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『中国語表現コラム〜更上一層楼(更に上へと)』 第55回 「中華料理のメニューを見ながら覚える動詞」

ネイティブがよく使う自然な中国語表現を毎月テーマ毎にご紹介する「中国語表現コラム〜更上一層楼(更に上へと)」。中国語ビジネスコミュニケーションコースご担当の張意意先生に執筆していただいています。どうぞお楽しみください。

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「動詞」を正確に使えば、ものごとがより具体的にイメージできて、文が生き生きとしたものになります。そこで、今回は中華料理のメニューによくでてくる動詞を一緒にみてみたいと思います。シェフの動きを思い浮かべながら、料理を注文する時点から美味しさを感じましょう。

 

炒める、蒸す、煮るなど、日本語と同じ漢字を使って意味も同じものもありますが、ここでは、日本語にない言い方の一部を見てみましょう。

 

冰镇啤酒(冷えたビール)、は食べ物や飲み物を冷蔵庫に入れるか、氷と一緒において冷やすこと。
鲜榨果汁(搾りたてジュース)、は搾ること。
沏一壶茶(熱湯でお茶をいれる)、は熱湯を注いでお茶や砂糖水を作ること。「冲一壶茶」「泡一壶茶」も同じ。
现磨咖啡(挽き立てコーヒー)、は摩擦、潰す、研磨の意味。
什锦拼盘(盛り合わせ)、は合わせること、ちなみに、パズルは「拼图」、パッチワークは「拼布」。
凉拌黄瓜(キュウリの和え物)、は和える、かき混ぜること。
碳烤叉烧(炭火焼チャーシュー)、は炙ること。
红烧肉(豚肉の角煮)、は焼くこと。「烧烤(バーベキュー)」のように似た意味の「」と一緒に使うこともある。
香煎黄鱼(揚げキグチ)、は少量の油でじっくり揚げること。
炸鸡块(唐揚げ)、は大量の油で強火で揚げること。
干煸四季豆(インゲン豆の炒め)、は汁を残さない炒め方。
红焖鸡块(鳥の煮物)、は蓋を閉めて煮る、蒸らすこと。
手捏饺子(手作り餃子)、は摘まむこと。
手擀面(手作り麺)、は麺棒で麺を伸ばすこと。

 

日本のレストランや料理屋では中国語のメニューがどんどん増えています。いかにメニューを正しく、美味しく感じられるように翻訳するかが腕の見せ所です。普段から、日本のメニューと中国のメニューに注目しているのであれば、楽にこなせるかもしれません。では、一緒に頑張っていきましょう。

 

では、次回は、「動詞と一緒に使う副詞を覚えましょう」ついてお話したいと思います。ご期待ください。

 

マル今月の中国語新語:

战疫:「战役(戦争の一場面)」の「」と「瘟疫」の「」、発音が同じことで入れ替え、新型コロナウイルスと戦うことをい言います。

例:新冠病毒已经成为全球共同的战疫。
新型コロナウイルスは全世界に拡大し、共同の戦いとなっています。

 

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張 意意
ビジネスコンサルタント。中国北京外国語学院卒業。証券会社を経て、現在、コンサルティング会社経営。現役通訳者、翻訳者としても活躍中。アイ・エス・エス・インスティテュートでは「ビジネスコミュニケーションコース」を担当。企業や業界のニーズを把握し、中日間のコミュニケーションを円滑に進めるために、受講生に最新の動向を紹介しながら、指導を行っている。

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丸中国語ビジネスコミュニケーションコース丸

 

四葉のクローバーコース案内動画はこちら
※張意意先生からのメッセージもありますので、ぜひご覧ください!

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| 「中国語表現コラム〜更上一層楼(更に上へと)」 | 09:37 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第46回:和田泰治先生(英語通訳)

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先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー

プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、英語通訳者養成コース講師、和田泰治先生ご紹介の日英語表現辞典」(最所フミ編著, ちくま学芸文庫, 2004年)です

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本書は最所フミ氏が執筆された「日本語にならない英語」と「英語にならない日本語」を合冊して改定出版されたものである。
書籍のタイトルは「辞典」となっているが決して辞書ではない。見出し語がアルファベット順になっているので確かに体裁は辞典のようになっているし、必要に応じて特定の言葉を調べることもできるが、この本はまずは最初から最後までしっかり通して読破すべきだと思う。拾い読みではあまりにももったいないのである。筆者が前書きで述べている通り、英語と日本語の持つ固有の思考法と論理が様々な角度の分析と豊富な例文で解説されている。英語、日本語のネイティブスピーカーの思考法、風俗、習慣、歴史的背景など多岐にわたる思索は辞典というよりもエッセーに近いものだ。私は、通訳者にとって最も重要な語学的能力は、恐らくそれぞれの言語の「語感」を自在に感じ取ることだと思う。表層的な言葉は真実の影であり、その言葉からスピーカーの思考へと分け入り、思考、論理という抽象化されたイメージから、同じ「語感」を持つ別の言語で説明をし直すことが通訳というプロセスだと考えている。だが、その「語感」を養うことは筆舌に尽くし難い修養を要する。日本語、英語の両言語に関するすべてを知識、感覚として会得しなければならない。本書は、先人の助けを借りて、少しでもその理想に近づこうとする者にとっての一条の光となるものだ。

 

