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ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第12回 : 豊田実紗先生(英語翻訳)

 

先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月の一冊は、英語翻訳者養成コース講師、豊田実紗先生ご紹介の英⇔日 プロが教える基礎からの翻訳スキル」(田辺希久子、光藤京子著、三修社、2008年)です。

 

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今から10年ほど前、翻訳学校の通信講座を受講しながら実務翻訳の勉強をしていた際、その講座の講師がおすすめしてくれたのが、この本です。英日翻訳、日英翻訳それぞれについて個々に説明がなされており、特に初心者にとって難解なことを詳しく分かり易く説明してくれています。たとえば、英日翻訳では「無生物主語」や「品詞の転換」「訳し下げ(順送り)・訳し上げ(逆送り)」などについて、そして日英翻訳では「冠詞(定冠詞・不定冠詞・無冠詞の使い分け)」や「名詞の単数形・複数形の使い方」などについて説明がなされています。簡潔で分かり易い説明、そして数多くの例文が掲載されているので、とても理解しやすく、どんどん読み進めていける本です。また後半部分では、こちらも英日・日英翻訳に分かれていますが、実際のビジネスシーンで頻繁に目にするような文書の抜粋(英日翻訳では、政治や経済分野の新聞記事・雑誌記事など、日英翻訳ではビジネスメール文や案内文、プレゼンテーション資料など)が掲載されていて、「練習問題」そして「解答」の形で掲載されているので、読者が実際に問題を解いて取り組めるようになっています。そのため、とても実践的・実用的な内容になっている本です。


当時、翻訳学校の講座で実務翻訳を勉強していた際、はじめて習うことばかりで頭がパニック状態に陥っていたとき、翻訳スキルを一日でも早く身につけられるように、この本を無我夢中で読み込んでいたことを、今でもよく覚えています。その後、いよいよ翻訳会社のトライアルを受ける際、トライアルの問題が難しくて顔面蒼白になって大慌てだったときも、この本を読んで気持ちを落ち着かせながら、手探り状態でトライアル問題に取り組みました。その際に記載した蛍光マーカーや書き込んだ文字、貼りつけた付箋の数々など、本の中身は到底、他の方々にお見せできないほど、恐ろしい状態(いわば私の汗と涙の結晶)になっています(表紙のカバーもなぜか無くて、きっと紛失してしまったのだと思います・・・)。その後、翻訳会社のトライアルに徐々に合格できるようになり、翻訳会社から依頼される仕事に没頭していたので、この本の存在すら忘れてしまっていました。ところが、今から2年ほど前に、ISSインスティテュートで講師のお仕事をさせていただくことが決まったとき、この本の存在を思い出して、本棚からゴソゴソと探し出してやっと見つけて、この本を改めて読み返してみました。そして月日が経って、契約書などの法律文書の翻訳をさせていただくことが多くなったため、この本の存在をまた忘れてしまったものの、昨年末に本棚の大掃除をしていた際に、ひょんなことからこの本を発見。これまた懐かしく、そして嬉しい再会となりました。ちょうど今、また改めて読み返して、実務翻訳の基礎を再確認しているところです。


そんなわけで、私の人生にとって大きな意味を持っている、運命の一冊といえるような不思議な存在の本です。なにか困ったとき、迷ったときに読むと心が安定する、一種の精神安定剤のようなもの。きっと生涯にわたり、私にとって大切なパートナーと呼ぶべき本となることでしょう。そのように思っています。

 

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豊田 実紗(とよた みさ)
青山学院大学大学院 法学研究科(フランス法専攻)修士課程修了。現在は、フリーランス翻訳者として、おもに法律文書・行政分野の翻訳に携わっている。ISSインスティテュートでは、法務翻訳講座やチェッカートレーニング講座を担当。

 

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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:00 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第11回 : 七海和子先生(中国語通訳)
評価:
村上 春樹,柴田 元幸
文藝春秋
¥ 799
(2000-10)


先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月の一冊は、中国語通訳者養成コース講師、七海和子先生ご紹介の翻訳夜話」(村上春樹/柴田元幸著、文春新書、2000年)です。

 

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村上春樹と柴田元幸の共著。「翻訳夜話」の名の通り、翻訳の技法について書いた本ではなく、両氏の翻訳に対する思い入れがこれでもか、これでもかと語られている肩の凝らない翻訳談義です。本書の大部分はフォーラムの質疑応答となっており、参加者はそれぞれ東京大学の柴田教室の学生、翻訳学校の生徒、すでに訳書のある翻訳家という顔ぶれなので、同じフォーラム形式とは言え質疑応答の内容はまったく違います。

 

必見は、章と章の途中に挟まれる「海彦山彦」での両氏の競訳です。レイモンド・カーヴァーとポール・オースターという作家の同じ短編小説を両氏がそれぞれに訳しています。


この競訳を十分に楽しんだ後でやってくるのが、前述のすでに訳書のある翻訳家とのフォーラム「若い翻訳者たちと」の章で、ここではこの訳を巡った質疑が展開されます。参加者が中堅の翻訳者なのでとにかく質疑応答の内容が濃い!ここではあたかも「自分もこのフォーラムに参加しているのでは」と錯覚するほどの臨場感あふれるやりとりが繰り広げられます。「僕がこれを訳したときに、ずいぶん気になったことは覚えているんだけど、人称の問題ですね、『僕』にするか『私』にするかという問題」(P.183)、「翻訳するときは一つの仮面を被るというか、ペルソナを被るみたいなところがあって」(P198)や、「偏見のある愛情」(P.203)、「音声的なリアリティーと文章的な、活字的なリアリティー」(P.212)などなど、翻訳者の頭の中を覗き見るような話題にあふれていてドキドキ感を味わえます。

