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『ザ・通訳道』:柴原早苗先生 (2)


質問: これまでの仕事での印象的なエピソードはありますか。

 通訳業を10年以上続けていると、実にさまざまな経験を積み重ねることができます。訳していて心がウキウキするような業務もあれば、非常に深刻な内容で目に涙をためながら通訳をしたこともあります。どのような案件であれ、通訳者というのは言葉の仲介人として、正確さが必要なのはもちろんのこと、私情を交えずに依頼主のツボを得た通訳をすることが求められると思います。

 さて、これまでの自分の経験を振り返ってみると、今でも忘れられない通訳業務があります。

 それはデビューして数年後にいただいたお仕事で、ある国の防衛関係者が日本の防衛庁を表敬訪問する際の通訳でした。当時は今ほどパソコンやインターネットが主流ではなく、また情報公開の法律なども厳しくなかったのです。よって、かなり前から関連資料をいただくことができました。そうした資料を元に、「防衛白書」を入手したり、月刊「新聞ダイジェスト」から関連記事を切り抜いたりして、自分なりの準備をしていったのです。グーグルで一発検索ができない、いわばアナログの時代だったからこそ、自分でどのような資料が必要なのかを嗅覚で探し出し、それを予習する。そんなのんびりした時代でした。

 安全保障関連の条約や兵器の名前、両国間の防衛関係史などを徹底的に頭に叩き込んだおかげで、通訳業務そのものはスムーズにいったと記憶しています。しかし、今でも鮮明に覚えているのは、レセプション時の一幕です。

 それは両国の防衛関係者を招いた立食パーティーでした。海外からのお客様に日本料理を味わっていただこうと、会場には様々な和食のメニューが並んでいました。中でも外国人関係者がもっとも興味を抱いたのが、お刺身の大皿だったのです。

 私自身、お刺身は大好物です。でも普段、一つ一つのお魚を確認して食べるというよりは、家族や友人と楽しく会話しながら、気がついたらお刺身はお腹の中、という食べ方をしてきました。よって、パッと見ただけでそれが何の魚なのかはまったくわからない状態だったのです。

 一方、当日の会場では、興味津々といわんばかりにお刺身の周りは人だかり。"What's this?" "What is this fish called in English?"といった質問が相次ぎました。幸い、イカ、タコ、マグロあたりまではすぐにお答えすることができましたが、「白いうす〜い切り身」や「テカテカしている青魚風の切り身」などになってしまうと、日本の関係者やその場にいらしたシェフに伺うしかありません。ところが「スズキ」「カンパチ」「ボラ」などといった、普段聞きなれない名前が返ってきても、英語名がわからなかったのです。しまいには"It's a kind of fish"ですべて切り抜けるという荒業をやってしまいました。

 通訳の勉強をしていたころはひたすら難しい内容を覚えたり、単語や構文を習得したりすることに励んでいました。しかし、いざ現場に立ってみると、専門分野以上に、一般的な知識も求められることがわかったのです。普段からさまざまなことに好奇心を抱き、日本語でも英語でも言えるようにすること。それが通訳者にとって求められることだと改めて感じたエピソードでした。


通訳デビュー当時の様子


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英語通訳コース講師 柴原早苗(しばはらさなえ)

 上智大学文学部社会学科卒業。航空会社、大学事務所勤務ののち、ロンドン大学LSEにて修士号取得。BBCワールドを経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。アルクEnglish Journal「BBCニュース」を監修するほか、通訳・英語教育などに関する記事を各紙に寄稿。ESAC英語学習アドバイザー資格制度「プロフェッショナル・アドバイザー」の資格を保持。「やる気が出る授業」として生徒から定評がある。
 現在はアイ・エス・エス・インスティテュート東京校にて基礎科1、横浜校にて準備科の指導に携わる。また、今年のウィンターコースでは東京校にて「ワンランクアップの通訳訓練」、横浜校にて「無理なく学べる はじめての英語通訳訓練」「パフォーマンスに差をつける『デリバリー講座』」を担当。


| 『ザ・通訳道』 | 11:01 |

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