全体は英和の部と和英の部に分かれている。それぞれの言語毎に多くの言葉の持つ意味、思考、背景が解説され、訳と例文で構成されている。英和の部を一読すると、もちろんこれまで全く知らなかった言葉も数多くあるのだが、それ以上に、これまで自分では十分に意味が分かっていたはずだと考えていた言葉、少なくともある程度は正しくその意味を理解して使っていたと思っていた言葉が見出し語として多数並んでいる。そして、そのほとんどに関して何らかの新たな知見を学ぶことができる。あまりにも自分が勉強不足で言葉を知らなかったと落胆することも確かではあるが、あらたな思索のヒントを得た喜びのほうが大きいだろう。和英の部も構成は同じだが、こちらは母国語の日本語を英語で説明するための解説である。英和の部と同様、今度は元の日本語に関する日本人の思考法や論理的な発想、歴史的、社会的背景から、それを適切に説明する英単語や英文が示されている。順番に読んでゆくのだが、まず見出し語を見て、自分自身で英語の表現を頭に思い浮かべてから解説を読むと、筆者の発想との比較ができて非常に勉強になる。
英和の部、和英の部を合わせれば相当な数の言葉に触れることになるから、一読しただけでその全てを吸収することは出来ないが、大切なのは、英語、日本語それぞれの違いを認識しつつ、どのような思考法によって別の言語で説明するべきかいうことを偉大なる先人の発想に学び、感覚を磨くことである。編者の最所フミ氏は1990年に逝去された。それから既に30年が経ち、英語も日本語も新しい言葉や用法が生まれている。本書が出版された当時は新しい言葉として、未だそれほど普及していなかったものの現在ではごく普通に使われている言葉、あるいは当時とは語感が変わった言葉もあろう。職業として言葉に携わっている者の端くれとして、今後は我々が言語の背景にある様々な思考や論理、文化そして記憶や情感すら咀嚼し、研ぎ澄まされた感性を持って言葉に対峙してゆく義務がある。そう襟を正す覚悟を問う名著でもある。

 

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和田 泰治(わだ やすじ)
明治大学文学部卒業後、旅行会社、マーケティングリサーチ会社、広告会社での勤務を経て1995年よりプロ通訳者として稼働開始。スポーツメーカー、通信システムインテグレーター、保険会社などで社内通訳者として勤務後、現在はフリーランスの通訳者として活躍中。
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| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:40 |
『柴原早苗先生のワンランクアップの英語表現』 130回 筋肉・筋トレにちなんだ英語表現

 

アイ・エス・エス・インスティテュート 英語通訳者養成コース講師 柴原早苗
 

通訳者に必要なのは語彙力、文法力、プレゼン力など数限りなくあります。一方、私が個人的に重視しているのは「体力」です。脳みそを酷使するため、スタミナがないと息切れしてしまうのですね。よって、日頃から週に何度かジムに出かけては筋トレや燃焼系のレッスンに参加しています。心地よい汗をかけますしストレス解消にもつながります。子どもの頃は体育の成績が限りなく悪かったのですが、人というのはいつでもチャンスが与えられているのだと思います。今では運動が私にとって欠かせません。

 

今回は筋肉や筋トレにちなんだ用語を用いたフレーズのご紹介です。

 

1 financial muscle 資金力

 

The candidate had a financial muscle to place ads on local TV stations. (その候補者は資金力があったため、地元テレビ局に広告を打ち出すことができました。)

 

muscleは「筋肉」のことですが、financial muscleと言った場合、「資金力」という意味になります。他にもpolitical muscle(政治力)、military muscle(軍事力)といった応用表現もあります。

 

muscleはもともとラテン語で、mus-(ハツカネズミ)から来ています。筋肉の盛り上がる様子がネズミの形や動きに似ているからだそうです。面白いですよね。ところでみなさんは既知の単語をあえて辞書で調べ直すことはありますか?私は実は辞書の引き直しがとても好きで、時間がある時など、誰もが知っている基本単語をあえて引くようにしています。「ジーニアス英和辞典」には解説も豊富にあり、muscleの項では「同音mussel」とありました。musselとは「ムラサキガイ」のこと。こちらも小ネズミに似ていることから生まれた単語だそうです。

 

 

muscular 迫力のある

 

We saw a muscular documentary about the environmental issue. (私たちは環境問題に関する迫力あるドキュメンタリーを観ました。)

 

「力強い、迫力のある」を英語でmuscularと言います。muscleの形容詞muscularを用います。他にも「力強い文体」はa muscular style、「断固たる対応」はa muscular responseです。

 

なお、医学用語の「筋組織、筋肉構成」はmuscular system、「筋肉痛」はmuscular painです。こちらは他にもmyalgiaと言います。これはmyo-(筋肉の)と-algia(〜痛)が組み合わさったものです。

 

ところでこの項を書く上で紙辞書でmuscularを引いたところ、すぐ上の語義はMuscovyという語で「モスクワ大公国」のこと。「モスクワ市民」はMuscoviteです。

 

 

have a good grip on … (〜をよく理解している)

 

She had a good grip on legal matters so she was promoted. (彼女は法律問題についてよく理解していたため、昇格しました。)

 

「〜をよく理解している」は英語でhave a good grip on … と言います。grip自体は「つかむこと、握ること」「握力」を意味します。テニスラケットの握る部分も「グリップ」と言いますよね。

 

gripは動詞にすると「握る」という意味になりますが、graspとは微妙にニュアンスが違います。graspよりもgripの方が強い意味です。英語を学ぶ際、類語の違いを押さえておくとボキャブラリー力の向上につながります。

 

 

4 hover うろつく

 

The children were so hungry that they hovered around the table.  (子どもたちはあまりにも空腹だったため、テーブルの周りをうろついていました。)

 

「付きまとう、うろつく」を英語でhoverと言います。辞書でhoverを引くとたいていの場合、最初に出てくる語義は「(ヘリコプターや鳥などが)上空を舞う」を掲載しています。ヘリコプターが上空でとどまることはhoveringです。

 

一方、筋トレ用語で「ホバー」と言った場合、体幹トレーニングでよく使われるフォームを指します。別名「プランク」とも言うのですが、具体的にはうつぶせ状態になり、ひじを90度に曲げて上半身だけ浮かせるというものです。気になる方は「ホバー」で画像検索してみてくださいね。

 

いかがでしたか?新年度になり、体を動かしたくなったみなさん、ぜひ今回の筋トレ用語を機に体力アップを図ってみてくださいね。

 