 

最後に「翻訳はサービス業」だという考えをお持ちの柴田元幸氏の言葉を引用しましょう。


「読者がいないと誰も食べてくれないのに一生懸命料理作るみたいなむなしさを感じると思う。読んでくれた人たちがおもしろかったと言ってくれるのはすごく励みになります。とにかく自分は、世の中に、とまでは言わなくとも少なくともこの人たちに対しては、害悪や不快ではなく快をばらまいたんだなと思えるのは、僕にとってすごく大きな意味があります。」(P.209)「どううまくサービスをするかを考えることが、僕にとっての遊びだってことになるのかな。それはだから、翻訳でも授業でも同じですね。(P.210)」

 

言語や翻訳・通訳に関わらず、言葉と向き合うことはどういうことなのかを考えさせてくれる、私にとっては大切な1冊です。
とても気軽に読めますが、心になにかを残してくれるこの本。興味のある方は是非手にとってみてください。
続編とも言える(内容はまったく異なりますが)「翻訳夜話2  サリンジャー戦記」もあります。こちらも大変楽しい本なので、本書を読み終えたら是非。

 

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七海 和子(ななうみ かずこ)
駒澤大学文学部国文学科卒業。大学卒業後、出版社勤務を経て、日本の物流会社の北京事務所にて自動車物流、倉庫管理を担当。ISSインスティテュートで通訳訓練を受け、現在はフリーランスの通訳者・翻訳者として稼働。ISSインスティテュートでは「基礎科2」を担当

 

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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:00 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第10回 : 峰尾香里先生(英語通訳)


先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、峰尾香里先生ご紹介の「20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義」(ティナ・シーリグ著、CCCメディアハウス、2010年)です。

 

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“「不可能に思えること」に挑戦するうえで、いちばん邪魔になるのは、周りから「できるわけがない」と端から決めてかかられることです。” (第3章 「ビキニを着るか、さもなくば死か」より)

 

“周りから”を”自分自身で”に置き換えるとしっくりくる人も多いのではないでしょうか?
「自分にはできるわけがない。」と決めつけて、成長のチャンスをみすみす逃してしまった!
誰もが一度や二度は経験することと思います。

 

著者のティナ・シーリグ氏はスタンフォード大学医学部で神経科学の博士号を取得。その後同大学の工学部に属するSTVP (スタンフォード・テクノロジー・ベンチャーズ・プログラム) の責任者として、科学者や技術者に企業家精神とイノベーションを教えています。 そして自らの役目を、”企業家精神を発揮するために必要なツールを授けること”、としています。

 

神経科学を専門とする著者が、なぜ畑違いとも言える企業家精神を教えているのか?
本を手にして著者の略歴を読み、まず疑問に思いました。

 

本著を読み進めていくと、「T字型の人材」というキー・ワードが目に留まります。
著者が指導するSTVPが目指しているのは、「T字型の人材」、つまり”専門分野で深い知識を持ち、同時に企業家精神に関する幅広い知識をもって異分野の人とも積極的に連携して、アイデアを実現できる人”の育成とあります。

 

確かにどんなに素晴らしいアイデアであっても、実現できなければ単なるアイデアで終わってしまいます。チームづくり、交渉、意思決定に至るプロセスを通じて、異分野の人も巻き込みながら、一つ一つ問題を解決していく術を知っていれば、実現の可能性は格段に上がるでしょう。

 

この本に書かれている言葉の一つ一つがなぜこんなにも胸に響いてくるのか、説得力があるのか。彼女自身が垣根を越えて異分野にも果敢に挑戦し、失敗からも学び、世界は可能性に満ちている、と身をもって教えてくれているからにほかなりません。

 

ところで、本書の私にとっての一番の魅力は、豊富な事例です。著者が出した数々の課題をスタンフォード大学の学生たちが独創的な方法で解決していきます。また科学者、企業家、学者など様々な道を歩んできた人々の失敗も包み隠さず語られています。

 

一般的な啓発本を購入した際は、関心のある事例だけを読んで、なかなか読了とはいかなかったのですが、本書に関しては全ての頁を一気に読み上げました。

 

そしてこの本に大いに触発されて、大学院で経営学を学ぶ機会を得ることになりました。グループワークやチームプロジェクトで教授の出す難題にメンバーと共にわくわくしながらチャレンジしたことは良い思い出です。そこでは失敗もしましたが、本書を読んでいたおかげで、経験を積むことで問題は解決できるという気概を持ち続けることができました。

 

最後に、この本のタイトルですが、巻末に、”20歳を迎えるご子息ジョシュ君への誕生日プレゼント”とあります。出版される4年前に、16歳のジョシュ君に向けて、社会に出た時に知っていればよかったと思うことをリストにすることを思いついたそうです。

ジョシュ君は今26歳でしょうか?どんな大人に成長しているのかとても楽しみです。

 

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峰尾 香里(みねお かおり)

フリーランス会議通訳者。University of Massachusetts Lowell MBA取得。

旅行会社、厚労省の外郭団体での勤務を経て、英語通訳者として稼動開始。金融、IT、製薬の3分野で社内通翻訳者として勤務後、現在は経営戦略、国際会計基準、財務関連を中心に様々な分野で通訳者として活躍中。ISSインスティテュートでは「入門科」を担当。

