 

私の通訳者としての永遠の課題は「いかに恐怖心と不安を克服し、この過酷な仕事を続けていくメンタリティを維持していくか」ということです。

 

そもそも私にとって「通訳」とは無理難題に他なりません。全く異なる文化、思想、言語の狭間でその溝をたった一人で埋めなければならない。100%完璧にこなすことなど絶対にあり得ない状況の中で苦闘し続ける。そんな宿命から逃れる術はありません。

 

そして20年間、毎日、現場へ出る不安や恐怖心と戦ってきました。自らの知識レベルを大きく超える難解なトピック、どんな言葉を、どんなふうに話すのかも全く不明な初対面のスピーカー、事前情報も無く、ぶっつけ本番の繰り返し・・・・・現場に出るまではとにかく怖い。暗闇の中で今にも得体の知れない魔物に囚われるのではないか。そんな恐怖に怯えながら現場へ向かいます。そして通訳者として最も大切なのは、その不安や恐怖心を克服することに尽きると考え、そのために一体何をすべきかを長い間試行錯誤してきました。

 

私の結論は「自分の考える理想の通訳」をできる限り具体的にイメージし、その達成を目標として徹底的に勉強し続けることによって恐怖や不安を克服しようというものでした。

 

私の思い描く理想の通訳のスタイルとは簡単に言えば次のようなものです。


一方の極にはスピーカーの話す言語(source language)を一字一句、副詞、形容詞に至るまで徹底的に単語単位の粒度で聞き手側の言語(target language)に置き換えるような通訳、言うなれば超高精度な機械翻訳とでも称すべきスタイルがあります。そして私の理想とする通訳はもう一方の極にあります。つまり発言者の言葉は発言者の思考、意図のサインに過ぎないと捉え、その言葉を解釈し「意味」(あるいは「意図」や「メッセージ」)として完全に抽象化してから通訳者が自分自身の知識と話力を駆使してその「意味」を「説明」し直す。言い換えれば、発言者の言葉自体からは極力自分の意識を引き離す。そうしてこそ発言者の表層的な言葉に囚われず、言葉の構造や文化の違いを吸収してその思考と完全に同化することができる。これこそが「天衣無縫の通訳」であり、常に回帰すべき理想の原点だと考えてきました。

 

もちろん通訳個人の嗜好や能力、どのような分野で通訳をしているかによって、理想とする型は千差万別です。何が優れているか、間違っているかが問題ではなく、大切なのは、型の如何を問わず、自分が目指すべき理想がどのような通訳なのかということを、明確に、具体的に持つことです。このテーマのこの通訳をする場合には、どんなパフォーマンスができれば完璧に理想的な通訳なのか、自分にとっての至高の通訳なのか、ということを突き詰めて考え、イメージし、そしてこの理想を実現するために必要な学習プログラムを作って毎日粛々と勉強し続けるのです。

 

現場では満足のいくパフォーマンスができない。それは目標に到達する領域に自分が未だ至っていないだけであり、得体の知れない魔物など存在していない。究極の目標さえはっきり見えていれば、ただそこへ向かって自信を持って歩み続ければよい。そう言い聞かせることで私は不安や恐怖心と対峙してきました。

 

通訳者の私にとって「自分の目指す理想の通訳」は、その昔、漆黒の闇の中で夜間飛行をする飛行士にとって命の光だった北極星です。そこに輝く一点の光が私を進むべき航路へと導いてくれるのです。

 

皆さんの中にも、私のように通訳者を目指す過程で、通訳者となった後も、様々に悩み、迷い、不安と恐怖心に囚われている人がいるかもしれません。底知れぬ深遠な闇に吸い込まれ、身動きがとれなくなりそうになる。そんな時、闇の中に一際明るく輝いている星。そこを目指していけば必ず原点に戻り何度でも目的地への航路が開ける。そんな皆さんにとっての北極星を見つけてください。

 

最後に、私の敬愛するサン・テグジュペリが飛行士を描いた処女作「南方郵便機」の一節を皆さんに贈ります。

 

「ただ空の星だけが、我らに真の距離を示してくれる。静かな生活、忠実な恋愛、なつかしい恋人、それらのものの在所(ありか)をいま僕に示してくれるのは実にあの北極星だ」(「南方郵便機」堀口大學訳 新潮文庫)

<禁無断転載>

 

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<和田泰治先生のプロフィール>
明治大学文学部卒業後、旅行会社、マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。
 

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