 

柴原 早苗
放送通訳者。獨協大学非常勤講師。上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。通訳学校にて後進の指導にあたるほか、大学での英語学習アドバイザー経験も豊富。著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)、「英検分野別ターゲット英検1級英作文問題」(旺文社、2014年:共著)。「放送通訳者・柴原早苗のブログ」http://sanaeshibahara.blog.so-net.ne.jp/

 

| 『柴原早苗先生のワンランクアップの英語表現』 | 12:13 |
英語翻訳コース特別セミナーレポート「プロ翻訳者をめざすために求められるスキルとは」

 

3月18日(水)、東京校にて、英語翻訳者養成コース特別セミナー「プロ翻訳者をめざすために求められるスキルとは」と、ビジネス英訳科・基礎科クラスの体験レッスンを同時開催いたしました。


講師は目黒智之先生。日英翻訳を専門に、第一線で活躍する現役フリーランス翻訳者で、当校のビジネス英訳科・基礎科クラスの指導をご担当されています。今回のセミナーでは、日英翻訳のお話を中心に、プロ翻訳者をめざすために求められるスキル、またスキルを磨くための学習アドバイスについてお話しいただきました。

 

 

●プロ翻訳者として必要な7つのスキル
今回は、7つのスキルを取り上げてお話をしていただきました。和文英訳だけでなく、英文和訳にも共通するポイントが多数あります。

 

 ̄儻賣 日本語能力 A杼力、柔軟性 つ敢最塾 ゥ灰鵐團紂璽織螢謄薀掘 自己管理能力 Ь鐚院▲泪福次∋兩

 

 

●7つのスキルの説明と学習アドバイス
 ̄儻賣

TOEICを目安とすると、最低限800〜850以上は必要です。文法的に間違った英文はプロ翻訳者として許されないので、翻訳の土台となる英語力が求められます。


しかし、TOEICのスコアが満点近い方がみな完璧な英文が書けるかというと、そうでもありません。過去の受講生の事例をみると、一定のスコアを超えると、実際の英語力には大差ないことが多いです。英語力に加え、他のスキルを持っているかどうかで翻訳の実務対応力に差がついてきます。TOEICのスコアはあくまでもひとつの目安に過ぎません。


とはいえ、世の中には高い英語力を持ったビジネスパーソンがいくらでもいます。そうした方々が自分で翻訳する時間がないので、外注するというケースも少なくないのです。プロ翻訳者として請け負う以上は、やはりそれ以上のスキルがないと自信を持って仕事ができないでしょう。

 

また、日ごろ英文を読むときも、ただ意味を理解するだけでなく、自分が書くときに参考になるヒントはないか意識して読むようにしましょう。たとえば、冠詞にフォーカスして読んでみる、抽象名詞の使い方を意識する、whoseやwhomなどの関係副詞の使われる頻度をチェックしてみる、動詞のing形を拾い出して分析するなど、さまざまな文法事項を意識して読む習慣が身に付くと、自分の表現力や構文力の幅が広がります。

 

今日は、参考として、最近よく目にする文や言葉を持ってきました。「感染を封じ込める」「濃厚接触」「(誰々が)検査で陽性と判明する」「(誰々を)隔離措置にする」、これらの言葉は、最近、毎日必ず目にする言葉です。そして今、あらゆる分野で使われています。専門を絞ってお仕事をする場合でも、今回のように社会に与える影響が大きい出来事については、分野を問わずあらゆる場面で遭遇します。あらかじめ調査をして理解を深めておくと、翻訳する際に、初動から差がつくわけです。

 


日本語能力
意外と母語である日本語が弱い方が多いです。TOEICがハイスコアなのに残念な英訳をしてしまうタイプはこの傾向があります。原文の行間が汲み取れていない、背景知識を知らない、調べていないなど、日本語原文を深く読み込めていないのです。そうすると表面的な文字だけを置き換えた小手先の英訳になってしまいます。日本語力が高くないと原文の理解が不十分になり、結果、英訳のクオリティも低くなるということです。

 

翻訳するためには日本語の特徴を客観的に理解しておく必要があります。そのためのアドバイスは講義内でもふんだんに行っています。たとえば、日本語の厄介な特徴は、主語を明示しないことです。また英語のようにSVO、SVCなど順序立てて記述されておらず、「誰が何をどうする」を明確に意識して、情報を整理しながら読まないと、英訳は困難です。英訳する下準備として、日本語の原文をリライトしたり、登場人物の相関図をイメージしたり、主述関係をメモしたりと、自分なりに工夫する習慣をつけておくと、徐々に頭の中で整理しながら読めるようになってきます。

 


A杼力・柔軟性
翻訳、特にビジネス文書の和文英訳の場合、原稿を書いた執筆者はプロの物書きではなく、ビジネスパーソンの場合がほとんどです。忙しい中、急いで仕上げた原稿も多いです。わかりにくい文章になっていたり、社内だけで通用するような略語が盛り込まれていたりと、いわゆる「荒れた文」であることが多いため原文の解釈に悩むケースも珍しくありません。そんな時、調査能力と関連して、豊かな想像力が重要になります。

 

書き手は何を伝えたくてこのような文章になっているか?どのように修正すれば狙い通りの文章になるのか?など、執筆者の気持ちになって意図を汲みとり、わかりやすく読者に届ける必要があります。「誰が誰に向けて、どのような目的・意図で作成された文章なのか」を明確に意識し、文章の流れ、文体や訳語選択など全体のスタイルを組み立てていきます。原稿の目的や依頼主の意図に柔軟に対応することは、プロ翻訳者として求められる重要なスキルです。

 

想像力を豊かにするためには、やはり好奇心旺盛な人が向いています。翻訳ではニュースや話題になっている旬なトピックを扱うことも多いので、常日頃いろいろな分野に幅広くアンテナを張り、感度が高い人は有利です。さまざまなトピック、やわらかい文章、かたい文章に柔軟に対応できると仕事の幅も広がります。