 

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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:00 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第9回 : 成田あゆみ先生(英語翻訳)
評価:
服部みれい
マガジンハウス
¥ 1,512
(2016-04-28)


先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月の一冊は、英語翻訳者養成コース講師、成田あゆみ先生ご紹介の「わたしらしく働く」(服部みれい著、マガジンハウス、2016年)です。

 

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“突き抜けた人”の駆け出し時代の話は、どんな分野でも面白いです。
それがものを書く人の話なら、翻訳者にとっては実践的でもあります。
最近読んだなかから、そんな本を1冊紹介します。

 

『わたしらしく働く』(服部みれい著、マガジンハウス、2016年)
服部みれいさんは『マーマーマガジン』という雑誌を立ち上げた方。
いまの40代を代表する編集者でありエッセイストだと、個人的には思います。
そんな彼女が、これまでの仕事人生を振り返ったのが本書です。

 

題名だけ見ると、ゆる〜く働くことを推しているように見えますが、
1ページも読めばすぐに、猛烈という言葉では足りないほどの怒濤の勢いで量をこなすことで、仕事力を高めた方だと分かります。私も無茶をしましたがここまでは・・・
「わたしらしく」とは、膨大な仕事量を、誠意をもって全力でこなし、時に手痛い失敗もして、時に勇気をもって「やります」と一歩を踏み出し、落ちては這い上がって、その先に見えてくるものだと教えられます。
また「実践編」は、転身をはかろうとする人は必読。納得できることばかりです。

 

文章力の高め方の話も、参考になります。というか、この方の文体自体が参考になります。
『マーマーマガジン』を立ち上げるなかで、ウェブに適した軽妙な文体を意識的に作っていった話。
あるいは、憧れの雑誌『オリーブ』に原稿を書けることになった時、『オリーブ』を手に入るだけ買い直し、その文体をできる限り真似して書いた話。
どれも、これから文体を作っていくことになる翻訳学習者の方にとって、ヒントになると思います。
(『オリーブ』は同世代の私にとっても憧れの雑誌でした。そういえば、翻訳スクールの存在を初めて知ったのは●年前、大学2年の時に読んだ『オリーブ』の翻訳家特集でした。『オリーブ』のお洒落な雰囲気もあって、そこに出ていた翻訳者の人は実にキラキラしていました。あれと今の自分は、ビジュアル的に相当かけ離れているのですが!)

 

話を『マーマーマガジン』に戻すと、同誌で奨励されている冷え取り健康法、私は(ゆるく)実践しています。
足が温かいと落ち着いて集中できて、疲れにくくなりますし、ふくらはぎを温めると訳語が出やすくなる(?!) のでお勧めです。

 

そして本書には、駆け出し時代に大失敗をするも、通訳の人に救ってもらったエピソードが登場します。
この通訳の人がくぐってきた修羅場の数々、圧倒的な実力、その陰で失ってきたもの。それをすべて引き受けた上での後進への愛…いろんなことが透けて見える話で、電車の中で泣けて困りました(泣き笑い)。

 

仕事人生の次の一歩に悩んでいる方、フリーランスの心構えを知りたい方、愛にあふれた励ましがほしい方にお勧めです!

 

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成田 あゆみ(なりた あゆみ)
フリーランス英語翻訳者。アイ・エス・エス・インスティテュートでは、 「6回集中特訓・和訳/英訳に役立つ英文読解ゼミ」「総合翻訳科・本科レベル」を担当。

 

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 丸成田あゆみ先生が担当される ウィンターコースのご案内丸
 

  四葉のクローバー 短期コース2017ウィンター
     [英語]  6回集中特訓・和訳/英訳に役立つ英文読解ゼミ 1

       [東京校] 2/18, 25, 3/4, 11, 18, 25(土)16:00-18:00(全6回)
       [インターネット] 2/19〜 4/25 ※スマートフォン、タブレット端末対応 

 

     [英語]  実務で役立つ 英→日翻訳プロセス解析

       [東京校] 3/12, 26(日)13:00-15:00(全2回)
       [インターネット] 3/13〜 4/5 ※スマートフォン、タブレット端末対応 


   ※インターネットクラスの授業動画は通学クラスの方もご視聴いただけます。
      復習や欠席された際の補講用としてご利用ください。

 

  短期コース2017ウィンターは入学金・レベルチェックテストが不要です。
  受講特典あり!クラスの詳細、お申込みはこちらから:
  https://www.issnet.co.jp/courses/e_t_short.html

 

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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:00 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第8回 : 椙田雅美先生(中国語翻訳)

 

小公女-1.jpg

    

ポプラ社 (1964/2/5)

ISBN-10: 4591002810 / ISBN-13: 978-4591002810

 

 

先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月の一冊は、中国語翻訳者養成コース講師、椙田雅美先生ご紹介の「小公女」(フランシス・ホジソン・バーネット作、山主敏子編著)です。

 

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いまや「昭和時代」と言われることも珍しくないほど、昭和は昔のことになりました。一応昭和生まれの私も、昭和の記憶は定かではありませんが、昭和の雑貨、昭和の歌謡曲、昭和の料理…と、「昭和感」の漂うものに魅力を感じます。なかでも私が大好きな「昭和の児童書」について、今回ご紹介させていただきます。


