通訳・翻訳養成学校のISSインスティテュートでは、キャリアにつながるプロの語学力を養成します。

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講師インタビュー:滝山 雅子先生(英語通訳)

 

東京校の英語通訳者養成コースをご担当いただいている通訳者の滝山雅子先生の講師インタビューをお届けします。

<滝山先生のプロフィール>
慶応義塾大学法学部卒業後、銀行に入社。2年目に転職を考え、アイ・エス・エス・インスティテュートに通い始める。負荷の少ない大学教授秘書に転職し、週1回から週2回のクラスへ移り勉強を本格化させる。自動車メーカー子会社の社内翻訳や工場通訳を経てフリーに。家族の転勤に伴う3年半の米国滞在中はUniversity of PittsburghでMA(宗教学)を取得し、帰国後に備える。自動車や保険、会計などの分野で稼働し、2016年現在は、主に医薬分野で活躍中。

・通訳者を志されたきっかけは?

 

転職のため英語力を研こうと、大学の恩師が講師をなさっていたアイ・エス・エス・インスティテュートに通い始めました。もともと英語は大好きでしたし、授業を通して通訳することの面白さや通訳者の格好良さを知りました。またアルバイトで翻訳をする機会があり、私は通訳・翻訳で食べていく!と決意するに至りました。

・先生がアイ・エス・エス・インスティテュートの生徒だった頃、スランプに陥ったことはありましたか?スランプ克服のコツをお教えください

 

実は二度「もうやめようか」と悩んだ、大きなスランプがありました。通訳2(現プロ通訳養成科3)と同時通訳1(現同時通訳科)に在籍していた時のことです。英日の通訳力が思うように伸びず、こんなことも理解出来ないなんてと落ち込むと萎縮してますます出来なくなっていく、という悪循環に陥りました。散々落ち込んだあげく、もう1学期やってみてだめだったら通訳を目指すのをあきらめようと腹をくくり、必死で勉強するうちにいつの間にか乗り越えられていました。後から振り返ると「気持ちを切り替えること」と「やれるだけのことはやったのだという安心感→自信」で抜けだせたのかなと思います。

・毎回の授業で心がけて欲しいことは何ですか?受講生のパフォーマンスで気になることや、受講生へのアドバイスをお願いします。

 

月並みですが、きちんと予習・復習をして授業に臨むこと。つまり、自分で出来る部分は自宅で済ませ、クラスでしか出来ないこと(Public Speakingの訓練、自分のパフォーマンスを客観的に評価する能力を講師のアドバイスやクラスメートのパフォーマンスを聴衆として聴くことによって身につけるなど)のために授業をフルに活用してほしいと思います。

・リスニング力を伸ばす効果的な学習法はズバリ何でしょうか?

 

とにかく毎日英語を聴くこと!私の場合、1日5分の方が1週間に1度1時間よりも効果があったと記憶しています。FEN(今のAFN)ラジオの5分間ニュースをよく聴きました。出来るだけテープに録音し、知らない単語を調べたり、理解できない/聞き取れない部分をディクテーションしたりしました。「実際に単語が発音される音」が「自分が思っている音」とは違ったということが時々あり、それが原因で聴解できないこともあります。その「音の差」を認識するのにディクテーションが大変役に立ちました。

・育児と仕事を両立するには?

 

子供がある程度大きくなるまでは、やはりスローダウンせざるを得ません。私は「とにかくやめない」をモットーに、しぶとく稼働し続けてきました。最初の子供を米国で妊娠・出産した時、現地調達した妊娠と育児に関する本に首っ引きになりましたが、おかげで仕事や授業ではあまりお目にかからないような単語や表現を覚えることが出来ました。子供にハリーポッターの読み聴かせをする際、ついでに原書にも目を通してみたところ新鮮な発見が多々ありました。また、某出版社で行われた研修の通訳を務めた際には、マンガやアニメ、ゲームのキャラクターに精通していたため(笑)パニックにならずに済みました。努めて子供の手が離れた虹色の10年後をイメージしながら、その時できる仕事をするように心がけていました。下の子も中学生になった現在では、出張案件にも一部対応できるようになり、以前に比べて仕事の幅が広がりました。

・通訳者に必要な資質とは?

 

私見ですが5つ挙げるとすると、誠実さ、勤勉さ、好奇心、向上心、そして体力。

・通訳者を目指している方へのメッセージをお願いします。

 

通訳者として稼働し始めてからも、勉強、勉強の日々が続きます。確かに大変ですが、通訳をしていたからこそ経験できた素晴らしい方々との出合いや貴重な体験などもあります。また、ライフスタイルの変化に柔軟に対応出来るので、長く続けられる仕事であると実感しています。

 

| 講師インタビュー | 10:02 |
講師インタビュー:榊原 奈津子先生(英語通訳)

 

東京校の英語通訳者養成コースをご担当いただいている通訳者の榊原奈津子先生の講師インタビューをお届けします。

<榊原先生のプロフィール>

上智大学外国語学部英語学科卒。上智大学大学院にて言語学専攻英語教授法(TESOL)修士号を取得。英国航空での7年の勤務を経て、フリーの通訳者となる。通訳学校で学んだ経験を生かし、現在はアイ・エス・エス・インスティテュート東京校の英語通訳者養成コース入門科講師。上智大学他、大学の講師も務める。講師歴は20年以上。特技は人を励ましてその気にさせること。趣味は洋裁とアメリカのドラマを観る事。


