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ISS講師が語る「私を支える○△□」 第13回 岩木貴子先生の「私のデビュー戦」

昨年からスタートした、連載「ISS講師が語る『私を支える○△□』」

プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、自らの“通訳者・翻訳者人生”(少し大げさですが…)を振り返りながら、現在の自分を支えている「言葉」や「モノ」、「出来事」について語っていただいています。

○「言葉」=座右の銘、
△「モノ」=こだわりの逸品、
□「出来事」=私のデビュー戦(初仕事)

ISS講師がこの3つからテーマを選んで語る本シリーズ。

第13回目は、英語翻訳者養成コース講師、岩木貴子先生の「私のデビュー戦」です。

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もともと出版翻訳家を目指して留学したのですが、帰国後いざ翻訳家になろうと思っても、どうやってなれるものなのか皆目見当がつかないことにはたと気づきました。そこで、「成績優秀者は翻訳家デビュー」とうたっていたある通信講座を受講しました。

しかし、半年間の講座で思い知らされたのは自分の力のなさ。4年間の留学生活でほとんど日本語を使っていなかったのがたたり、日本語が不自由になってしまっていたのです。ぼんやりと、「こういうことを意味する言い回しがあったはずだ」と言葉の輪郭の記憶は残っているのですが、記憶をたぐってもどうしても言葉が見つからず、はたして翻訳家になれる日は来るのだろうかと不安でした。

とはいえ、ただ不安に思っていてもしょうがないので、そこは行動あるのみ。今度は英訳講座や実務翻訳の講座を受講しました。英訳講座を受講中にニュース翻訳や和書のシノプシス英訳などの依頼を学校から受けるようになりました。また、出版翻訳の英訳オーディションに合格したのと同時に同じ会社から別の和書の英訳を依頼されました。

フリーランスはそういうものらしいのですが、不思議と仕事の依頼は重なるもので、英訳とほぼ同時期に、今度は和訳のお話が舞い込んできました。こちらは、当時参加していた読書会で知り合った方に紹介いただいたエージェントの方からリーディングの依頼を受けるようになっていたのですが、その関係でお引き受けしました。また、こちらもほとんど時を同じくして、読書会を主催していた会社から小説の和訳のお仕事をいただきました。

ですので、英訳も和訳も初仕事は二冊同時進行でした。当時はもうがむしゃらで、お声がかかるとお引き受けしていたのですが、さすがにこれはいけないと反省しました。あまりにフル回転だと翻訳の質が落ち、周囲にも迷惑をかけてしまいますし、結局自分の首を絞めるだけなのです。最初のうちは依頼を断るのには勇気がいりますが、無理をしてはいけないということはこの時肝に銘じました。

実務翻訳のほうは、最初のうちはトライアルに応募してもまるでなしのつぶてでした。ゆるい条件でも「実務経験3年以上」という案件がほとんどで、実績がない人はそもそも応募すらできないのです。「実績実績って、じゃあどこで実績を積めばいいの?」ともどかしい思いでした。実績を問わないという初心者向けの案件に勇んで応募しても、書類選考で引っ掛かりすらしないこともありました。何しろ未経験で武器がないのですから、ひとつでも使えるものを増やそうとTOEICを受けてみました。すると、TOEIC受験後、前と違って翻訳会社の反応が明らかによくなりました。そのうちに一社、二社と登録していただけるようになり、細々とではありましたが実務翻訳のお仕事もお引き受けするようになりました。

翻訳のお仕事はデビューしてからも先が長く、一生勉強だと思っていますが、とはいえ、デビューするまでの道のりが何と言っても一番大変だと思います。先が見えてこなくて、どこまで行っても同じところを堂々巡りしているだけのように思えて、「こんなことしていても果たして翻訳家になれるんだろうか」とネガティブな考えにとらわれてしまいます。でも、そういうものなのだと思っていれば少し気が楽になるのではないでしょうか。「そうすんなりとなれるものじゃない、好きなことを仕事にするのだから、それなりの苦労があって当然だ」、と織り込み済みのことにしてしまうのです。

そういう時期が何か月、何年続くかわからないので、めげないために、自分を客観視することが大切です。若干色付けして。同じところをぐるぐる回っているわけじゃない、ちゃんと前進しているのだとわかるように、客観的なデータを記録しておくのです。そうするとまるっきり停滞しているわけではないとわかります。ささいなことでも構いません。たとえば、同じC判定でもコメントが以前よりもちょっとはよいかな、などと、自分の成長を確認することが必要です。

また、五里霧中の状況で自分を見失わないために、人生で最終的に自分はどこにたどりつきたいのか、そのために経ていく段階は何なのか、道程をすべて書き出しておくとよいと思います。そうすれば、少しずつでも目標に近づいていることがわかるからです。ただ漠然と勉強するのではなく、「何年後までにこうなっていたいので、今はこの段階」という風にはっきりとした道筋を作っておくと、先が見えない時期でも切り抜けられます。目標のためには何が必要なのかをしっかりと把握して、逆算して、今の自分ができること、するべきことを決めておけば、暗闇でさまよっている気がしても、明確なゴールに向かって前進しているんだ、と思えます。歩いて行けばいつかは目的地に到達することを信じて、一歩一歩進んでいってください。


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岩木貴子(いわき たかこ)
フリーランス翻訳者として出版、実務分野で活躍中(英→日、日→英)。アイ・エス・エス・インスティテュートでは、英語翻訳者養成コース、総合翻訳科・本科レベルを担当。

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| 私を支える○△□ | 19:00 |

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