児童書とは0歳から12歳くらいまでのこどもを対象に書かれた文学作品で、広義には絵本や、親に読んでもらうことを前提とした本も含まれますが、一般的なイメージとしては小学生が読む本でしょう。定義はさておき、日本で小学生の数が一番多かった時代は、戦後の第1次ベビーブーム世代(団塊世代)が小学生だった昭和30年代初めから、第2次ベビーブーム世代が小学生だった昭和50年代の半ばまでです。子どもの数は児童書の発行部数に直結しますから、同じ時期が児童書の全盛期だったと言えるでしょう。その後は少子化によって子どもが減少する一方で、昭和37年(1952年)のピーク時には1337万人いた小学生は今年、平成28年(2016年)には639万人と、半分以下になってしまいました。


私が子どもの頃、毎月一回駅前の大きな書店で、帰宅する父と待ち合わせ、本を一冊だけ買ってもらっていました。まだネット書店など存在せず、どこの駅前にも書店がありました。店頭のスタンド棚には『小学1年生』から『小学6年生』まで学習雑誌が陳列、平積みされ、店内の本棚には『世界こども名作全集』、『少年少女ものがたり百科』など、名作文学や知識・教養を児童向けに書き改めたものがずらりと並び、『少年探偵シリーズ』、『怪盗ルパンシリーズ』など、特定作品のシリーズだけでも何十冊とありました。


「字の本」であれば値段は問わないが、買ってもらえるのは一冊だけでした。お財布の都合もあるでしょうが、本を選ぶという経験を積ませたかったのでしょう。たくさんの本の中から「今月の一冊」を選ぶため、待ち合わせ時間よりずっと早く書店へ行って、あれこれ見比べたものです。それでもいざ読み始めると難しかったり、つまらなかったりして、途中で放り出すこともありましたが、最後まできちんと読んだことを確認するまで、父は次の本を買ってくれませんでした。


子どもの頃大切に読んだ本は、誰もが大人になっても覚えているものです。1枚1枚わくわくしながらページをめくり、1文字1文字しっかりと字を追った記憶、忘れられない主人公の言葉、そして挿絵…。近年、思い出深い本を図書館で借りたり、古書店やネットオークションで入手したりして読み直すのが楽しみになりました。


仕事柄、世界名作の翻訳、改編ものに興味が有りますが、再び読んでみてまず驚いたことは、昭和の児童書に書かれた日本語の美しさです。子ども向けにわかりやすく平易な文章構成ですが、ひとつひとつの文は格調高く、ひらがなが多いほかは大人が読む文章と変わりません。多くは、高名な文学者、大人が読む翻訳書も多数手がけている翻訳家の筆によるものです。挿絵も美しく、画才のない私は上手く表現できませんが、作家の個性を前面に押し出すような絵ではありません。むしろ中庸で、あえてイメージを固定しないような透明感のある絵なのです。だからこそ子どもも想像をめぐらせ、自分なりに小公女セーラが住む屋根裏部屋や、マルコが歩くアンデス高原を思い描き、胸に焼き付けることが出来るのでしょう。自分で思い描いた絵に優る挿絵はありません。


ISSの友人で、出版社に勤務する人に聞くところでは、一昔前の児童書はまさにドル箱で、シリーズ化された作品の関係者はその仕事だけで家が建ったとか。良い仕事をするためにはやはりお金と時間も必要です。子どもが多く、安定した売上げが約束されていればこそ、一冊の子ども向けの本に一流の作者、訳者が取り組み、スタッフもじっくり時間をかけて作品を完成させることが出来たのだと思います。でもお金と時間だけではこんなに美しい文章は生まれません。良い作品を子どもに届けたいという熱意が、古びた本から伝わってきます。


別の中国語仲間で、現在は校閲者をしている友人に娘さんがいるのですが、私は毎年クリスマスに本をプレゼントしています。彼女が小学生になって、世界の名作を贈ろうと思ったのですが、書店に行ってまずは児童書の少なさに驚き、次に名作ものの挿絵のほとんどが、アニメやマンガ風になっていることに驚きました。絵の個性が強すぎて、子どもが想像を膨らませる余地がなさそうです。読んでみると文章もマンガのセリフかケータイ小説のように、会話文、擬音が多用され、ブツブツと途切れた文章が目立ちます。


現在でも複数の出版社から発行されている『小公女』を贈ろうと、何冊か立ち読みしてみましたが、いずれの本にも魅力を感じませんでした。


そこで、自分が読んだ『小公女』をネットで検索してみると、ポプラ社で昭和39年(1964年)から昭和62年(1987年)頃まで世界名作童話全集の24巻として発行されていたものだとわかりました。(現在は作者も挿絵も変わっています)まさに昭和の児童書全盛期に発売されていた本なので、この本で『小公女』を知った子どもも多かったのではないかと思います。幸い手の届く値段で状態の良い中古本が見つかりました。同シリーズの『小公子』も自分が読んだものだったので同時に入手し、古い本だけどぜひ読んで欲しいと手紙を添えて、ラッピングして娘さんに贈りました


幼児期からゲーム機を操るイマドキのお子さんに、昭和の児童書のいささか悠長なところもある文章を気に入ってもらえたかどうかは分かりませんが、母であり校閲者である友人からは読んだあと「昔の翻訳者はいい仕事してるよね!」とメールをもらいました。
中日翻訳の受講生の方からしばしば「日本語力を高めるにはどうしたらよいか」との質問を受けますが、まずは正しく美しい日本語にふれることだと思います。日本語の奥深さに埋もれてしまいそうになった時、良き時代の児童書を読んで、わかりやすく美しい日本語にふれてみるのも良いかも知れません。