*今回は榊原先生が執筆されたエッセイを掲載いたします。
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「好きこそものの上手なれ…?」

先日見つけた中学の卒業文集に、「将来の夢はスチュワーデスと通訳」と書いてあった。そっか〜、中学生の時にもうそう思っていたんだ、とちょっと感慨深かったが、その夢は結局両方とも実現している。どうしてそう出来たのかを思い返してみると、きっと、「すっごーくなりたかったから」じゃないかと思う。

初めて通訳学校に入学を決めた時は、何とかついて行けるかなと思っていたのだが、授業が始まるとすぐ私は自分がクラスで一番出来ないことに気がついた。これはショックだった!英語で自分がペケだなんて!しかし後で考えると、これが全ての原動力になったようである。この悔しさをバネにそれから約3年半、私は生活の全てを通訳の勉強にあてた。私の人生で最も忙しく、苦しく、だけど最高に充実した約3年半だった。肉体的にはかなりきつかったが、精神的には通訳の勉強をしているということが嬉しくて仕方がなかった。

その頃私が実践していたお勧めの勉強法を一つご紹介しよう。まず自分と同レベルの友達を作り(通訳学校に通っていれば、これは簡単である)、2人で一日の目標勉強時間を決める。次にデジタル時計を買う。(私は道具から入る質(たち)である)時間の付け方だが、座って勉強したなら、それが電車の中の5分でも喫茶店での10分でも付ける。その代わりに、トイレに立ったりしたらその時間はたとえ1分でも引く。当然、「今日は4時間37分やった」となってくる。例えば1日3時間と決めた場合、友達と1日遊んでしまうと翌日のノルマは6時間となる。1週間で21時間、土日もきちんと数える。毎日の時間をきっちりノートに付けて月末には帳尻を合わせるようにするのだが、たとえ3時間でもこれが毎日となると結構きつい。だがやり遂げた時の達成感はこたえられないものがある。私は、やはり勉強は「質より量」だと思う。そして、勉強はやればやるほど、自然に効果的に出来るようになるものである。これは1人よりは2人かそれ以上で励ましあってやるほうが、圧倒的に効果的である。ちなみに当時の私のパートナーもその後プロになり、今は同じくISSの講師になっている。この方法の効果を証明するものと言えないだろうか。

今は授業の準備のため英語を見ていると、もうそれだけで嬉しい。何年もの間、考えるより先に行動して突っ走ってこられたのはやっぱり、「英語がすっごーく好きだから」ということに尽きる。私は実は編物も大好きで、メリヤスの編み目を見ていると編みたくてゾクゾクしてくる。それが高じてついに講師の資格も取ってしまった。「やりたかったのに出来なかった」というのは、本当のところは「すっごーくやりたいというわけではなかった」のではないだろうか。自分の人生を振り返ってみると、「出来なかったこと」には、やはりそれ程の情熱を持っていなかったような気がする。だから何かを実現したいとトコトン思うなら、たとえ人より時間がかかったとしてもいつか必ず出来ると私は信じている。思い続ければ、それはもう実現する力になる。"精神一到何事がならざらん." 私の座右の銘である。

 

| 講師インタビュー | 16:41 |
講師インタビュー:日野 峰子先生(英語通訳)

 

東京校英語通訳者養成コース顧問で、プロ通訳養成科2クラスをメインに同時通訳科まで幅広いレベルの授業をご担当いただいている、会議通訳者の日野峰子先生の講師インタビューをお届けします。

 

<日野先生のプロフィール>
北海道大学卒業後、すぐにフリーの通訳・翻訳者に。1988年より2年間、ISS通訳研修センター(現 アイ・エス・エス・インスティテュート)東京校同時通訳科に学び、卒業と同時に会議通訳デビュー。ハイテク・金融を始め、幅広い分野の国際会議で同時通訳者として活躍。当校での講師歴は20年以上に及ぶ。


まず、最近の日野先生の通訳のお仕事をいくつかご紹介します。
・世界医師会総会・理事会(同時)
・生物多様性ワークショップ(同時)
・ロシア特許セミナー(逐次)
・日米宇宙政策協議(同時)
・新エネルギー専門技術会議(同時)


日野先生からこのインタビューに際し、以下のコメントをいただきました。
「去年は3月の大震災の後、あらゆる会議がキャンセルとなり忙しいはずの春のシーズンが大打撃を受けたのですが、直後の3月14日に予定されていた超小型衛星シンポジウムは、海外からの参加者がすでに来日しており、すぐに帰国もままならなかったため、そのまま決行されました。ところが、その日の朝いきなり始まった計画停電で交通機関の間引き運転が行われ、日本人参加者の方が時間通りにたどり着けなかったり、常設の通訳ブースの鍵を持った管理人さんが遅れてきたり、大混乱でした。しかし、いったん会場に入られると皆さん腹をくくった様子で、何度も余震がある中、会議が淡々と進んだのが印象的でした。」


そもそも日野先生が通訳者になろうと思われたのは「アルバイトでの通訳経験が刺激的で面白かったため」だそうです。「特待生」(=入試の際の高得点者に対する受講料割引制度対象者)としてISSの同時通訳科 I (現 アイ・エス・エス・インスティテュート同時通訳科)に入学された日野先生ですが、受講開始当初は「クラスメートを見て『皆なんて上手なんだろう』とショックを受けたこともあった」そうです。


