東京校の英語通訳者養成コースをご担当いただいている通訳者の滝山雅子先生の講師インタビューをお届けします。
<滝山先生のプロフィール>
慶応義塾大学法学部卒業後、銀行に入社。2年目に転職を考え、アイ・エス・エス・インスティテュートに通い始める。負荷の少ない大学教授秘書に転職し、週1回から週2回のクラスへ移り勉強を本格化させる。自動車メーカー子会社の社内翻訳や工場通訳を経てフリーに。家族の転勤に伴う3年半の米国滞在中はUniversity of PittsburghでMA(宗教学)を取得し、帰国後に備える。自動車や保険、会計などの分野で稼働し、2016年現在は、主に医薬分野で活躍中。
・通訳者を志されたきっかけは?
転職のため英語力を研こうと、大学の恩師が講師をなさっていたアイ・エス・エス・インスティテュートに通い始めました。もともと英語は大好きでしたし、授業を通して通訳することの面白さや通訳者の格好良さを知りました。またアルバイトで翻訳をする機会があり、私は通訳・翻訳で食べていく!と決意するに至りました。
・先生がアイ・エス・エス・インスティテュートの生徒だった頃、スランプに陥ったことはありましたか?スランプ克服のコツをお教えください。
実は二度「もうやめようか」と悩んだ、大きなスランプがありました。通訳2(現プロ通訳養成科3)と同時通訳1(現同時通訳科)に在籍していた時のことです。英日の通訳力が思うように伸びず、こんなことも理解出来ないなんてと落ち込むと萎縮してますます出来なくなっていく、という悪循環に陥りました。散々落ち込んだあげく、もう1学期やってみてだめだったら通訳を目指すのをあきらめようと腹をくくり、必死で勉強するうちにいつの間にか乗り越えられていました。後から振り返ると「気持ちを切り替えること」と「やれるだけのことはやったのだという安心感→自信」で抜けだせたのかなと思います。
・毎回の授業で心がけて欲しいことは何ですか?受講生のパフォーマンスで気になることや、受講生へのアドバイスをお願いします。
月並みですが、きちんと予習・復習をして授業に臨むこと。つまり、自分で出来る部分は自宅で済ませ、クラスでしか出来ないこと(Public Speakingの訓練、自分のパフォーマンスを客観的に評価する能力を講師のアドバイスやクラスメートのパフォーマンスを聴衆として聴くことによって身につけるなど)のために授業をフルに活用してほしいと思います。
・リスニング力を伸ばす効果的な学習法はズバリ何でしょうか?
とにかく毎日英語を聴くこと!私の場合、1日5分の方が1週間に1度1時間よりも効果があったと記憶しています。FEN(今のAFN)ラジオの5分間ニュースをよく聴きました。出来るだけテープに録音し、知らない単語を調べたり、理解できない/聞き取れない部分をディクテーションしたりしました。「実際に単語が発音される音」が「自分が思っている音」とは違ったということが時々あり、それが原因で聴解できないこともあります。その「音の差」を認識するのにディクテーションが大変役に立ちました。
・育児と仕事を両立するには?
子供がある程度大きくなるまでは、やはりスローダウンせざるを得ません。私は「とにかくやめない」をモットーに、しぶとく稼働し続けてきました。最初の子供を米国で妊娠・出産した時、現地調達した妊娠と育児に関する本に首っ引きになりましたが、おかげで仕事や授業ではあまりお目にかからないような単語や表現を覚えることが出来ました。子供にハリーポッターの読み聴かせをする際、ついでに原書にも目を通してみたところ新鮮な発見が多々ありました。また、某出版社で行われた研修の通訳を務めた際には、マンガやアニメ、ゲームのキャラクターに精通していたため(笑)パニックにならずに済みました。努めて子供の手が離れた虹色の10年後をイメージしながら、その時できる仕事をするように心がけていました。下の子も中学生になった現在では、出張案件にも一部対応できるようになり、以前に比べて仕事の幅が広がりました。
・通訳者に必要な資質とは?
私見ですが5つ挙げるとすると、誠実さ、勤勉さ、好奇心、向上心、そして体力。
・通訳者を目指している方へのメッセージをお願いします。
通訳者として稼働し始めてからも、勉強、勉強の日々が続きます。確かに大変ですが、通訳をしていたからこそ経験できた素晴らしい方々との出合いや貴重な体験などもあります。また、ライフスタイルの変化に柔軟に対応出来るので、長く続けられる仕事であると実感しています。