 


つ敢最塾
翻訳は単なる言葉の置き換えではないので、原稿の書かれた背景を正確に理解する必要があります。調査能力の高さは非常に重要です。

 

また、特定の分野の専門知識や背景知識を持っていると大きな強みになります。たとえば、新製品発売のプレスリリースなどを依頼された場合、まず依頼主企業のホームページをチェックすべきです。また類似製品や類似企業のホームページも参考にします。こうした翻訳前の調査の目的は2つあります。まずは内容を把握することです。どのような企業・製品・サービスなのか、背景知識をまず理解します。2つ目は、単語や文体などスタイルを設定するためです。過去にその企業がどのようなプレスリリースを出しているのかチェックして、文章スタイルを統一する必要があります。ビジネス翻訳では、前例踏襲を要求されることがほとんどです。会社を主語にするのか、商品を主語にするのか、用語はどのように統一しているのかなど、前例を把握した上で、シチュエーションに適した構文や単語を選択していきます。

 


ゥ灰鵐團紂璽織螢謄薀掘
翻訳者は指定のフォーマットで訳文の納品を求められます。納品方法もさまざまです。ファイルの圧縮やWEB上でのアップロード、セキュリティ対策など、最低限のコンピュータリテラシーがないと仕事になりません。近年では翻訳支援ソフトの活用を要求されることも増えてきました。今後は、取引の多いエージェントが推奨するソフトの操作方法をマスターする必要性も高まってくるでしょう。ファイルのやりとりや翻訳支援ソフトについては、クライアント依存が多く、都度覚えていくしかないので、講義中ではほぼ触れません。新しいことを自ら積極的に吸収していく姿勢が大事になります。

 


自己管理能力
プロ翻訳者として一番重要なのは、自分の訳出スピードを把握し、クライアントに迷惑をかけないような慎重な納期設定を行うことです。一日のうち自分が稼働できる実時間、作業スピードを把握し、無理なく依頼を引き受けないといけません。信用ベースの仕事なので、納期を守ることを第一に、目標の日にち、時間を設定し、逆算して動く習慣をつけましょう。

 

また、自分がどれくらいの量をこなせるかということは、収入にも直結します。安定的な収入を得るためには、できるだけ固定の仕事を増やしていくことが望ましいですが、その上で、単発の仕事をどの程度引き受けられるかどうかは、仕事のボリューム、スケジュール調整などの管理能力が肝になります。もちろん、睡眠や運動などの体調管理や、適度な息抜きの仕方も重要ですが、そうしたことについては、たくさんハウツー本が出ていますので、参考になさるといいでしょう。

 


Ь鐚院▲泪福次∋兩
あらゆる仕事に共通しますが、翻訳も当然、作業に関わるまわりの人への配慮とマナーは重要です。訳文を納品して終わりではなく、その後の工程にも配慮して最低限レイアウトを整えて見栄えを良くする、申し送りのレターをつけるなどのマナーが求められます。また、納期を守れないと信用を失ってしまいます。たとえ数分でも納期に遅れそうな可能性があるなら、必ず事前に連絡しないといけません。フリーランス翻訳者は、電話やメールのやりとりのみで取引することも多いです。顔の見えない関係性だからこそ、ビジネスマナーには気をつけて、お互いに気持ち良く仕事が出来る信頼関係を築きたいものです。

 


●おわりに
7つのスキルと学習アドバイスについて、実体験と具体的な事例をたくさん盛り込んでお話しいただきました。さまざまなトピックがありましたが、多くのスキルに共通するのは、「品質の高い訳文を納品するために妥協しないプロフェッショナルな意識と姿勢」だと感じました。「品質の高さ」には、クライアント、読み手への配慮と、訳者の仕事に対する姿勢が強く影響するのだと、あらためて気づかされました。

 

確かに、受講生の中でも実力が急速に伸びる方は、ビジネスマナーが良く、何事も素直に吸収していく熱心な姿勢の方ばかりです。プロ翻訳者として本格的に稼働した後、ずっと第一線で活躍し続けていくには、仕事に対する基本姿勢がとても大事です。エージェントも、そうした部分をよく見て評価しています。これからプロ翻訳者をめざされる皆さまも、ぜひそうした取り組み姿勢を意識しながら勉強に励んでいただければと思います。

 

お忙しい中、特別セミナーにご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。

 

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| イベントアルバム | 09:54 |
中国語通訳コース特別セミナーレポート「1時間で理解できる〜通訳者が語る通訳業務〜」

3月15日、多くの方にご参加いただき「1時間で理解できる〜通訳者が語る通訳業務〜」というテーマでセミナーを開催しました。講師は現役通訳者で、中国語通訳者養成コース通訳科1クラス担当の徳久圭先生です。当日は様々なお話がありましたが、その一部をご紹介いたします。

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まず通訳の働き方3種類について紹介がありました。

 

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インハウス(社内通訳者)、エージェント専属、フリーランスの3種類があります。エージェント専属は英語はありますが、中国語はありません。
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続いて、社内通訳者の特徴の説明です。

 

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専門性が高いが基本的には同じ分野のみの通訳となります。会社にもよりますが、出世はできません。通訳業務のみのため、つぶしが効きません。慣れてくると、言葉のやり取りをする通訳ではなく、まるで自分が話しているかのようになってしまいます。収入面では安定しています。
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突然、知らない業務の通訳を頼まれて、対応できなかったり苦労したというお話をよく聞きます。中国語フリーランス通訳業界の特徴は次の通りです。

 

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現場での感覚として中国語ネイティブの割合が70-80%くらいだと思います。圧倒的多数が女性です。実力本位の世界です。繁忙期があり、春秋は案件が多い時期です。収入が不安定です。
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フリーの通訳者はまずエージェントに登録し、仕事のオファーを待ちます。クライアントは通訳者が必要な時、エージェントに依頼し、エージェントは通訳者を手配します。