アイ・エス・エス・インスティテュートで講師をされていて、受講生のパフォーマンスで気になることや、受講生へのアドバイスを伺いました。


「きちんとした大人のpublic speakingのできない方が多いのが気になります。話し方(delivery)に関しては、注意を受けたら1度で直して欲しいですね」


先生はまた、学校などに通って専門的な通訳の訓練を受けたことがある人とそうでない人(自己流の人)とでは、実際の仕事(通訳)の現場でもパフォーマンスに差があり、その決定的な違いは「精度へのこだわりと訳出のまとまりの良さ」だと指摘されています。


「どんなタイプの人が、通訳者にむいていると思いますか?」との問いには、「バランス感覚の良い人、めげない人、周りの人達と普通のコミュニケーションができる人」とお答えいただきました。


最後に、これから通訳の勉強を始めようとしている人に日野先生からのメッセージです。


「受講料を払って通訳学校に通うのは、自分に対する投資です。最大限に生かすためには家庭でも充分時間をかけて学習・訓練ができる環境を整え、自分が主体であるという意識を常に持つようにしましょう」

 

| 講師インタビュー | 21:39 |
講師インタビュー:青山 久子先生(中国語通訳)

 

中国語通訳者養成コースをご担当いただいている青山久子先生の講師インタビューをお届けします。

<青山 久子先生のプロフィール>
東京出身。日本で4年制大学(中国文学専攻)卒業後、北京の大学に2年間留学(国際経済専攻)、帰国後
フリーランス通訳・翻訳者として活動。万博通訳コンパニオン、気象会社の気象・海象予測担当を経て現在会議通訳・放送通訳、企業向け中国語講習などに従事。気象予報士、防災士。

・プロの通訳者になるためにどのような勉強をされましたか。


中学2-3年の時にラジオ講座を聴き、大学で本格的に中国語の勉強をしました。昼間は大学の授業を受け、夕方からは専門学校で学びました。専門学校は2個所、週に計3回、内容は会話中心、和文中訳(教材は天声人語)、単語や熟語の徹底的な暗記という内容でした。大学4年から、週末に通訳スクールで通訳の訓練を受けました。当時は音声教材が限られていたので、中国映画を上映している映画館があれば出かけて行って大音響のスピーカーから流れる中国語に耳をすまし、母音や子音の微妙な発音を一つ一つ注意深く聞き、どうすれば同じような発声と発音ができるのか考えました。大学生の語学力では映画の内容を原語で理解できませんので、同じ映画を何回も見に行き、映画の音声が手に入る場合は、テープにダビングして繰り返し聴き、単語や表現を憶えました。また、教科書についている音声教材も暗記するまで繰り返しシャドウイングしました。どこに行くにも携帯音楽プレーヤーを必ず持ち歩き、中国語を聴くようにしていました。電車の中で巻舌音の練習をしていたら痴漢が逃げていったという友人もいます。

大学卒業後、中国に留学しました。当時は日本からの留学生の枠が決まっており、大学も自由に選べませんでしたが、作戦勝ちで北京の大学の国際経済専攻の枠をゲットしました。大学や専攻を選ぶ際に考えたことは、学部で中国人と一緒に授業を受けること、訛りのない北京の大学に行くことでした。今思えば、北京の大学にも中国人学生が聞き取れない程強烈な訛りの先生もいましたので、北京にこだわる必要はなかったのかも知れません。毎学期欲張って朝8時から夜10時まで授業を詰め込みました。宿舎のルームメイトは日本人以外にしてもらいました。必要に迫られて多くの専門書を読み、多くの文章を書き、貴重な経験をしました。大学教授の講義の際の言葉遣いは、ほとんどの会議通訳の場で使うべき文体として大いに役立っています。

帰国してからは通訳スクールで学びながらフリーランスの通訳として活動を始めました。最初の頃はODA等長期かつ技術的な専門性の高い内容の案件が多く、当時はインターネットもなかったので、その分野の専門書を買って読み、内容の理解に努めました。勿論単語も調べて行きますが、今のようにネットで調べたり検証したりできないので、手探り状態で会議に臨むことになります。中国の技術者が本当に使っている言葉はその場で初めて出会うことになるので、会議の中で中国側の発言者が使う表現をその場で吸収して自分のものにして行くというのが一番の勉強法だったように思います。色々な分野の内容を知っていくうちに、知識につながりができ、初めて接する分野にも入りやすくなります。また、自分で内容を理解しておくとリスニングも楽になり、センスが養われるため誤訳防止にも役立ちます。

・仕事や家庭と勉強(通訳訓練)をうまく両立させながら、継続して学習するコツはありますか。


週末に千葉県の東京湾岸を中心にボランティアで防災活動のお手伝いをさせていただいています。中学校の防災教育の支援や、各地の防災組織を対象に講話をしたり、刊行物向けに防災知識の原稿を書いたりしています。ボランティアであっても、重みは仕事と同じで、期日までに現地の災害リスクやコミュニティに合った対策など充分に調査し資料を作成する必要がありますし、原稿の締め切りもあります。仕事と両立させるためには時間を有効利用する事が大切だと思います。何日の何時までに何をしなければならないか、外出先や移動中でもできる作業は何か、家でしかできない作業は何か等計画を早めにたてておき、状況の変化に応じてその時々の優先順位に従って一つ一つ終わらせて行きます。家事は煮詰まった時の気分転換に役立ちます。常に先を読みながらうまく時間を使うこと、自分で決めた期限は自分との約束だと思って必ず守ることを心がけています。