 

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椙田 雅美(すぎた まさみ)
東京都出身、中央大学大学院総合政策研究科博士前期課程修了。専攻は人口政策。ISSインスティテュートで学び、現在は中日翻訳者としての活動をメインに、ISSインスティテュート及び日中学院で講師を務める。ISSインスティテュートでは中国語翻訳者養成コース「本科2(中日翻訳)」クラス担当。訳書に「中国農民調査」(文藝春秋)、「発禁『中国農民調査』抹殺裁判」(朝日新聞出版)など。

 

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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 11:00 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第7回 : 柴原智幸先生(英語通訳)

 

先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、柴原智幸先生ご紹介の決断力」(羽生善治著、角川oneテーマ21です。

 

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どんな本を読むにしても、肝心なのは自分の中にある「問い」だと思います。早速ですが、以下の動画をご覧ください。


https://www.youtube.com/watch?v=ubNF9QNEQLA


いかがでしょうか。ついつい英語の聞き取りと謎解き(?)の方に集中してしまったのではないでしょうか?しかし、最初からタネを知っていれば、「では、それを見つけてやろう」と集中してみたはず。見返すと、動画は全く違って見えてくるはずです。動画そのものは何ら変化していないにも関わらず。


ここなのですね、ポイントは。本を読むときにも、「自分は何が知りたいのか」という点を明確にしておくと、引っかかって来る情報が違ってきます。


私が10年ほど前に羽生善治さん「決断力」(角川oneテーマ21)を読んだ時は、「通訳者として生きるとはどういうことなのか」「プロとして生きるとはどういうことなのか」ということをずっと考えていました。すると、そのような「問い」に対応する部分が、いろいろと引っかかって来るのです。


「決断力」は、通訳者について書かれた本でもなければ、プロ論に特化した1冊でもありません。しかし、自分の中の「問い」が明確であれば、いろいろなことが引き出せることを、身をもって体験しました。これは、対象がマンガであれ新聞であれ、またはYoutubeで見た動画であれ、多分なんでも一緒だったと思います。


以下、私が読書ノートに抜き書きしたものの一部をご紹介します。

 

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私は人間には二通りあると思っている。不利な状況を喜べる人間と、喜べない人間だ。(p.19)

 

お互いに日本語をしゃべっているから意思の疎通ができている、というのは錯覚だ。(中略)どの世界でも、本気で、本音で話し合う機会を持つことは、物事を前に進めるための基本ではないだろうか。(p.151)

 

報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続してやるのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。(pp.171-172)

 

どうしても強くなりたい、前進したい、そういう向上心が大本にあり、自分の頭で真剣に考え、ここだけはどうしてもわからない、解決の道が見いだせないというのであれば、師匠や先輩に相談することは決して悪くないと思っている。だが、そうではなく、受け身の姿勢だけでただ教わるというのでは、集中力や思考力、気力といった勝負に必要な総合的な力を身につけることはできないだろう。要は本人がどういう姿勢で教わるかが大事だと思っている。(p.177)

 

確かに、プロになれば趣味としての楽しさがなくなり、当然、苦しみも出てくる。だが、趣味としていたら多分知ることのなかった将棋の奥深さを味わえるということもある。(p.188)

 

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「問い」と言われても、そうすぐには持てない……という方も、また多いのではと思います。ゼロからいきなり「問い」は生まれるのか、と言ったらそれは難しいですよね。まずはいろいろな考えに触れてみる、つまり大量にインプットしてみることから始まるのではないでしょうか。


ISSライブラリーが始まってから半年、皆さんは紹介された本のうち何冊を読んだでしょうか?読まないまでも入手したでしょうか?ちなみに私は、徳久先生がご紹介なさっていた「資料日本英学史 2 英語教育論争史」が届くのを待っているところです。


1冊も入手していないし、読んでもいない、という方。厳しいことを申し上げるようですが、それは「問いが持てない」のではなく、「問いを持とうとしていない」のではないでしょうか。まず、そこから変えて行きませんか?


さあ、どんな本でも良いです。まずはページをめくってみましょう。手元に本がなければ、部屋のドアを開けて、本を買いに行きましょう。


現在をちょっと変化させることで、未来が大きく変わってくるはずですよ。

 

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柴原 智幸(しばはら ともゆき)

上智大学外国語学部英語学科卒業後、英会話講師、進学塾講師、フリーランス通訳者を経て、英国University of Bath大学院留学。同大学院通訳翻訳コース修士課程修了後、BBC日本語部に放送通訳者として入社。現在は大学、通訳学校、専門学校で講師を務める傍ら、NHK放送通訳者・映像翻訳者として活躍中。2011年4月よりNHKラジオ講座「攻略!英語リスニング」講師。

 

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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:00 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第6回 : 西山耕司先生(英語翻訳)


先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月は、英語翻訳者養成コース講師、西山耕司先生ご紹介の子供たちよ、英語の前に国語を勉強せよ。(プレジデントFamily、2013年7月号、内田樹氏寄稿)、2005年スタンフォード大学での卒業生に送るスピーチ(スティーブ・ジョブズ)です。

 

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英語翻訳コース講師の西山です。書籍ではないのですが大好きな読み物が2点あります。