 

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通訳者から見たエージェントの役割は次の通りです。
・仕事の獲得⇒登録している通訳者の強み、得意分野から仕事を振り分けてくれる。
・通訳者への仕事のオファー
・スケジュール調整や仕事の割り振りをしてくれる。会議通訳の場合は、まず自分のセッションのみ準備すればよいので、合理的に仕事ができる。
・出張の場合、切符や保険の手配をしてくれる。エージェントの名刺も作ってくれる。
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続けて通訳の現場と準備についてのお話です。現場の厳しさが伝わってきます。

 

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通訳者は現場で一人だけの門外漢です。専門家だらけの間を通訳しなければなりません。なので、かなり無理筋なお仕事といえます。でも、フリーランスの通訳者はそれを予習することで乗り越えています。仕事のオファーがあり、受注が確定したら事前準備(予習)に入ります。予習9割と言われていて、ここでの準備が仕事の品質を決めると言ってよいでしょう。とても大変ですが、普通は行けないところに行ったり、まだ訳語もないような最先端技術の通訳をしたりと、知的好奇心が満たされる仕事です。
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先生の言われる通り、フリーの通訳者はあらゆる分野に対応しなければならず、その都度ものすごいエネルギーと手間、時間をかけて仕事を成功させるよう、事前準備をしています。本当に頭が下がります。準備の実例については次の通りです。

 

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.廛譽璽鷸駑舛瞭匹濆み
▲哀蹈奪汽蝓次蔽姥貭◆忘遒 ※この時は人名に注意しました。
クイックレスポンスで単語を覚える
単語の対訳を中国語、日本語の順に自分で録音し再生します。中国語の単語が聞こえたらすぐに日本語に訳出します。訳出された日本語と先に録音した日本語が一致しているかを確認します。
ご慙∋駑舛瞭匹濆み
ネ遒箸祁蠡从
この時はパワーポイント資料に中国語で話す動画が埋め込まれていました。エージェントは訳しません、と言いましたが、怪しいと思い準備しておきました。かなり訛りがあったのですが、文字起こしして訳しておいたのです。案の定、当日訳してください、と言われました。準備しておいて本当に良かったです!
これらのことを嫌がらずにできる人は通訳者に向いていると思います。
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イ陵遒箸祁蠡从はしておいてよかったですね!最後に、機械通訳について触れました。

 

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最近は機械通訳についてよく聞かれます。旅行、買い物のアテンドなどの簡単な通訳は機械でもできるようになると思いますが、最先端の技術を扱っている現場では、少なくとも私たちが生きている時代の間は、生身の通訳はなくならないと思います。100年、200年後は分かりませんが。
最近、音声処理がなかなか進まないということが分かってきました。同じ単語でも話者がどのようなニュアンス、意図をもってしゃべっているのか、判別、判定ができないということです。ですので、通訳者としてハイエンドをめざすことが大事だと思います。
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参加者の皆さんからは次のような声が寄せられました。

・通訳の仕事のご苦労がわかりました。
・先生の実際の体験談が大変参考になりました。

 

セミナーにご参加いただき、ありがとうございました。次回もご期待ください!

 

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| イベントアルバム | 09:44 |
角川まんが科学シリーズ『どっちが強い!?』19巻・20巻・21巻

当校OBの串山 大さんが、角川まんが科学シリーズ『どっちが強い!?』セカンドシーズンを翻訳されています。

 

<角川まんが科学シリーズ『どっちが強い!?』セカンドシーズン>

 

19巻 ライギョvsピラニア(2019年8月8日発行)
20巻 サシハリアリvsグンタイアリ(2019年11月14日発行)
21巻 ゾウアザラシvsホッキョクグマ(2020年2月14日発行)

 

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動物や昆虫の対決をテーマとするエンタメ性の高い学習漫画です。リアルなイラスト付きの「動物百科事典」も各巻に収録されています。原書を制作しているのはマレーシアの漫画家チーム。中国語、英語など多言語で展開され、アジア圏でシリーズ累計300万部突破。続刊予定。

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ぜひお手に取ってお読みください♪

 

 

<関連記事>

中国マンガを翻訳してみて考えること【第1回】仕事につながった経緯

中国マンガを翻訳してみて考えること【第2回】マンガ翻訳で気をつけていること その1

中国マンガを翻訳してみて考えること【第3回(最終回)】マンガ翻訳で気をつけていること その2

『ゲリラ建築:謝英俊、四川大地震の被災地で家を建てる』

角川まんが科学シリーズ『どっちが強い!?』16巻・17巻・18巻

角川まんが科学シリーズ『どっちが強い!?』13巻・14巻・15巻

 

 

| おすすめ書籍のご案内 | 11:34 |
授業体験レポートふりかえり:2019年[秋期] レギュラーコース

2019年秋期の授業レポートも、大好評のうちに最終回を迎えました。


英語通訳者養成コース「本科2」クラスをレポートしてくださったYさんは、とても丁寧に授業の内容やクラスの様子を伝えていただきました。

中国語翻訳者養成コース「基礎科1」クラスの香蕉皮さんは、授業のポイントを分かりやすく楽しくレポートしてくださいました。

 

英語編と中国語編を隔週更新で紹介してきましたが、もう一度ふりかえって読んでいただくとまた新たな発見があるはずです。皆さまが再読しやすいように、Indexを作成しました。再読の際にご活用ください。ご担当いただいたYさん、香蕉皮さん、本当にありがとうございました!