・今でも行っている勉強法はありますか。


中国ドラマが大好きで、暇さえあれば何か見ています。ドラマは会議の原稿には出てこないような言葉の宝庫です。沢山見ているうちに背景知識が増えていたり、比喩の仕方やくだけた表現や流行語を覚えます。これは会議で話者が原稿からはずれた事を話した時や、フリーディスカッションの時の強い味方になってくれます。日本語ネイティブにとって、中国語のリスニングの難しさは永遠の課題ですが、実際にドラマ好きでリスニング力が大きく向上した通訳者は何人かいます。

また、「自主トレ」と称して、CCTVのストリーミングを利用して同時通訳の練習をしています。自分で
決めた番組を放送時間にリアルタイムで練習します。必ず録音して聞き返し、自分のパフォーマンスにツッコミを入れます。家族が聴いていると、原語に引きずられない自然な訳のヒントをくれることもあります。

・仕事の際に心がけていることを教えてください。


チームワークと気配りです。まずはパートナーに迷惑をかけないため徹底的な準備をします。現場ではどうすればパートナーが仕事をしやすいか、どこまでのサポートを必要としているのか見ながらサポートをします。勿論私もいつもパートナーに助けられています。会議では通訳者はスタッフの一員となったり、代表団の一員となったり、宴会の盛り上げ役の一端を担ったりと、その時々で立場は変わります。その場で何を必要とされているのかをくみ取り、臨機応変に行動して会議の円滑な進行に協力し、お客様に喜んで頂けるよう心がけています。

・通訳者を目指されている方に一言お願いします。


私もまだまだ修行が足りません。より良い訳を目指して皆さんと一緒に勉強できれば幸いです。どうぞ宜しくお願いいたします。

 


<関連記事>
仕事ルポ:青山久子先生(中国語通訳)

| 講師インタビュー | 10:48 |
講師インタビュー:張 意意先生(中国語ビジネスコミュニケーション)

 

中国語ビジネスコミュニケーションコースをご担当いただいている張意意先生の講師インタビューをお届けします。  

 

<張意意先生のプロフィール>

ビジネスコンサルタント。中国北京外国語学院卒業。証券会社を経て、現在、コンサルティング会社経営。現役通訳者、翻訳者としても活躍中。

 

 

北京市東城区寛街板廠胡同の四合院に生まれ育った「老北京」と思ったら、いつの間にか東京生活の方が長くなり、気持ちよく居候してきました。「棗の木の隣に山椒の木を植えれば、虫が来ないよ」と祖母に教わり、胡同を通っていた馬車の後に馬の糞を拾い肥料として庭の花たちに与えて、お手伝いをしていたことはつい昨日のようです。が、東京の生活も思い出がたくさんあります。春の浅草三社祭、夏の隅田川花火大会、秋の神宮前銀杏の並木、冬の雪がかかった富士山…下宿先の叔母さんとお神輿を担ぐ町内会の人々にお弁当を作ったり、花見の席取りをしたり…毎日充実して過ごしています。
二つの国の生活を同じように楽しめるのにはやはり言葉によるコミュニケーションがなければできない事で、小学校四年生から日本語を勉強し始め、翻訳、通訳を続けたおかげだとありがたく思っております。
 
・プロの翻訳者になるためにはどのように勉強したらよいのでしょうか。

 

翻訳の仕事には語学能力と知識が欠かせないものです。

語学が堪能だといっても、知識が浅かったりあるいは偏っていたら、仕事の内容が限られてしまいますし、博識であっても、語学力がなければ、知っている事を言葉でうまく表現できません。

 

知識には専門知識と広範囲な常識などが含まれ、常に何ごとにも興味を持ち、メモを取ったり、研究したりする必要があります。つまり、知識は勉強によって蓄積、把握することができます。

 

これに対し、語学はいくら知っていると言ってもそれは使えるとはまた違い、自分の一部になるよう日々のトレーニングが必要です。

 

「習うより、慣れろ」− 私の先生の教えです。

 

語学は知識ではなく、能力です。徹夜の短期間猛勉強より、毎日の積み重ねが大事で欠かせません。中国語では「一口吃不出个胖子」と言いますが、つまり、どんなに大きな一口でも、一口だけでは肥ることができません。毎日三食きちんとバランスよく食べることで、初めて健康な体が得られるように、いくら料理を研究しても、実際に新鮮な素材を仕入れ、丁寧に調理し、そしてゆっくり噛んで食べないと、体に役立つものにはなりません。

 

語学能力をアップすることは食料品から栄養を吸収することと似ています。

新鮮な素材は適切な教材、丁寧な調理法は先生の教え、ゆっくり噛むのはご自分の予習と復習、理解です。この一連のプロセスを踏まえ、初めて体に入り、栄養として吸収され、能力として発揮できるようになります。

 

しかも、外国語は母国語の理屈で理解できないことがたくさんあり、理解できても口で話せないと意味がありません。その言葉を使っている人々の立場に立ち、彼らのロジックに従って、物事の推理過程を体験することで、言いたいことを表すのが大事です。