プレジデントFamily、2013年7月号内田樹氏が寄せた子供たちよ、英語の前に国語を勉強せよ。は、学習機能を充実させて加速度的に性能が向上している人工知能による通訳や翻訳の本格的な実用がいよいよ現実のものとして見えてきた今になって読み返すと、母国語の大事さ、それを踏まえた上で外国語を学ぶということの意義を見つめ直す良いきっかけになると思います。インターネット上で簡単に閲覧できますので一読をお奨めします。私の友人のタクシー運転手はみな完全自動運転システムの実用に対して否定的な見方をしています。無理もありませんが、悲しい事故が無くなり世の中が便利になるのは良いことです。同じように、病人が少なくなると困ると思っているお医者さんも中にはいるかもしれませんが、医療技術や医薬品の更なる進歩は大いに歓迎されるべきでしょう。自分たちはどうでしょうか?世界中の誰もが母国語のみで自分の専門分野を掘り下げ、他のどの国の人たちとももっと簡単に知識を分け合えて協力できるようになればこれほどすばらしくまた公平な世の中はないと私は思います。そんな社会の実現の為にこんな私でもその知識や経験が何らかの形で役立てばうれしいです。


その後? 選り好みしなければ他になにか仕事はあるものです。職業に貴賎無し。なんでもやる覚悟があれば別に怖くありません。


話を戻します。他国やその文化にあこがれる人はいつの時代でもどんな環境下でもやはり熱心に外国語学習を続けるはずです。損得勘定抜きで好きなことをとにかく一生懸命続ければどこかできっと(時には思いもよらぬ形で)「ああ、続けていて本当によかった」と思える瞬間が来るはずです。それを予感させてくれるのが有名なスティーブ・ジョブズ氏2005年スタンフォード大学での卒業生に送るスピーチです。文字に起こしたものを繰り返し音読すると勇気がわきます。英語スピーキングのトレーニングもなりますのでこちらもお奨めです。

 

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西山 耕司(にしやま こうじ)
メーカーでの営業職を経て、現在は社内通訳・翻訳者として外資系企業に勤務。2009年からは、フリーランスとしても稼働開始。通訳・翻訳者として豊富なキャリアを持つ。ISSインスティテュートのレギュラーコースでは「総合翻訳・本科」「ビジネス英訳・本科」など、上級レベルのクラスを担当し、プロ翻訳者の育成に力を注いでいる。

 

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 丸西山耕司先生が担当される ウィンターコースのご案内丸

 

  四葉のクローバー 短期コース2017ウィンター

     [英語]  実務で役立つ 日→英翻訳プロセス解析

       [東京校] 3/5, 19(日)13:00-15:00(全2回)
       [インターネット] 3/6〜 3/29 ※スマートフォン、タブレット端末対応 


   ※インターネットクラスの授業動画は通学クラスの方もご視聴いただけます。
      復習や欠席された際の補講用としてご利用ください。

 

  短期コース2017ウィンターは入学金・レベルチェックテストが不要です。
  受講特典あり!クラスの詳細、お申込みはこちらから:
  https://www.issnet.co.jp/courses/e_t_short.html#feature10

 

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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:00 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第5回 : 徳久圭先生(中国語通訳)


先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月の一冊は、中国語通訳者養成コース講師、徳久圭先生ご紹介の「資料日本英学史2 英語教育論争史」(川澄哲夫著、大修館書店)です。

 

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明治以降の英語教育に関する文章を広範に集めた本です。英語のみならず、どの言語の学習者や通訳者・翻訳者にとっても示唆に富む文章が多いのでお勧めです。ネットの古本屋で、現在でも購入可能です。


目次を眺めるだけでもわくわくします。「英語を日本の国語に」とした森有禮の書簡に始まり、森鷗外、夏目漱石、芥川龍之介、柳田國男、坂口安吾、菊池寛らが外語を論じています。戦後まもなく「フランス語を国語に」と主張した志賀直哉も、漢字廃止を唱えた尾崎行雄もいます。

 
英文学者の中野好夫は、昭和23年に『英語を学ぶ人々のために』という文章を書いています。


「語学が少しできると、なにかそれだけ他人より偉いと思うような錯覚がある。くだらない知的虚栄心である」


正直に告白すれば、私にもこうした虚栄心はあると思います。きっと外語に対するコンプレックスの裏返しとして、虚栄心なり優越感なりが生まれるのでしょう。でも語学は、やればやるほどその深さが実感されて、「私は〇〇語ができる」などと軽々しく言えなくなるものです。「ネイティブ並み」とか「ペラペラ」という言葉も使えなくなります。


中野は「外国語の学習は、なにも日本人全体を上手な通訳者にするためにあるのではない」と書き、そのあとにこう続けます。


「それではなんだ。それは諸君の物を見る眼を弘め、物の考え方を日本という小さな部屋だけに閉じ込めないで、世界の立場からするようになる助けになるから重要なのだ。諸君が、上手な通訳になるのもよい。本国人と区別のつかないほどの英語の書き手になるのもよい。万巻の知識をためこむもよい。それぞれ実際上の利益はむろんである。しかし結局の目標は、世界的な物の見方、つまり世界人をつくることにあるのである」


敗戦を踏まえ、英語に携わる者として戦争を避けられなかったという自責の念があふれています。ここに言う「世界的な物の見方」とは、英語的な世界を通して、一般の日本人以上に日本を見つめる役割を己に課すということなのです。