丸授業体験レポート 2019秋 英語編Index

第1回「学べる環境に感謝」

第2回「Public Speaking の大切さ」

第3回「記憶に残すテクニック」

第4回「中間テスト」

第5回「継続する力」

第6回「強みと弱み」

第7回「好きな気持ちを忘れない」

最終回「トンネルの向こう」

 


丸授業体験レポート 2019秋 中国語編Index

 

 

| 授業体験レポート | 11:29 |
中国語翻訳コース特別セミナーレポート「1時間で理解できる〜翻訳者が語る翻訳実務〜」

 

3月8日、特別セミナー「1時間で理解できる〜翻訳者が語る翻訳実務〜」を開催しました。講師は現役翻訳者で、中国語翻訳者養成コース本科1担当でもある本島玲子先生です。以下はセミナーからの抜粋となります。

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まず、翻訳者の種類について説明がありました。

 

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翻訳には大きく分けて社内翻訳者とフリーランス翻訳者があります。

社内翻訳の場合は、企業での業務の一環としての翻訳なので、用語や内容がある程度決まっています。フリーランスは間口が広く、どの分野でもこなす必要があります。

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中国語翻訳の特徴について、英語と比較しながらのお話がありました。

 

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翻訳市場の9割が英語と言われています。市場が広いので、分野をある程度固定してもお仕事があります。対して中国語は市場が小さいので、あらゆる分野に対応できる力が必要です。自分の知らない分野の翻訳にはリサーチ力、検索力がとても大事になってきます。分からないことは自分で勉強しながら訳していかなければなりません。納期があるので、限られた時間の中で、常に高品質の訳文を作ることができる力が求められます。

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先生は「知らないことにも飛び込む勇気が必要です」と言われました。心配したり、恐れるより、積極的に仕事に取り組む姿勢も大事ですね。

 

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英語翻訳者は日本語母語でも英日/日英の両方向を訳す方もいますが、中国語翻訳の場合には、日本語母語者は中日翻訳中国語母語者は日中翻訳でほぼ固定されています。母語方向と逆の訳出の仕事はまずありません。

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これを踏まえて、翻訳者として必要な語学力についての説明がありました。

 

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まず大事なのが、外国語(中国語または日本語)の読解力です。日本語母語者なら、中国語原文を中国人並みに読むことができる必要があります。母語のレベルを外国語のレベルが上回ることはありませんが、母語との差をできるだけなくすよう、できるだけ努力を続けることが必要です。

 

また、母語力が低いと外国語力はさらに低くなってしまうので、母語、外国語とも同時に伸ばしていく必要があります。これから翻訳を学ぶ人は、母語力のアップということも重要ということをぜひ覚えておいてください。

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次にトライアルについてのお話がありました。

 

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フリーランスの翻訳者になるには、翻訳会社への登録が必要です。そのためにはトライアルテストを突破する必要があります。しかし、合格しそうでできないのがトライアルです。知り合いのトライアル担当者の話では、トライアルは減点方式で、少しでもミスがあれば、どんどん減点されてしまうそうです。感覚としては原稿1枚当たり3〜5ヵ所チェックがあると不合格とのこと。1枚で3ヵ所なら、10枚では30ヵ所あることになってしまうからです。ですので、チェックが入らないくらいの完成度でないと、合格は難しいという気持ちでいた方がよいと思います。

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実際トライアルに合格するということは、直ぐに仕事が依頼できる即戦力レベルとの判定なので、ほとんど直しがないくらいの完成度が求められると思います。

 

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訳出以外で気をつけなければならないことですが、意外とできていないのが、文書記号です。中国語の文書記号をそのまま日本語の文章に使うことはできません。

 

例えば中国語の“ ”は日本語では「 」としなければなりません。!?も本来日本語にはない記号です。中国語では多用しますが、日本語で「なぜなの!」とすると怒っているようで、ニュアンスも変わってしまうので注意しましょう。
用語の統一も必要です。例えば、「うれしい、嬉しい」「わかる、分かる」など、ある時は平仮名、ある時は漢字交じりではいけません。普段から記号や表記の統一に気をつけておくとよいと思います。

 

トライアル合格はあくまでスタート地点ということを忘れずに、フリーになっても仕事が集中することもあれば、しばらく途切れてしまうこともあるので、あせらずに時間があるときはあくまで実力をつけるようにすることが大事です。

 

「言葉が好きで、言葉の間を行き来することに興味がある方にはとても面白い世界なので、ぜひ勉強してみてください。」

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あせらずに、急がば回れの気持ちで、いざ実践になった時に困らないよう実力を蓄えておくことが重要と感じさせられたセミナーでした。

 

参加された方からは次のような声が寄せられました。

 

・翻訳の楽しさ、厳しさがよく分かりました。
・盛りだくさんの内容で、大変参考になりました。
 

 

ご参加いただいたみなさん、ありがとうございました。
アイ・エス・エス・インスティテュートでは、今後もみなさまのお役にたつセミナーを企画してまいります。

 

 

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| イベントアルバム | 09:03 |
ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 第45回:岩木貴子先生(英語翻訳)

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先生方のおすすめする本が集まったISSライブラリー

プロの通訳者・翻訳者として活躍されているISS講師に、「人生のターニングポイントとなった本」「通訳者・翻訳者として必要な知識を身につけるために一度は読んでほしい本」「癒しや気分転換になる本」「通訳・翻訳・語学力強化のために役立つ参考書」等を、エピソードを交えてご紹介いただきます。
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今月の一冊は、英語翻訳者養成コース講師、岩木貴子先生ご紹介の「翻訳できない世界のことば」(エラ・フランシス・サンダース著, 前田まゆみ訳, 創元社, 2016年)です

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多様性を教えてくれる素敵な絵本『翻訳できない世界のことば』

 

『翻訳できない世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著、前田まゆみ訳、創元社、2016年)という絵本はもう読まれましたか? イラストレーターの著者による素敵な絵本を、絵本作家で翻訳家の方が訳されたので、一冊の本としても、絵本としても、翻訳書としても素晴らしい仕上がりになっています。

 

