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「北京から見る日中翻訳業界」 第9回 「中国医学と陰陽五行と翻訳の話」


唐突ですが中国の伝統文化の奥深さとコンピューター技術の発展から、IT翻訳にこじつけるのが今回のお題でございます。

さて、漢方薬の煎じ方も知らない世代が増えている中国ですが、それでも大きな病院には西洋医学と中国医学の両方のお医者さんがいて、それぞれのアプローチで診察し、薬を処方してくれます。ここでいう漢方薬とは何種類もの生薬を組み合わせて処方されるもので、中国では「中薬」と呼ばれます。日本の薬局で漢方薬を買えば、一般的には効果が遅いが身体にやさしいとか、副作用がないなどという認識を持たれがちでもありますが、中国で中薬と言えば毒も含みます。毒をもって毒を制すとは中医から来た言葉であり、その場合は健康な人が飲んでも身体を壊すだけで、これは副作用ではなく正しい作用の生薬を、誤って使用しただけのことであります。

中国医学とは「患者の状況」に応じた治療を行うことであり、風邪にはこの薬、下痢にはこの薬というレベルではなく、患者は年齢が何歳で、慢性的に身体の状況がどのようになっていて、生活リズムや精神状況や場合によっては家族構成や生年月日などまで総合的に判断して決定するものであり、ですからその意味において、日本のドラッグストア(病院の処方箋を売る薬店を除く)で売っている漢方薬と中国の「中薬」は意味が異なる、はずなんですが、中国でも最近は薬局の薬を指して、これは中薬だから副作用ないなんていう中国人がおられます。言葉はいきもの、ってことかもしれません。

さておき、中医が判断する材料として主なものは、舌や指先、顔色などを見ること、声や息遣いなどを聞くこと、脈や腹部を押した感触、本人や家族の病歴や既往症、生活状況などの問診で、ここに陰陽五行の理論が応用されます。陰陽五行とは陰と陽、五つの性質すなわち「木」「火」「土」「金」「水」であり、これが身体においては「肝」「心」「脾」「肺」「腎」に相当します。これらには相生相克の関係があり、相生関係として、木は火を生み、火は土を耕し、土は金を育みますが、相克関係が同時に存在し、土から生まれた金は木を切り倒すが、火に溶かされもするものだということです。

この原理に基づけば、心臓が弱っているなら肝臓からの流れを通してやればよく(相生)、また水の気による制御を避ければいい(相克)という考え方ができます。身体の一部を切除したり、一部を保養したりするということではなく、いかに全身のバランスと気脈の流れを整えるかということが中国医学の考え方であり、そのためには家族環境や食生活、ひいては生年月日時による四柱推命まで行う医者が珍しくありません。

四柱推命とは中国語では八字と呼び、これは生まれた年月日時から求められる符号の組み合わせになります。八字と言われる所以は、この符号が膨大な種類のなかから8つの組み合わせとして算出されることにあります。そして、その組み合わせから、この八字の持ち主はどのような人間で、どういう性格で、どういう仕事に向いていて、ひいては将来どのような運命が待っているかを読みとることを、「算命」といい、占い師の仕事になります。

八字を求めるだけなら、実はそれほど膨大な資料は必要なく、計算式と表があれば素人でも出来るので、それを活用した四柱推命のようなコンピューター占いも多く見受けられますが、コンピューターの行う思考とは統計の参照と計算であって、占い師の「算命」とは異なるし、それゆえに例えば中医が患者の病状を細かく問診票にしてコンピューターに入力しても、中医の診断にはならないように思います。

さて、翻訳業界でもコンピューターの出番が増えてきましたが、コンピューターが翻訳文を決定する方法と、人間のそれの決定的な違いとはなんでしょうか?ルール型と統計型の違いをとりあげたことがありますが、どのような方法であってもコンピューターの特徴は「考えない」ことだと思います。

原文の言いたいことを解体し再構築する、そういう能力が人工知能に備わったなら、翻訳者も占い師も中医もコンピューターに仕事を奪われそうですが、人間のAIに対する優位性とは捨てることが出来る点だと言われたりすることもあります。人間だって「考える」という活動を説明しきれているのかなんて言い始めると、哲学的でSFっぽいお話はマニアックになりすぎるからこの辺で、あとは皆様の思索にお任せしますかね。

 
| 【中国語翻訳コース】 | 10:00 |

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