 

世界共通の言語と言われるものには、音楽、芸術と数学があります。語学の勉強はこれらの勉強と共通だと思います。たとえば、音楽の場合は音符の羅列ではなく、リズム、トーン、流れを掴まなければなりません。言葉も体で感じ、耳で聞き、口で繰り返さなければなりません。繰り返し練習した結果、状況に応じて最も相応しい言葉が話せ、或いは、書けるようになります。一種の「習慣」を身に着ける訓練とも言えます。

 

さらに、外国語を操れる前提条件として、母国語をしっかり使えるように勉強しなければなりません。いくら外国語に時間を費やしても、外国語のレベルは決して母国語のレベルを超えることができません。外国語は母国語のレベルの枠内にしか伸びないなので、母国語のレベルを常に高めることは外国語能力を伸ばす土台のようなものです。なぜならば、母国語は人の思考活動の基礎、精神そのものと言っても過言ではないからです。それに対し、外国語は工具に過ぎず、どれだけ工具の役割を果たせられるかはその工具を操る精神によるものです。

 

受講生の皆さんにすすめる勉強法は?

 

ここでご紹介する勉強法は実際に今でも自分が行っている勉強法です。

それは絶えず聞くこと、読むこと。感動したフレーズや不思議に思う言葉をメモし、再度出会うことを心がけます。もちろん、メモを定期的に整理することも大事です。好きであることと習慣にすること、でなければ、続けられないかもしれませんね。今回はスペースが限られているので、詳しくは紹介できませんが、ぜひ、授業で私の体験した成功と失敗をあなたの成功の糧になるよう、一緒に翻訳を研究していきたいです。

 

では、教室でお会いしましょう。

| 講師インタビュー | 08:30 |
講師インタビュー:立花 直子先生(英語通訳)

 

英語通訳者養成コースをご担当いただいている通訳者の立花直子先生の講師インタビューをお届けします。


<立花直子先生のプロフィール>
小学校入学までをドイツ、中学・高校をアメリカで過ごす。立教大学英米文学科を卒業。99年アイ・エス・エス・インスティテュート基礎科2(現 プロ通訳養成科1)入学。在学中より外資系生保、銀行等で社内通訳・翻訳者として10年以上の経験を積む。同時通訳科を経て、現在は金融、IT、経営、スポーツ、原子力等の分野で活躍。2008年より英語通訳入門科担当。

 

・仕事や家庭と勉強(通訳訓練)をうまく両立させながら、継続して学習するコツはありますか。

 

授業の日だけ、あるいは授業前夜に集中的に勉強をするだけではなく、毎日何かしら勉強をする癖をつけてください。私たちには平等に1日24時間が与えられています。それをどれだけ有効に使うかは、自分自身の工夫次第です。通勤電車の中で(周りの乗客の迷惑にならない程度に)こっそりと、あるいは食事の支度をしながら、もしくはお風呂の中でシャドーイングをすることもできるはずです。また、常日頃から多くのことに関心を持ち、日本語の新聞はもちろんのこと、英字新聞にも目を通すことで、視野が広がり、通訳訓練等で使用される教材の理解が深まることでしょう。

 

・はじめての通訳業務はどのような内容でしたか。また仕事を終えてどのような感想をもたれましたか。

 

学生時代に国内で開催された国際大会のスタッフとしてアルバイトをしたことがきっかけでした。思いがけず案内されたのは記者会見場で、世界ランク1位の海外選手の隣に通訳として座らされたのです。自分が通訳をすることは想定していなかったので、無理!と驚いているうちに記者会見は始まってしまいました。司会者が、試合直後の選手に「お疲れ様でした」と呼びかけました。選手もベテラン記者も通訳を待っています。驚きと緊張も加わり、とても日本的なねぎらいの言葉に相当する英語が浮かばず、第一声からどう訳したら適切か悩んだ記憶が今でも残っています。

 

通訳することの難しさを痛感したデビューでした。とても苦く悔しい経験でしたが、だからこそ頼られるきちんとした通訳ができるようになりたいと強く思いました。自己流では十分なスキルが身に付かないと思い、ISSの無料公開レッスンに参加して、のちに入学を決めました。

 

・授業をしていて先生ご自身が一番やりがいを感じられるのは、どのような時ですか。

 

授業で扱う教材の内容はスピーチ、環境問題、経済、国際関係、医療など多岐にわたります。それまで知らなかった分野にも触れることで、新たに興味を広げていただければと思います。また、一つ一つの課題に丁寧に取り組み、授業で学んだ表現やスキルを各自のお仕事や日常で活かして活躍している様子をうかがった時、お力になれたとうれしく思います。授業で扱った教材を、各自で復習を重ね、推敲することで発話の主旨を正確に理解する力と表現の幅も広がります。

 

・通訳者になってよかったと思うことは何ですか。

 

通訳者として、非常に多様な出会いがあることです。アスリートから企業のトップ、政治家やノーベル賞受賞者など、いずれもそれぞれの分野でご活躍している方に接することができ、通訳者として信頼していただけたときはこの仕事を誇りに思います。社内通訳者としても、営業から商品開発やITまで社内の多くの部門の業務に通訳者として携わり、「社長でも一つの企業の中でこれほど多くの機能を俯瞰することはないだろう」と言われたこともあります。多くの出会いを通して、新たな関心分野が開拓できる可能性もありますし、向上心も掻き立てられます。

| 講師インタビュー | 09:26 |
講師インタビュー:佐藤 エミリー先生(英語翻訳)