個人的なお気に入りは、pisanzapra(ピサンザプラ。「バナナを食べるときの所要時間」という意味のマレー語の名詞)やporonkusema(ポロンクセマ。「トナカイが休憩なしで、疲れず移動できる距離」という意味のフィンランド語の名詞)。ポロンクセマは約7.5キロとか。人々の生活を感じさせてくれる言葉です。ピサンザプラは「人によって、またバナナによっても」違うのですが、「一般にはだいたい2分くらい」だそうです。一方、壮大なスケールなのはkalpa(カルパ。「宇宙的なスケールで、時が過ぎていくこと」という意味のサンスクリット語の名詞)。インドでは悠久の時間が流れているのですね。生活に根づいた文化を感じさせるこういった言葉を眺めていると、“多様性”という言葉が浮かんできます。

 

ほかにも、resfeber(レースフェーベル。「旅に出る直前、不安と期待が入り混じって、絶え間なく胸がドキドキすること」という意味のスウェーデン語の名詞)やiktsuarpok(イクトゥアルポク。「だれか来ているのではないかと期待して、何度も何度も外に出て見てみること」という意味のイヌイット語の名詞)など、魅力的な他国の言葉が紹介されています。「そんな概念・感情・行動がこの言語では言葉になっているんだ」と驚くと同時に、ちょっと切ないような、胸がキュンとするような。まったく異なる文化の、言葉も知らない国の人々でも、社会の決まり事や言語、文化、政治といった表層的な部分をとっぱらうと、人間としてのとても無防備な感情が垣間見えて、それがとても愛おしく感じられる、とでもいうような(この感情も、もしかしたらどこかの国では一語で言い表されているのかもしれません)。

 

タイトルについて、「『翻訳できない』は、厳密にいうと『りんご=apple』のように1語対1語で英語に翻訳できない、という意味」だと訳者あとがきで説明されています。“一語で言い表せない”だけであって、“理解の範疇を超えている”のではありません。たとえば、mamihlapinatapai(マミラピンアタパイ。「同じことを望んだり考えたりしている2人の間で、何も言わずにお互い了解していること。(2人とも、言葉にしたいと思っていない)」という意味のヤガン語の名詞)。ヤガン語はチリの原住民の言語だそうです。以心伝心と似ているので、日本語話者にとっては親しみやすい概念ではないでしょうか。こういう言葉は人としての心をのぞかせてくれます。それは決して異質なものでも珍妙なものでもなく、私たち自身の姿がそこにはあります。

 

本書から伝わってくるのは、多様性は“異質性” と同時に“普遍性”も内包している、ということです。「そんな風に世界をとらえているんだ」という文化の異質性の面白さと、「でも分かる」という共感を呼び起こし、人間存在の普遍性を感じさせてくれる本書には、翻訳の醍醐味がつまっていると思います。

 

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岩木 貴子(いわき たかこ)
フリーランス翻訳者として出版、実務分野で活躍中(英→日、日→英)。アイ・エス・エス・インスティテュートでは、英語翻訳者養成コース、総合翻訳科、ビジネス英訳科の本科レベルを担当。
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評価:
エラ・フランシス・サンダース
創元社
¥ 1,728
(2016-04-11)

| ISSライブラリー 〜講師が贈る今月の一冊〜 | 09:00 |
授業体験レポート:2019秋【英語編】最終回 「トンネルの向こう」

ISSスクールブログで人気の授業体験レポートは、この秋で17シーズン目を迎えています。2019年秋期では、英語通訳クラスと中国語翻訳クラスから、それぞれレポートしていただきました。今回は英語通訳者養成コース 本科2クラスのYさんのレポート最終回をお届けします。勉強の合間にレポートいただいたYさん、本当にありがとうございました!

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こんにちは、Yです。ようやく、ようやく、この日を迎えました。2020年2月22日、秋期コース最終日を迎えることができました。本当にここまで、長い長いトンネルの中にいました。出口の見えない道程に、何度くじけそうになったことか。しかし、時が経つのは裏切らず、晴れて秋期コース終了、Completeです。気が付けば、川沿いに咲く早咲きの桜はもう満開で、庭にはヒヤシンスが顔を出し始めていたのです。そうです、知らぬ間に季節は春へと移り変わっていたのです。ずっと待ち望んでいた春、さぞや解放感や充実感に浸っているだろうとこれまでずっと想像してきましたが、ようやく迎えたいま、実際は思っていたのとちょっと違う感覚に捉われています。

 

それは、もう授業が無いのだ、もうテストが無いのだ、というぼんやりとした喪失感です。やらなければいけない、という緊張感がこれまで常にあったために、いざそれが無くなってしまうと、どうしてよいのか分からない自分がいます。クラスメートに会えないという寂しさもあり、少し切ない気分です。いま一番しっくりくる言葉は、迷子です。そうです、春が来てわたしは迷子になってしまいました。
春の迷子より、授業最終回、期末テストの様子をお届けします。

 

第15回 日英期末テスト 2月15日
期末テストでは、これまでにやった教材の復習(2テーマ)、と初見の「睡眠と健康」の逐次通訳の吹込みをしました。初見は事前にTopicを与えられていたために、関連する用語、例えば睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea)や、認知機能(cognitive function)などを押さえて臨みました。実際にそれらの単語が出たために、事前準備の大切さが身に沁みました。期末テストは試験中のメモ取りが可なのですが、メモを取ることに意識がいってしまいすぎると、耳がおろそかになってしまいます。メモに意識がいきすぎないように、文脈を捉え、内容を理解し、その上で適切な単語で説明することに悪戦苦闘しました。脳がフル稼働です。ただ、通訳は相手に伝える仕事なので、単語を間違えても、文法を間違えても、なんとか伝えよう、その気持ちだけは持っていました。ここまできたら、最後の力を振り絞るしかないのです。いま自分にできること、それは技術でもなく器用さでもなく、飛びぬけた発音でもなく、ただただパッションなのです。現場に出たことのない私にとっては、今、ここが一番の舞台なのです。これまでやってきたことが身についていれば、自然とできるはず。力を尽くして、あっという間に試験は終了しました。