「とにかく数からいえば、これだけ存在する英語関係者が、もう少しイギリスを知り、アメリカを究め、今少し自分の首や地位への考慮をはなれて物を言つていたら、よし日本の運命を逆転させる力はなかつたにせよ、もう少しは今にして後味のよい結果になつていたはずだ」


ここで語られているのは英語関係者ですが、私は一人の中国語関係者として、遠い過去についてというより、近くの未来に対する警句のように読めます。その上で中野は、これから英語を学ぼうとする戦後間もない頃の若い人たちにこう希望を述べます。


「英語を話すのに上手なほどよい。書くのも上手なら上手ほどよい。読むのも確かなら確かなほどよい。だが、忘れてはならないのは、それらのもう一つ背後にあつて、そうした才能を生かす一つの精神だ。だからどうかこれからの諸君は、英語を勉強して、流石に英語をやつた人の考えは違う、視野が広くて、人間に芯があつて、どこか頼もしいと、そのあるところ、あるところで、小さいながらも、日本の進む、世界の進む正しい道で、それぞれ生きた人になつているような人になつてもらいたい」


そして最後に、中野はこう述べて締めくくります。


「語学の勉強というものは、どうしたものかよくよく人間の胆を抜いてしまうようにできている妙な魔力があるらしい。よくよく警戒してもらいたい」


この資料集は「英語教育論争史」を扱っており、例えば現在の「グローバル化」に対応した早期英語教育をめぐる議論についても、通底する論争が明治以降めんめんと繰り返されてきたことが分かります。日本人は英語をはじめとする語学にどれだけ胆を抜かれてきたのでしょうね。

 

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徳久 圭(とくひさ けい)

武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。現在ISSインスティテュート東京校中国語通訳者養成コース通訳科1クラスを担当。
ブログ:インタプリタかなくぎ流 http://qianchong.hatenablog.com/
ツイッター:@QianChong

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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:00 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第4回 : 曽根和子先生(英語通訳)


先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、曽根和子先生ご紹介の「日本人なら必ず誤訳する英文」(越前敏弥氏著、ディスカヴァー携書、2013年)です。

 

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I waited for fifteen minutes-----they seemed as many hours to me.

 

「あなたはこれをどう訳しますか?」

 

越前敏弥氏の著書「日本人なら必ず誤訳する英文」 (ディスカヴァー携書) の表紙に書かれている英文です。

 

越前氏は、大ベストセラーとなった「ダ・ヴィンチ・コード」をはじめとするダン・ブラウンの小説やエラリー・クイーンなどのミステリー小説の翻訳家として良く知られており、予備校や翻訳学校などで講師を務められた経験もあります。この本は、日本人なら誤訳するだろうと越前氏が考えた英文が、まず問題として提示され、その後、解説と共に、答えとして訳例が紹介されるという構成になっており、英文は難易度別に「基礎編」「難問編」「超難問編」に分かれています。

 

書店で、この本を最初に見た時、目についたのが、本の帯のキャッチコピー「英語自慢の鼻をへし折る!」でした。私は、別に「私は英語ができる」と自慢しているわけではありませんが、そのキャッチコピーに惹かれて、ちょっと立ち読みをしてみたところ、「基礎編」とされている英文でも「あれ?」と迷い、恥ずかしながら間違ってしまったものが結構あって、少々意気消沈しました。

 

そこで、この本を購入して、問題に挑戦してみました。提示されている例文は、あえて間違いを誘う「ひっかけ」の文が多く、実際に翻訳が必要な場面では使われないだろうであろう表現が多いので、本格的に翻訳の勉強をするための参考書としては、ちょっと物足りないとは思いますが、一見簡単に思える英文でも、その構造を正しく理解していないと大きな間違いにつながる事を痛感する面白い本です。

 

翻訳や通訳をする時、最初の作業は「原文」や「話者のメッセージ」を正確に解釈する事です。その際、文法に基づいて原文やメッセージを正しく分析できなければ、次の段階(翻訳・通訳)に進んでも、誤訳になるだけです。越前氏は、この本の中で、「結局英語を正しく理解しているか否かを知るには、訳してみる以外に方法はない」「少なくとも日本語を母語として育った人間について言えば、おそらく正しく訳せないものは絶対に理解できていない」と述べています。

 

この本で問題として提示されている英文は短い文で、使われている単語も難解なものはありません。解答は英文法に基づいて分かりやすく解説がなされており、なぜ誤訳してしまうのかという落とし穴についても丁寧に説明されています。この本は新書版で、それほど重くありませんから、机に座って辞書を使いながら集中的に勉強する時間がない人でも、持ち歩いて時間が空いた時などに、英語のクイズ感覚で、気軽に問題を解いてみるという使い方もできます。また電子書籍版も出ていますので、そちらをダウンロードしても良いでしょう。

 

「分かったと思っても、本当は分かっていないかもしれない」という謙虚さが大切だということを教えてくれる一冊です。


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曽根 和子(そね かずこ)
慶応義塾大学文学部卒業。神奈川県の英語教諭を経て、オーストラリア・クィーンズランド大学大学院にて英日通訳・翻訳の修士号を取得。帰国後フリーの通訳者となり、現在、NHK衛星放送の放送通訳、会議通訳者として活躍中。アイ・エス・エス・インスティテュートでは主に上級クラスの指導に当たるとともに、複数の大学でも通訳・翻訳の講座を担当。

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 丸曽根和子先生が担当される ウィンターコースのご案内丸
 

