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ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第2回 : 青山久子先生(中国語通訳)

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先月から始まった、新連載「ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜」。
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、中国語通訳者養成コース講師、青山久子先生ご紹介の「反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体―」(森本あんり著、新潮選書)です。
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 昨年の下半期から、アメリカ大統領予備選挙で「トランプ旋風」が吹き荒れています。ドナルド・トランプ氏は今やプロレスのヒールのような存在になり、CNNでの露出も多く、評論家が集まって度々トランプ氏をこき下ろしています。これが日本だったら、トランプ氏が連日東スポの一面を派手に飾っているのでしょうか。この現象、アメリカ事情について不勉強な一日本人から見ると謎だらけです。当初、私はヒラリー・クリントン氏の「共和党の怪しい候補者との一騎打ちで楽々勝利を狙う」戦略かという珍説を会う人ごとに得意げに披露し失笑を買っていましたが、そうではないようです。

ではなぜ、ますます深刻化する格差社会、人種差別、社会不安などに不満を蓄積させた国民が変革を望み、反体制の旗手としてかくも粗野な失言王、ドナルド・トランプ氏を熱狂的に支持しているのでしょうか。反体制の候補者が登場するのは民主選挙の場では何ら不思議な事ではありません。万一トランプ氏が大統領になったとしても、イスラム教徒の入国を禁止し、メキシコとの間に万里の長城のような壁を建ててその費用をメキシコに払わせるなど、実現不可能でしょう。政治は一人でできるものではなく、恐らく優秀かつ常識的なブレーンがつき、そこそこの線で折り合いをつけることは容易に想像できます。ならば中立なはず(と思っていました)のアメリカのメディアはなぜこぞってトランプ氏を危険人物として徹底的に叩き、共和党内でもトランプおろしの動きが出てきたのでしょうか。まるでトランプ氏を批判しなければ知識層という枠からはじき出されてしまうという思いに突き動かされているようにも見えます。トランプ氏の支持者とメディアのこの溝はなぜ生まれ、何と何が対立しているのでしょうか。

太平洋の対岸の国についておせっかいにも考え続けていたその時、その謎を解き明かしてくれるこの本に出会いました。

タイトルにある「反知性主義」とは、決して単なる知性への反対という意味ではなく、知性と「体制」といった別の要素が結び付いた時に、それに対して生まれる強い反発のようなものです。これはアメリカに特有と言ってもよい現象で、その起源はアメリカ独立前から幾度となく全米を席巻した「信仰復興運動(リバイバリズム)」にあるのだそうです。この本を読み進めながら、アメリカのキリスト教史をたどり、伝道集会の様子を想像していると、今のアメリカの政治、文化、ビジネスの様々な原型がそこにあることがわかります。トランプ旋風も、お祭りのような大統領選のプロセスの一つ一つも、チェーンビジネスも、訪問販売も、(もしかしたらロックフェスも)そのルーツはアメリカ独自の土着化を遂げたキリスト教の歴史にあったのです。アメリカ在住経験がある方なら、もっと思い当たる点があるかもしれません。

また、本書では、テーマに沿った映画も数本紹介されています。『エルマー・ガントリー』は伝道集会の様子を再現していますし、『リバー・ランズ・スルー・イット』、『スティング』、『ペーパームーン』は、本書で得た背景知識があると、見え方が違ってきます。

是非、アメリカ大統領選が旬なうちに、その背景にある歴史の一側面の探訪を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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青山 久子(あおやま ひさこ)
東京出身。日本で4年制大学(中国文学専攻)卒業後、北京の大学に2年間留学(国際経
済専攻)、帰国後フリーランス通訳・翻訳者として活動。万博通訳コンパニオン、気
象会社の気象・海象予測担当を経て現在会議通訳・放送通訳、企業向け中国語講習な
どに従事。気象予報士、防災士。
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