 

先生は、まだこの本科2レベルのクラスで扱う教材の内容は、比較的分かりやすいもので、もっと上のクラスに上がっていくと内容が更に難しくなっていき、その時にスピーカーが伝えたい大切なところを理解して訳出できるかどうか、こまかい情報は落ちたとしても、肝心な幹をしっかりととらえて伝えることができるか、それが重要なのだと教えてくださいます。これを聞いて、AIや翻訳機ではできない仕事が先生方のやっていらっしゃる通訳なのだと思いました。そして、スピーカーの言葉から伝えたい内容を理解し、そして理解した内容をどう表現し、どう文法を組み立てていくのか、何が主語で何が目的語か、修飾されているのは何か、関係詞、不定詞、分詞それらを正確に組み立てて訳していく。私のような熱い気持ちだけではもちろんダメで、文法的に忠実な訳出ができるように、日々努力を積み重ねていく必要があります。「通訳学校は職業訓練の場である」という言葉に、この学びがプロに通じる道であるということを改めて認識させられました。

 

第16回 英日期末テスト 2月22日
英日では、初見教材のTopicsが中間試験の時と同様に事前に3題与えられました。

 

 Coronavirus
 Trump’s impeachment
 Ghosn’s decision
です。
この中から1つのTopicが出題されます。私は中間テストのときに山を懸け、まんまと外してしまった苦い経験があり、今回は先生もすべてまんべんなく調べてくるように、と仰っていたので、しっかり3題について情報を入れて臨みました。しかし人間、どうしても山を張りたくなってしまうもの、すべて情報を入れた上で特に念入りに調べたのがGhosn’s decision についてでした。コロナウィルスは日々情報が更新されていますし、トランプ大統領の弾劾裁判については、最近単語テストでその内容を扱ったばかりだったため、これはゴーンに違いない、あんなにドラマティックな展開で日本を脱出するなんて、奇想天外なストーリーだからきっとこれが出るに違いない!とまた高を括っていたのです。授業開始直前まで、あらゆるサイトで英語と日本語のゴーンの記事を探し、読み比べ、どの単語が使われているのか、ルノーでの職位の呼び名から、レバノンで開いた会見の内容まで、くまなく調べていたのです。しかし実際、蓋を開けてみれば試験は「Coronavirus」でした。ガーン。自分の勘が全く当てにならないことを痛感しました。いや、大事なのは試験問題を当てることではなく、訳出の技術なのです。

 

やはり日英同様、メモ取りの難しさに手こずってしまいました。メモに単語を書きすぎて、耳で話の流れを追っていけない。書いたメモの記号を見ても、何を意味しているのか思い出せない。脳の回路を増やすべきなのか、短期記憶が良くなるツボがあるならいくらでも押したい気持ちになっていました。こちらも四苦八苦、かろうじてなんとか最後までたどり着いて試験は終了。コロナウィルスに関する知識があっただけに、全く歯が立たなかった訳ではありませんが、やはり訳の抜けが多かったこと、正確性に欠けることが反省点です。

 

先生は、自分なりのメモリストを作ると良いと教えてくださいました。自分なりに記号を決めて、例えば三角形をその時の主題に関係する特定の言葉として使うなど、自分流にアレンジしてリスト化するのが良いそうです。そうして作ったメモリストも、現場で使えないと判断すれば、どんどん数が少なくなり、使いやすいものだけに絞られていくそうです。

 

そして訳が抜け落ちてしまうことについてはやはり、頭の中でVisualizeし、可視化していくことが情報を残すためのポイントであるということです。何よりも文脈を覚えていることが非常に大切で、訳の枝葉を落としたとしても、重要なところだけは落とさないという意識、これが肝心であるということを最後に教えてくださいました。

 

講師の先生は、毎回授業の準備に多くの時間をかけて臨んでいらっしゃるため、こちらもそれに応えるべく精いっぱい努力して報いようという気持ちになります。これまでたくさんの課題を出していただき、仕事との両立にくじけそうになったことが何度もありましたが、今になって振り返れば、もっとできたのではないか、と思う自分も何処かにいます。

 

たくさんの課題のおかげで、勉強することを習慣化させることが、少しだけ身についてきたように思います。授業が終わった今、ソファに座ってテレビをつける、というこれまで罪悪感があってなかなかできなかったことも、通勤電車でスマホのニュースをひたすら眺めているという時間も、いまやってみると、なんだかつまらなく感じるのです。電車で30分勉強した、単語を1ページ覚えた、職場まで歩きながらシャドウイングした、そんな小さな達成感がこれまで私を突き動かしてくれていて、そしてそれが無いと、なんだか生ぬるく感じてしまうのです。しかし、あと2か月後にはまた次のコースがスタートして、また苦しい日々が始まるのです。つかの間の休息を有難く享受しつつ、勉強の習慣を絶やさないようにしていきたいです。

 

最後に、クラスメートが打ち上げで言った言葉が印象的でした。「他の誰でも代わりがきく仕事ではなくて、自分でなければできない仕事をしたい、だから通訳の学校に通っている」と。自分に力をつける、このことを目標に、クラスの一人一人が頑張ってこられて良かったな、と思います。大変でしたが中身のある時間でした。春の迷子は、迷子になっている場合ではありません。まだまだやることは山積みです。これからも自分に力を付けるべく、邁進していかなければなりません。

 

短い間でしたが、どうもありがとうございました。毎回惜しみなく教えてくださった講師の先生方、楽しい教務の方、ハードな時間を共有したクラスメートの皆さんにとても感謝しています。

 

それでは!みなさんの頑張りが、花いっぱい開きますように!!

 

| 授業体験レポート | 09:06 |

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