  四葉のクローバー 短期コース2017ウィンター
     [英語] 「横浜校限定 社内通訳 〜逐次通訳編〜

       [横浜校A]  2/5, 12, 19, 26(日)14:30-16:30(全4回)

       [横浜校B]  3/11(土)10:30-15:30(休憩1時間)(1回)

 

  短期コース2017ウィンターは入学金・レベルチェックテストが不要です。
  受講特典あり!クラスの詳細、お申込みはこちらから:
  https://www.issnet.co.jp/courses/e_i_short.html#feature5

 

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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:00 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第3回 : 山口朋子先生(英語翻訳)
評価:
中原 道喜
聖文新社
¥ 1,901
(2008-06)


先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー
プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。

今月の一冊は、英語翻訳者養成コース講師、山口朋子先生ご紹介の「マスター英文法」(中原道喜著、聖文新社)です。
 

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「私、文法苦手なんです・・・」、「正直、文法嫌いです!」 ― 当校で担当させていただくクラス受講生の方々がこのようにおっしゃるのを耳にすることがあります。そんな時、とても悲しい気分になると同時に、「文法にもっと興味を持って、好きになって欲しい。授業を通じて好きになってもらいたい!」という欲望を燃え上がらせたりします(笑)。翻訳業務に携わる身として常に痛感している事。それは文法知識の重要性です。はっきり申し上げると、文法を制することなく翻訳を手掛けることはまず不可能であると思います。ですから授業でもとらえにくい構文、複雑な構造など皆さんがつまずきやすいポイントを中心に、文法事項を「パズルを解くように」システマティックに分析し、分かりづらい点やモヤモヤしていた点について筋道を立てて考え、理解し納得してもらえるように努めています。こんな風に申し上げると何だか偉そうですが、実際翻訳は「何となく」出来るものではなく、正確な構造分析がまず基本となり、適切な表現・忠実な再現を目指すものであり、正しい文法知識を身につけることが必要不可欠だと思うのです。
 

授業でも申し上げていることですが、私はいわゆる文法大好き人間です。そうなったのは、高校時代の、ある文法書との出会いによる所が大きいと思います。私が通っていた高校は当時いわゆる進学校と言われるようなスパルタ教育校で、各学期末試験の他に毎月、超難問ばかりの実力テストなるものが行われ、その都度学年順位が発表され、結果によって各科目レベル別にクラス分けをして授業を行うというシステムを導入していました。英語についてはもともと好きでしたが、受験に向け、とにかく最上位クラスにとどまりたい一心でひたすら頑張っていました。
 

その際にクラス指定で購入が義務付けられていたのが『マスター英文法』という厚さ3cm程の文法書。各ページに注意書き・ミニ知識記載がたくさんあり、その情報は多くの人には「重箱の隅をつつく」ような細か過ぎる内容と感じられるかもしれず、いわゆる小難しい文法書といった印象を生みがちで、授業でも文法書としてはより一般的な『ロイヤル英文法』などをおすすめしているのですが、しかししかし!その注記には日本人が間違えやすい点や様々な興味深い解説などが含まれていて、何だかそのマニアックさに感動した覚えがあります(私が持っていたのは改定前バージョンで、現在では少し解釈が古くなっているなと感じられる部分もあるため、最新版ではその点より内容が充実しているのではないかと思うのですが)。授業ではこの文法書の隅から隅までが試験範囲で、とにかく読み込んで覚えろ!そしてそこから応用力を付けるべく膨大な量の問題をこなせ!という感じで、それはもう必死に勉強した記憶があります。でもその頃必死に学習したことで文法力の基礎をしっかり固めることができた、と今では感謝の気持ちでいっぱいです。間違いなく、自分にとって相性の良い「バイブル」としてこの文法書と出会えたことで、私は今こうして自分の力を信じ、翻訳その他英語を使ったお仕事に携わることができているのだと思います。地道に継続する努力、それがいつの間にか強固な基盤構築につながるということが自然に身を以って体験できた、そんなきっかけとなった一冊です。
 

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山口 朋子(やまぐち ともこ)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。外資系メーカー勤務を経た後、フレグランス業界へと活動の場を移し、マーケティング他業務に携わる。その後、米国カリフォルニア州立大学大学院にてTESOL(英語教育法) 修士号を取得。日本帰国後、アイ・エス・エス・インスティテュート英語翻訳者養成コースの受講を経て実務翻訳の道へ。現在は、美容・医療・飲食業界関連、その他雑誌・ホームページ記事やエッセイなどの分野から、会社規約、研修マニュアル、トレンドレポート他各種報告書などのビジネス文書等に至るまで様々な分野の翻訳を手掛けながら、医大の医学英語講師、そして同校の「総合翻訳・基礎科」の講師を務めている。

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 丸山口朋子先生が担当される ウィンターコースのご案内丸
 

  四葉のクローバー 短期コース2017ウィンター
     [英語] 意訳に挑戦!読み手の心を動かす訳文の作り方

       [東京校] 2/21, 28(火)19:00-21:00(全2回)
       [インターネット] 2/22〜 3/10 ※スマートフォン、タブレット端末対応

 

   ※インターネットクラスの授業動画は通学クラスの方もご視聴いただけます。
      復習や欠席された際の補講用としてご利用ください。

 

  短期コース2017ウィンターは入学金・レベルチェックテストが不要です。
  受講特典あり!クラスの詳細、お申込みはこちらから:
  https://www.issnet.co.jp/courses/e_t_short.html#feature12

 

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