 

英語翻訳者養成コースをご担当いただいている翻訳者の佐藤エミリー先生の講師インタビューをお届けします。  

<佐藤エミリー(Emily Shibata-Sato)先生のプロフィール>
サンフランシスコ出身で米国籍だが、人生の大半は東京・杉並で過ごす。ICUと上智大大学院でコミュニケーションを専攻。外国メディアの日本取材や日本からの情報発信を支援するフォーリン・プレスセンターに勤務後、フリーの翻訳・通訳者に。現在は日本獣医生命科学大学非常勤講師も務める。共著書に「国際交流のための英語」、訳書に「豊かさの向こうに―グローバリゼーションの暴力」(監訳)、「建築、アートがつくりだす新しい環境」(共訳)など。当校ではビジネス英訳コース等を担当。日本翻訳者協会(JAT)監事。 

 

・どのようなステップを経てプロの翻訳者になりましたか。

 

母方が日系アメリカ人で、世界中を旅行していた祖父母から各国のおみやげをもらったり話を聞いたりするなど、国際的な環境で育ちました。しかし、元々バイリンガルだったわけではありません。英語ネイティブの母は、赤ん坊の私に向かって英語と日本語を交ぜて話しかけていたのですが、私がなかなか言葉を発しなかったため、混乱しているからにちがいないと日本語だけに切り替えたからです。「英語が仕事になる!」と最初に知ったのは、アポロ11号月面着陸時の交信の同時通訳を聞いた小学生の時です。それから通信教育を受けたり、ペーパーバックを読んだりして独学し(母に教わると「こんなこともできないの!」、「わかってるってば!」となるため)、高3で英検1級を取得しました。最初めざしていたのは通訳者でしたが、1980年代半ばにパソコンをローンで購入(当時は一式100万円!)。それまで手書きだった英日翻訳と、タイプライターを使っていた日英翻訳を効率的に行えるようになったと判断し、勤めを辞めてフリーとなりました。子どもが生まれてからは、在宅での翻訳がメインとなり、あっという間に四半世紀が過ぎました。

 

・プロの翻訳者になるための資質は何だと思われますか。

 

「歩く・走る・飛ぶ」などがスポーツマンの基本であるように、「読む・書く・聞く・話す」英語力は、翻訳者にとっての基本です。TOEICで高得点を取るのは必要条件であって、十分条件ではありません。

 

翻訳者に向いていると思われるのは…

 

・とにかく文字を読むのが好きな人

・硬い内容の長い本を読み通すことができる人

・言葉にこだわる「職人」的な人

・とことん調べるのが好きな人(昔はわからない専門用語ひとつを調べるのにも、辞書を購入しなければなりませんでしたが、今はネットを駆使できます)

・毎日、コンスタントにこつこつと仕事ができる人(1日何ページ訳すとノルマを決めて、それを少しでも超えると幸福感を味わえる人)

・早く仕事ができる人(今は、短期・大量の仕事が増えており、通訳並みのスピードで訳すのが必要な場合もあります)

・翻訳とは裏方の仕事であることに耐えられる人

・PC等の技術に強い人、あるいは強い人が身近にいる人

・得意分野・専門分野をもっている人、しかし突然その分野の仕事が激減することもあるので、幅広い知識を持っていて、柔軟な対応もできる人。

 

・翻訳者を目指されている方に一言お願いします。
 
英語は現在の国際語であるため、日本でも英文を読める・読まざるを得ない人が増えています。わざわざ和訳される文章の多くは、通常の英語力では読みこなせない、難しい文章です。これまで日本人が多く手がけていた日英翻訳の分野にも、日本語のできる外国人が多く進出してきていますし、単価の安い海外に外注することも増えてきました。その意味で、翻訳者になるハードルは昔よりも高くなっているでしょう。
しかし今、文字の世界は大転換期にあります。ここ十数年のインターネットの普及で世界の情報量は爆発的に増加しました。これに伴い、新たな翻訳分野や、翻訳にプラスアルファの技能を組み合わせたような仕事も登場しています。電子書籍の時代も間近になりました。しかし今後も、実力のある人が求められ続けることに変わりはないでしょう。
私は翻訳を、現場で試行錯誤を繰り返しながら、長い時間をかけて学んできました(今も学び続けています)。この経験やスキルを後進に伝えたいと思い、当校で数年前から教えさせていただいています。受講生は、私や他の先生方が10年以上かかったことを、時間を短縮してもっと効率的に学ぶことができます。また、翻訳の勉強は孤独な作業ですが、クラスの他の受講生と励まし合い、お互いの訳文から学び合うという相乗効果も期待できるでしょう。

 

| 講師インタビュー | 15:17 |
講師インタビュー:佐久間 公美子先生(英語翻訳)


