通訳・翻訳養成学校のISSインスティテュートでは、キャリアにつながるプロの語学力を養成します。

ISSスクールブログ

アイ・エス・エス・インスティテュートが運営しています。


<< 英語翻訳コース特別セミナーレポート「正確な読解力がプロへの近道!」 | main | 英語翻訳コース特別セミナーレポート「法務翻訳の『今』を知る 〜 サービスの最前線からの報告」 >>
中国語翻訳コース特別セミナーレポート「プロ翻訳者に求められる訳文とは?翻訳の方向性の見定め方」
3月6日、多くの方にご参加いただき「プロ翻訳者に求められる訳文とは?翻訳の方向性の見定め方」というテーマでセミナーを開催しました。

講演は中国語翻訳者養成コース本科2クラスの椙田雅美先生にご担当いただきました。
先生は「中国農民調査(共訳)」を翻訳されている他、幅広い分野で活躍中の現役翻訳者です。

以下はセミナーの内容です。

-----------------------------------------------------------------

授業中によく、直訳するべきなのか、意訳してもいいのか、この単語は残すべきなのか、抜いてもいいのか、こんなに変えてしまってもよいのか、など様々な質問をいただきます。
そのあたりも含めて、みなさんにお話しできればと思います。

■翻訳の基本とは?

「足さない、引かない、変えない」が基本ですが、仕事としての翻訳の場合、文章全体の意味を等しく伝えるために一語一句の意味を「足す、引く、変える」こともあります(実際は多いです)。
私は「変えない」は文章全体の意味を「変えない」ことである、と考えています。

■方向性の見定め方

どのような訳文が必要かは、依頼者が決めます。
どのように訳すかは翻訳者が考え、翻訳の方向性を決めます。

最終的には、読み手にどのような文を読ませたいのか、クライアントの要望にあわせて、翻訳者が翻訳の方向性を決定する、これがプロの翻訳者の仕事である、と私は思っています。
プロの翻訳者が何となく訳す、ということはあり得ません。何を目的とした文書なのか、それを考えながら訳していただきたいと思います。

■翻訳の5W1H

これも授業でよくお話していることですが、翻訳の5W1Hというものをご紹介します。

「いつ」 いつ使うのか 納期はいつか
「どこ」 どこ(どんな媒体、形式で)で使うのか
「誰が」 誰が書いたのか 誰が読むのか
「何を」 何を訳すのか?何に訳すのか?
「なぜ」 なぜ訳すのか、訳す目的は?
「どのように」 具体的な指示はあるか?

「何を」については例えば、原文が新聞記事で、訳文は広告に使う、ということもあります。
「どのように」は、フォントの指定、「である調」で書くのか、「ですます調」で書くのか、分かり易く書くのか、英語を使う、使わないなどの指定があります。

上記の色々な条件を満たしていくことによって、翻訳の方向性というものはほとんど見えてくると思います。要は与えられた条件に従ってきちんと訳すことが仕事で、こちらが決めることではないと思っています。
次は実例をいくつか挙げてご説明します。

■実例1 いつ、どこで使うのか

【女士们、先生们、朋友们:】

紳士淑女の皆様 ⇒辞書通りですが、まず言いませんね。
レディース&ジェントルメン⇒こちらもあまり使わないでしょう。
皆様⇒これが一般的ではないでしょうか。
ご来賓の皆様⇒企業の発表会などビジネス関係の場合はこちらですね。
ご臨席の皆さま⇒今回の訳ではこれが正解です。

この文は、ある会社の10周年記念パーティでの社長さんの挨拶文の一部です。外部の会社の方も招いているし、社内の人もいます。そうすると、全員がご来賓ではないわけです。会社の式典の式辞としては、「皆様」だけでは少し寂しいので「ご臨席の皆様」となってくるわけですね。
例えばこれが結婚式であれば、「ご参列の皆様」となり、お葬式であれば「ご会葬の皆様」となります。中国でお葬式の時に「女士们、先生们、朋友们」と言うのか分かりませんが。
このように、実際のお仕事では、全体を見てどのような訳が適切かを決めますので、単語一語、一行の文で訳せることはほとんどないと思います。

■実例2 何を訳すのか、何に訳すのか

【解放前、开放后】

ご存知と思いますが、「解放」とは1949年に中国が新中国になったことですね。「开放后」は80年代の改革開放政策を始めた後のことをいっています。
中国の人たちには「解放前、开放后」で全て通じますが、当然日本語に訳す時は違ってきます。
日本語に訳すと「新中国建国前、改革開放政策以降」となります。
中国の事情にあまり詳しくない日本人が読んでわかる、且つ字数を大幅に増やし過ぎない訳として定着してきています。
ただし、中国のことのみしか扱っていない本や小説中でのセリフなどは「解放前、開放後」のまま訳します。このように状況に応じた訳し分けが必要です。

■まとめ

・直訳と意訳どちらがよいのか?
文章全体の意味を等しく伝えるという前提のもとに、一語一句を丁寧に訳します。直訳か意訳かは結果であって方針ではありません。

・どこまで訳す、訳さない?
文章全体の意味を等しく伝える上で、足りない言葉は足し、重複、誤解を招く言葉は引きます。

・どこまで変える、変えない?
文章全体の意味は変えません。一語一句の意味にはこだわりません。

以上は全て基本的な仕事としての翻訳です。依頼の形式は様々です。
最終の読み手に、原文全体の意味、或いはクライアントの意図に沿った意味が等しく伝わる訳文が最良の翻訳だと私は思います。

以上

-----------------------------------------------------------------

参加された皆様からは、次のような声が寄せられました。

・翻訳を仕事とする上での考え方について、とても参考になる内容でした。
・非常に興味深く聞き入りました。内容的にも訳す際のテクニックを教えていただけて面白かったです。
・実際に複数の訳例を出して解説してくださった点がとても分かりやすく、参考になりました。
・訳が目的によってこんなに変わるものなのか、ということが分かりました。
・日本語の文章を書く際にも応用できるテクニックが数多くあり、言語を超えて大変勉強になりました。色々な場面で活用してみたいです。
・プロの翻訳者は言葉の職人だと思いました。材料を揃え、道具を整え、使う人の身になって物を作るからです。

アイ・エス・エス・インスティテュートでは、これからも皆様のお役に立つセミナーを企画してまいります。

------------------------------------------------------------------

四葉のクローバー2016年[春期]4月開講コースの詳細情報・お申込みはこちら

 ・中国語翻訳者養成コースの詳細はこちら
 ・無料体験レッスンの日程・お申込みはこちら
 レベルチェックテストのお申込みはこちら
 
| イベントアルバム | 18:30 |

CATEGORIES

RECOMMEND BOOKS


SELECTED ENTRIES

CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>

リンク

モバイル
qrcode