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「北京から見る日中翻訳業界」 第11回 「麻婆茄子と魚香茄子」


日本へ旅行する中国人が増えるにつれて、グルメやメニューに関する翻訳に携わる機会も増えてきました。日本で見る料理にも中国人に馴染み深いものからそうでないものまであります。翻訳においては、馴染みのあるものにほど落とし穴があったりするわけです。

さて、異郷で母国の料理が恋しくなるのはよくありますが、日本にくれば中華料理も日本風になっていたりします。たとえば麻婆豆腐なんて日本で食べると花椒(フアジアオ)が入っていないものが大半です。麻婆豆腐の「麻」はしびれるという意味で、これは花椒が入っているから口がしびれるのです。料理を表す肝心な要素が抜けているわけで、本当なら「豆腐の甘辛煮込み」ってあたりが正しい訳語な気がします。

また、日本の中華屋さんで餃子を頼んだら厨房のなかでは「コーテル、イーガー(锅贴一个)」という元気な和製中国語が聞こえます。中国で餃子と言えば茹でたものがスタンダードだし、餡ににんにくが入っていないから会議前でも口臭の心配はいりません。中国北方では餃子を食べるときに生のにんにくを丸かじりしながら食べる習慣もありますが、餡のなかに刻んで入れるのは日本風だと思われます。日本に出張にくる中国人は要注意なところです。

同じ漢字の料理名でも国がことなれば発祥元と異なるものになることもあるわけですが、日本国内でも地域によって同じ名前の料理が変わったりもします。たとえば「たぬきそば」は関西でたのむと油揚げがのせられたそばが出てきます。「たぬき」だから「タネ抜き」つまり「天カス」のはいったそばという説は日本全国のスタンダードではないわけです。では油揚げの乗ったそばは関西だけのものかというとそうではなく、関東ではこれを「きつねそば」というわけですから、これらを中国語に翻訳するとしたらどうしたものですかね。興味のある人はネットで検索してみてください。いろんな人がいろんな翻訳をしています。

さて、中華料理で名前のまま翻訳できないものということをテーマにすると、代表格になるのが天津飯とか冷やし中華になろうかと思います。中国生活の経験がある人ならわかりますが、中国に天津丼なんて料理は存在しません。冷やし中華にいたってはそもそも縮れ麺が中国本来の麺ではないし、冷やして食べるというのもレアケースです。そこに酢をかけて「和がらし」をそえて食べるなど、中国人からすればウルトラCもいいところです。

これが難度最高かと思っていたらまだありました。「麻婆天津麺」という料理は、日本風ラーメン(縮れ麺)の上に麻婆(「麻=花椒」が入ってない日本風甘辛あんかけ)が乗って、その上に蟹肉のはいってない芙蓉蟹(カニ玉)がトッピングされたものだそうです。個人的には難易度Eランクくらいまでいってそうな気がしますがどうでしょうかね。

日本には麻婆茄子などの麻婆つながりの料理がありますが、これも中国にはありません。良く似た料理に魚香茄子という料理があり、これは麻婆豆腐と違って「麻=花椒」が入っていないのです。さて、するとこの料理の餡は日本の麻婆豆腐とほぼ同じ(細かいことはきにせずに)ってことになりますかね。余談ですが最近、中国では北方から旅行してきて四川でこの料理を食べた客が、「魚が入ってない」というクレームをつけたことがあったそうです。関東でたぬきそばを頼んだ関西人が「油揚げがはいってない」とクレームをつけたネタを思い出して笑ってしまいました。メニューの翻訳って難しいですね。

 
| 【中国語翻訳コース】 | 13:00 |

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