通訳・翻訳養成学校のISSインスティテュートでは、キャリアにつながるプロの語学力を養成します。

ISSスクールブログ

アイ・エス・エス・インスティテュートが運営しています。


<< ISS派遣サイトでのプロ通訳者・翻訳者コラム[2015年]第2回を掲載 | main | ISS講師が語る「私を支える○△□」 第8回 片山英明先生の「座右の銘」 >>
「北京から見る日中翻訳業界」 第5回 「北京のお寿司の美味しい訳し方」
アイ・エス・エス・インスティテュートと同じ、翻訳センターグループの一員である北京東櫻花翻訳公司(本社:北京市)のマネージャーが、日中の翻訳業界の真相をお伝えします。

*****

北京にある日本料理店やお寿司屋さんなどの広告に、「築地直送」なんて言葉をたまに見かけます。日本人向けのフリーペーパーの広告だから日本人向けか、日本との関わりが深い中国人向けなので、広告も多くは日本語オンリーです。

さて、北京のお寿司は値段やランクがバラバラで、庶民向け回転寿司なら一人あたり2000円から、中級ランクで5000円、高級店になると20000円で足のでる店も少なくありません。北京の平均月収は10万円くらいというところを考えあわせて欲しいのですが、高級店であったとしても、客層は日本人だけでなく多くの中国人が通っていると言われています。北京に住む日本人はせいぜい10000人程度だし、日本人だってこんな高い店に通えるような人は限られます。日本人にターゲットを絞るより、お金持ちの中国人をターゲットとして狙う、これは北京で飲食店を経営する上でよく言われるところでもあります。

ところで寿司屋といえばネタが命です。冒頭で書いたように、築地直送をウリ文句にしている店もあります。築地というのはもちろん東京の築地です。中国に築地っていう店を作ったとかそういうオチではありません。わざわざ東京から直送ってところで、「そりゃすごいね」って思う反面、個人的にはあまり魅力的には感じません。東京近郊のちょっぴり海と離れた街でいう「築地直送」と、わざわざ陸揚げされたものをもう一度海の向こうまで輸送するのとは同じレベルの話ではないし、そもそも「直送」というのに無理があるような気もします。

そんななかで、「中国の漁港でも築地の寿司屋と同じレベルを実現できる」と言い、それを実践している寿司屋の大将(日本人)がいると聞いたことがあります。つまり、築地の誰か知らない人が選んだ魚ではなくて、自分の目で、現地の港で目利きすれば、とれたての新鮮な魚を安く効率よく北京で提供できるというわけです。これはコストダウンと同時に品質向上を図れるし、なによりほかに真似が出来ないという点で、まさにこれからの中国で、全ての経営者が見ならうべき好例だと思いました


さて、私達が取り扱う翻訳には、本場とか築地とかそういうものがありません。「日本流の翻訳」なんて肩書では仕事が取れないわけですから、経験ある寿司職人だから出来る目利きと同じく、経験ある翻訳者、翻訳会社だからできる「何か」が必要です。前回までのお話でツールを使った翻訳による生産性の向上、重複する用語表現の統一による品質向上ということを紹介しました。今回のトピックは「築地直送」という言葉をどう翻訳するかってところです。

同じ漢字を使う日本語と中国語では特に、時には原文に引きずられないように離脱しなければならない時もあります。同時に、法務や金融などの分野ではあえて多少意味が代わっても同じ漢字のまま日本の当用漢字を中国の簡体字に変換するだけの場合もあります。たとえば法律名などは同じ法律であることに関して誤解を避けるために、翻訳してもその脇に括弧書きで原文中国語を併記するというのも一つの手法です。

築地直送という日本語をそのまま中国語にしても、標準的な中国人にとって「築地」という言葉から漁港や陸揚げされたばかりの鮮魚を想像することができません。ただ、「直送」からイメージされるのは、「老板親手従日本空運過来」(大将直々に日本からハンドキャリー)ってことだと私なら想像します。赤裸々に翻訳すると、もはや広告のコピーには出来ませんね。個人的には中国語に翻訳しないことを勧める次第です。

日本人や日本に馴染みのある中国人に対しては、「築地直送」のままにしておいて、なじみ客から聞かれたらこっそり耳元で囁く、それが北京の寿司屋っぽくていいかなと思ったりします。

 
| 【中国語翻訳コース】 | 09:00 |

CATEGORIES

RECOMMEND BOOKS


SELECTED ENTRIES

CALENDAR
S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< July 2020 >>

リンク

モバイル
qrcode