英語翻訳者養成コースをご担当いただいている映像翻訳者の佐久間公美子先生の講師インタビューをお届けします。

<佐久間先生のプロフィール>
英・ 仏映像翻訳者。大学紛争の時代に、サルトルにあこがれ京都府立大学国語科を卒業。卒業後は学ぶ場を日仏学館に移し、4年間で上級コースを修了。その後、フ ランス語の通訳・翻訳を開始。コメディー・フランセーズ劇団の来日公演用テープ製作をきっかけに映像翻訳を始める。16ミリ版映画から劇場用映画、放送用 字幕まで幅広く映像字幕を取り扱う。代表作は、コメディ・フランセーズ「ドン・ジュアン」「守銭奴」、映画「ゲバラ日記」、オペラ「マクベス」、番組 「ディスカバリー ニュース シリーズ」など多数。アイ・エス・エス・インスティテュートでは専門別翻訳科「映像字幕翻訳」クラスを担当。

・映像字幕翻訳の特徴を教えてください


通常の翻訳の場合、翻訳だけで100%の情報を伝えるように訳文を作成しますが、映像翻訳は、映像プラス翻訳文(字幕)で100%の情報を伝えますので、映像の分だけ翻訳文を控えなければなりません。また、字幕は文字数や使用できる言葉が制限されるため、スキルとして特有のテクニックが必要なうえに、原文の読解能力が厳しく問われます。また、字幕作成ソフトを使いこなして、カッティングの制作作業にも対応できることがとても重要ですね。

・どのような人が映像翻訳に向いているのでしょうか

 

集中力の持続を求められる仕事です。まず、言葉や文章の好きな人が第一の条件です。字数制限の厳しい映像字幕翻訳を行うためには、どの部分を落とし、どこを取るか、判断できる能力が必要です。さらに、文章の意味をとった後、映像と合わせるという作業も残されています。細心かつ大胆な性格が求められているといえるでしょう。また、様々な分野の映像を扱う映像字幕翻訳者は広い視野を持った人でなくては務まりません。常日頃から、いろいろなことに興味を持ち、幅広い知識を得ることを心がけましょう。

・これからの映像字幕翻訳はどのように変化していくでしょうか

 

日本では、従来からの海外コンテンツの日本語化に加えて、日本で制作された映像についての外国語の字幕制作が増えてくるでしょう。分野も、エンターテインメントだけでなく、海外からの留学生増をめざす大学や各種学校など教育機関、さらにはインバウンド需要の創出、拡大をめざす産業界への広がりが期待できます。

・映像翻訳を目指す人に向けてメッセージをお願い致します

 

映像字幕翻訳者をめざす人にとっては、今が業界参入のチャンスです。衛星放送やケーブルテレビのサービス拡大、そしてネット動画配信サービスの本格展開により、字幕化が必要なコンテンツが増大している一方で、優れた映像字幕翻訳者の数が不足しています。市場が拡大し続けている今こそ、訓練をスタートして、翻訳者デビュー、お仕事獲得をめざしてください。

映像字幕翻訳をするには、特有のテクニックの習得が必要ですが、独学で習得することは、ほぼ不可能です。ただ、以前と違って、今は学校で翻訳スキルや字幕制作テクニックを身につけることができます。さらに、学校を通じて、仕事のチャンスを掴むことも夢ではありません。

「どうしても映像字幕翻訳をやりたい」、「絶対に映像字幕翻訳者になりたい」という意欲のある方には、道は開けていますから、ぜひがんばってください。

 

| 講師インタビュー | 09:00 |
講師インタビュー:李 潔先生(中国語通訳)

 

中国語通訳者養成コースをご担当いただいている通訳者の李潔先生の講師インタビューをお届けします。

<李先生のプロフィール>
中国西安外国語大学日本語学部卒業、同大学大学院修士課程修了。6年間日本語教師として教壇に立ち、二度日本の大学に留学を経験する。来日後、企業向けの中国語講師を多数経験し、フリーランスの通訳へ。2010年上海万博日本館での勤務経験も。

・通訳者を目指したきっかけを教えてください。
 

単純に、「好き」からです。もともと外国語が大好きで、勉強するのは自分にとって全然苦にならないのです。最初は簡単に「日本語が話せるから通訳ができる」と思って通訳訓練を受けましたが、実際に訓練を受けてみると自分の想像していたものとは全く違うので大きな衝撃を受けたことを今でもはっきり覚えています。その時、「いつか先生のようなプロの通訳者になりたい」「習った通訳のテクニックをいつか現場で使いたい」と強く思い、通訳者を目指しました。


・一番印象に残っている案件は何ですか?
 

日本著名音楽家の中国公演の通訳です。その時音楽関連の通訳は初めてだったので、事前準備としてその音楽家の経歴を調べたり、代表作を実際全部聞いたりもしていました。また音楽関連の単語、楽器の名前等もたくさん調べて現場に臨みました。しかし、実際の記者会見やリハーサル、中国音楽界の方々との交流の中では聞いたことのない単語や外国の曲名などにたくさん遭遇し、自分の知識のなさには悔しかったです。5日間に及ぶハードな通訳で私は2キロも痩せましたが、現場でいろいろ勉強できたことは自分にとって貴重な糧となり、間近で聞いた数多くの名曲はかけがえのない思い出となりました。


・仕事の際に心がけていることを教えてください。
 

ISSで勉強している時、一番学んだことは「事前準備」だと思います。準備内容によって仕事の出来が半分決まると先生がいつも言っていました。時々案件によってはクライアントからもらえる情報が限られるので、どのように事前準備をするかはとても重要です。手元の資料に限らず、できるだけ多くの情報を収集したり、周辺知識を調べたりするようにしています。また、現場に行く時、予定時間より早めに行くこともいつも心がけています。事前準備をしっかりした上で、更に早めに行って現場の雰囲気に慣れるためです。クライアントから何か新しい情報や資料等が手に入ったり、または変更があったりすることもあるので、このようなことに備えるために心がけていつも早く現場に行っています。


・今でも行っている勉強法はありますか?
 

一つは単語を集めることです。毎週必ず5つ以上の新しい単語を集めて自分のパソコンの単語帳に入れる作業は一年半前からやっています。単語を集めることによって様々な分野の情報や知識を自分の中に蓄積することができ、現場で役に立つこともあります。もう一つは常に最新ニュースをチェックすることです。重大事件に関する日本と中国両方の報道を見比べて、「あっ、日本(中国)では同じ単語についてこのような言い方をするのだ」と新しい発見がたくさんあるので、すごく勉強になります。


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仕事ルポ:李潔先生
講師からの応援メッセージ:李潔先生

 

| 講師インタビュー | 12:00 |
講師インタビュー:星 智子先生(英語通訳)

 

東京校英語通訳者養成コースをご担当いただいている通訳者の星智子先生の講師インタビューをお届けします。

<星先生のプロフィール>
9歳から16歳までニュージーランドで過ごす。成城大学文芸学部英文学科を卒業後、ホテルや観光業関連の団体に勤務。社会人4年目にして初めてISSの門を叩き、会社勤めのかたわら通訳訓練を開始する。同時通訳科在籍中にOJT制度を利用しながら徐々に仕事を始め、食品会社や化学メーカー等の社内通翻訳を経てフリーランスに。現在、入門科の日英クラスを担当。

・通訳者を志されたきっかけについて教えてください。

 

社会人になって間もない頃、仕事を通じてある優秀な通訳者と知り合いました。彼女の仕事ぶりを間近にみて「通訳業」のやり甲斐について聞いたことが、この職業を志した直接のきっかけです。学生時代から「手に職をつけて長く続けられる仕事に就きたい」という漠とした希望を抱いてはいたものの、具体的なビジョンを描けずにいた中での出来事でした。今にして思えばあれは「運命の出会い」だったのかも。

・初めての通訳の仕事はいかがでしたか。

 

同時通訳科在籍中に担当講師から紹介された仕事で、政府が招聘した中東や東南アジアからの福祉の専門家10数名に同行して複数の障害者施設や作業所を訪れ、訪問先で用意されていた講義や関係者との意見交換会など様々な場面で通訳を務めるという内容でした。業務に先立って招聘各国や日本の福祉行政・制度に関わる資料を探したり、専門用語辞典を調べて語彙・表現集を作成したりと準備して臨んだものの、仕事を終えてみて自分の未熟さを思い知らされました。長時間一定レベルの集中力をキープすることの大変さ。表現力の質や訳出の精度を保つことの難しさ。また大勢を前にした時の適切な声の出し方など実務的な課題も感じました。しかし同時に「この次はもっと上手に通訳してみせる!」と闘志を燃やしたことも覚えています。

・毎回の授業で受講生に心がけて欲しい事は何ですか?

 

「聴衆が自分の訳出を聴いている」という視点を持って授業に臨んで欲しいと思います。そのためには自分の通訳を客観視し、問題点や課題を見極める必要があります。それから授業のあらゆる場面で積極性を発揮してもらいたいですね。受け身の姿勢のままでは上達速度に影響が出ます。

・自宅学習のアドバイスをお願します。

 

通訳になるための勉強というと、とかく英語を聴いたり読んだりすることに比重を置きがちですが、国語力をみがく努力も忘れないでいただきたいです。たとえば自宅で新聞を読んだりニュースを聴いたりする時も、ただ漫然と活字や音声に身をゆだねるのではなく、「誰が」「何を」「どうした」のか確認しながら行うと理解力も高まるし語彙力も養われます。日本語を正確に理解する力は必ず通訳力に反映されます。

・プロ通訳者の資質は何だと思われますか。

 

地道な努力を続ける「持久力」と、蓄えた力を通訳現場で発揮する「瞬発力」。それから失敗を引きずらない「立ち直りの早さ」でしょうか。また通訳の現場では打ち合わせ通りに物事が運ばなかったり、スケジュールが急遽変更になったりすることも少なくないので、予期せぬ展開になっても「プラス思考」で対処できる「柔軟性」が大いに求められます。

・通訳者になって良かったと思う事は何ですか?

 

精神的にも肉体的にも、ちょっとやそっとではへこたれない人間になれたことです。それと仕事を通じて色々な分野のエキスパートにお会いでき、好奇心や向学心を刺激されて次の勉強につなげられることも大きなメリットだと思います。

・通訳者を目指されている方々に一言お願します。

 

通訳訓練を始めたばかりの頃は、目標がはるか遠くに見えてしまいがちです。するべき勉強が多すぎて収拾がつかなくなり、どうして良いかわからないという相談もよく受けます。しかし焦らず、急がず、簡単にあきらめないで根気よく勉強を続けてください。毎日少しずつでも着実に訓練をつんでゆけば、ある日階段を一段上がったように今までとは違う風景が目の前に広がるはず!

 

| 講師インタビュー | 10:46 |

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